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ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第78話 レオンの本気の防御
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「なんとすごい攻撃だ!」
ロルフの放った一撃に、ハンガリー王、マーチャーシュ公が目をまるくした。その横ではモルドヴァのシュテファン公が呆然としている。
「鉄壁をほこるテオドシウスの城壁を……、いとも簡単に……」
レオン・ウォルフもロルフの一撃におどろきを隠せずにいた。
だがロルフの圧倒的な力にではない。
ロルフが一閃した『風の刃』があきらかに、マリアを狙って放たれたものだったからだ。いや、自分の勘違いかもしれない。もし問いただしたら、スルタン、メフメト二世を狙ったものだ、とロルフは平然と言ってのけるだろう。
だが、レオンはマリアを狙った、となぜか確信めいて感じられた。
「レオン。今度はきみの番だ」
ロルフはこころに湧いて出た疑念を見透かすように、こちらに声をかけてきた。
「わたしはなにを?」
「すぐにトルコ軍の反撃がくる。きみが全部防ぐんだ」
「全部?」
「あぁ、全部だ。この十字軍の陣地は5キロほどに広がっているが、本気をだせばそれくらいカバーできるだろう?」
その問いかけは有無を言わさぬ命令だった。が、それと同時に、この君主たちの前で自分のちからを見せつけろ、と鼓舞しているのもわかった。
ロルフへの不信感はあとまわしだ——。
「わかりました。なんとかしてみせます」
レオンは精神を集中させて、『超音波』の盾を上空に展開していた。自分以外には見えないベールが空中に、一気に拡大していく。
そのとき、城のほうから地を揺らすほどの大砲の砲撃音が鳴り響いた。たて続けに何発もの轟音。
「矢も飛んでくるぞぉぉぉ」
だれかが叫んだ。砲弾と矢が飛んでいく方向にいる兵士たちが、必死に逃げまどう。怒声のような悲鳴があがる。おおくの兵士たちが逃げ切れずに、死を覚悟した。
だが、レオンは広範囲な陣地の天空に電磁波の網を展開していた。すべての砲弾と矢が空中で受けとめられる。
空中で砲弾や矢がストップモーションのようにとまっていた。
トルコ軍側から放たれた無数の攻撃に逃げまどっていた兵士も、目の前でおきている不可思議な情景に目を見張った。それまでに経験を重ねていたヴラド軍の兵士は、無事に見えないシールドが機能したことに胸をなで下ろしただけだったが、応援にきていたほかの国の兵士たちは、まるで夢でもみているように呆然としていた。
ヴラドの兵士が鬨の声をあげた。
それにつられるように、ほかの国の兵士たちも口々に雄叫びをあげはじめた。その声は自信にあふれて、まるで凱歌のように聞こえた。
ロルフの放った一撃に、ハンガリー王、マーチャーシュ公が目をまるくした。その横ではモルドヴァのシュテファン公が呆然としている。
「鉄壁をほこるテオドシウスの城壁を……、いとも簡単に……」
レオン・ウォルフもロルフの一撃におどろきを隠せずにいた。
だがロルフの圧倒的な力にではない。
ロルフが一閃した『風の刃』があきらかに、マリアを狙って放たれたものだったからだ。いや、自分の勘違いかもしれない。もし問いただしたら、スルタン、メフメト二世を狙ったものだ、とロルフは平然と言ってのけるだろう。
だが、レオンはマリアを狙った、となぜか確信めいて感じられた。
「レオン。今度はきみの番だ」
ロルフはこころに湧いて出た疑念を見透かすように、こちらに声をかけてきた。
「わたしはなにを?」
「すぐにトルコ軍の反撃がくる。きみが全部防ぐんだ」
「全部?」
「あぁ、全部だ。この十字軍の陣地は5キロほどに広がっているが、本気をだせばそれくらいカバーできるだろう?」
その問いかけは有無を言わさぬ命令だった。が、それと同時に、この君主たちの前で自分のちからを見せつけろ、と鼓舞しているのもわかった。
ロルフへの不信感はあとまわしだ——。
「わかりました。なんとかしてみせます」
レオンは精神を集中させて、『超音波』の盾を上空に展開していた。自分以外には見えないベールが空中に、一気に拡大していく。
そのとき、城のほうから地を揺らすほどの大砲の砲撃音が鳴り響いた。たて続けに何発もの轟音。
「矢も飛んでくるぞぉぉぉ」
だれかが叫んだ。砲弾と矢が飛んでいく方向にいる兵士たちが、必死に逃げまどう。怒声のような悲鳴があがる。おおくの兵士たちが逃げ切れずに、死を覚悟した。
だが、レオンは広範囲な陣地の天空に電磁波の網を展開していた。すべての砲弾と矢が空中で受けとめられる。
空中で砲弾や矢がストップモーションのようにとまっていた。
トルコ軍側から放たれた無数の攻撃に逃げまどっていた兵士も、目の前でおきている不可思議な情景に目を見張った。それまでに経験を重ねていたヴラド軍の兵士は、無事に見えないシールドが機能したことに胸をなで下ろしただけだったが、応援にきていたほかの国の兵士たちは、まるで夢でもみているように呆然としていた。
ヴラドの兵士が鬨の声をあげた。
それにつられるように、ほかの国の兵士たちも口々に雄叫びをあげはじめた。その声は自信にあふれて、まるで凱歌のように聞こえた。
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