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ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第66話 ロルフ・ギュンターぁぁ!!
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スルタンは額に手をやって、何度かなでまわしてから口をひらいた。
「悔しい……。いや、腹立たしいだ。そなたらのような人知をこえた悪魔の力がなければ、余の帝国がここまで追い詰められるはずがないからな」
「ではわたしたちキリスト教徒の痛みを、すこしは味わってもらいたいものですね。1000年を超える歴史と聖地を異民族に奪われた苦しみをね」
「笑止。国を拡大していくことは君主として努めだ。余の尊敬するアレキサンダー大王も、ユリウス・カエサルも領土を拡大することで、後世に名を残したのだ。だから余もそれに従った。そして父も『雷帝』と呼ばれた曽祖父バヤズィット一世もなしえなかった偉業をなしとげたのだ」
「ですがあなたの祖父のメフメト一世はビザンチン帝国と友好関係を築いていましたし、あなたの父上ムラト二世もコンスタンティノープルを包囲はしましたが、あらたな和睦をむすぶことで軍をひきあげています」
「だから我が国はおおきくならなかったのだ」
メフメト二世が激高して声を荒げると、ノアは口元に余裕の笑みを浮かべた。
「ならば、私たち十字軍が、あなたの国や軍を滅ぼしても構いませんよね」
落ち着きはらった態度、自信にあふれた声色、挑戦的かつ威圧的な物言い——。
マリアは今ここでしゃべっているノアが、ノアではないことに気づいた。
「ロルフ!。ロルフ・ギュンターぁぁ!!」
とっさにマリアはノアのからだに飛びかかった。背がひくく肩まで手が届かなかったので、お腹を両側からつかんで激しくゆさぶった。
「ロルフ!。なにをしたの!」
その瞬間、ノアのからだから強靭な意志が消えうせ、高圧的な視線がすっと影を潜めた。「あれ、マリア。ぼくって、どこまで説明したのかな」
「ノア、あなた今、ロルフに乗っ取られてた」
マリアはノアのからだを掴んだまま、顔をみあげた。ノアがすっと視線を反らした。
これもロルフの計画のうち——。
マリアの胸のなかで、ロルフに対する不信感がたちまち膨れあがる。
あたしに隠して、なにかをたくらんでる——。決定的ななにかを……。
そのとき、メフメト二世が声をかけてきた。
「娘、なにが起きている?」
マリアは肩をすくめながらふりむくと、思いっきり笑顔を作って見せた。
「ごめんさない。ちょっとした内輪もめ……」
メフメトはうしろにひきさがって、怖い目をむけていた。盾になるように数人の護衛兵が剣を引き抜いて身構えている。周りにいた兵士も剣を前にふりたてて、いつでも飛びかかれるような態勢をとっていた。
「なあに?。おじさんたち……」
「そなた、いつのまに拘束を……」
メフメトがおどろきを隠せない声色で、マリアのからだを指さした。
マリアはいつの間にか縄をひきちぎり、拘束具を破壊してしまっていた。
「ああ……、これ?」
メフメト二世への攻撃命令がでるまでは、か弱い幼女をきめこんでおくつもりだったのに、思いがけないかたちで暴露してしまったようだった。
これは、どう言い繕っても、もうただの幼女とは見てもらえないにちがいない。
「あたしとしたことが、まったく迂闊でしてよ」
マリアはちょっと照れ隠しするように、ウインクをしてみせた。
「まぁ……、つまり……、あたしはいつでも自由になれるってこと」
「悔しい……。いや、腹立たしいだ。そなたらのような人知をこえた悪魔の力がなければ、余の帝国がここまで追い詰められるはずがないからな」
「ではわたしたちキリスト教徒の痛みを、すこしは味わってもらいたいものですね。1000年を超える歴史と聖地を異民族に奪われた苦しみをね」
「笑止。国を拡大していくことは君主として努めだ。余の尊敬するアレキサンダー大王も、ユリウス・カエサルも領土を拡大することで、後世に名を残したのだ。だから余もそれに従った。そして父も『雷帝』と呼ばれた曽祖父バヤズィット一世もなしえなかった偉業をなしとげたのだ」
「ですがあなたの祖父のメフメト一世はビザンチン帝国と友好関係を築いていましたし、あなたの父上ムラト二世もコンスタンティノープルを包囲はしましたが、あらたな和睦をむすぶことで軍をひきあげています」
「だから我が国はおおきくならなかったのだ」
メフメト二世が激高して声を荒げると、ノアは口元に余裕の笑みを浮かべた。
「ならば、私たち十字軍が、あなたの国や軍を滅ぼしても構いませんよね」
落ち着きはらった態度、自信にあふれた声色、挑戦的かつ威圧的な物言い——。
マリアは今ここでしゃべっているノアが、ノアではないことに気づいた。
「ロルフ!。ロルフ・ギュンターぁぁ!!」
とっさにマリアはノアのからだに飛びかかった。背がひくく肩まで手が届かなかったので、お腹を両側からつかんで激しくゆさぶった。
「ロルフ!。なにをしたの!」
その瞬間、ノアのからだから強靭な意志が消えうせ、高圧的な視線がすっと影を潜めた。「あれ、マリア。ぼくって、どこまで説明したのかな」
「ノア、あなた今、ロルフに乗っ取られてた」
マリアはノアのからだを掴んだまま、顔をみあげた。ノアがすっと視線を反らした。
これもロルフの計画のうち——。
マリアの胸のなかで、ロルフに対する不信感がたちまち膨れあがる。
あたしに隠して、なにかをたくらんでる——。決定的ななにかを……。
そのとき、メフメト二世が声をかけてきた。
「娘、なにが起きている?」
マリアは肩をすくめながらふりむくと、思いっきり笑顔を作って見せた。
「ごめんさない。ちょっとした内輪もめ……」
メフメトはうしろにひきさがって、怖い目をむけていた。盾になるように数人の護衛兵が剣を引き抜いて身構えている。周りにいた兵士も剣を前にふりたてて、いつでも飛びかかれるような態勢をとっていた。
「なあに?。おじさんたち……」
「そなた、いつのまに拘束を……」
メフメトがおどろきを隠せない声色で、マリアのからだを指さした。
マリアはいつの間にか縄をひきちぎり、拘束具を破壊してしまっていた。
「ああ……、これ?」
メフメト二世への攻撃命令がでるまでは、か弱い幼女をきめこんでおくつもりだったのに、思いがけないかたちで暴露してしまったようだった。
これは、どう言い繕っても、もうただの幼女とは見てもらえないにちがいない。
「あたしとしたことが、まったく迂闊でしてよ」
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「まぁ……、つまり……、あたしはいつでも自由になれるってこと」
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