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ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第63話 マリア、イスタンブール市中を引き回される
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マリアは大宮殿に連れていかれるあいだ、おとなしくしていた。
ふたりを連行するのに動員された兵士は、百人を超えていたし、ハリシオス門からイスタンブールのメインの大通りを進む様は、ちょっとした凱旋パレードのようになっていたからだ。いく先々の通り沿いを埋め尽くすやじ馬を見ては、騒動を起こそうという気にもなれない。
ノアもすっかり静かになっていた。トルコ兵に捕まるまでは、けっこう大騒ぎをしていたが、さすがに疲れたらしい。マリアとおなじようにからだを縄で縛られたあげく、手首に枷をつけられた状態で、兵士たちに言われるがままにつき従っている。もちろんただ歩を進めているはずもなく、あたりの様子や兵の配置、街の道路などをしっかりと確認しているはずだ。
到着には一時間ほどかかった。
テオドシウスの壁から大宮殿までは五キロメートルもあるのだから当然といえば当然だ。 しかし、その長い行軍はまったく苦にならなかった。
誰もがそれに見とれるその光景にマリアも魅了されたからだ。
周りの街並は歴史的にも価値のある建造物がそこかしこに立ち並び、キリスト教の総本山であった格式と千年もの歴史の重みが感じられた。しかもそこにあらたにイスラムの彩色美あふれる建造物や装飾が加わろうとしている最中なのだ。
ビザンチン帝国攻略の戦いの激しさを物語るような、戦いの爪跡ももちろんあるにはあった。だがそれらはほとんどがテオドシウスの城壁付近だけで、その奥にあるコンスタンチンの城壁の内側の建築物の損壊は免れていた。
大宮殿はコンスタンティノープルの半島の南西端に位置し、競馬場と『ハギア・ソフィア大聖堂』が隣接していた。大宮殿は『ハギア・ソフィア大聖堂』が五棟はすっぽり収まるほどの広大な敷地に建設され、宮殿や多数の別館、皇帝や皇后の住まいなどで構成されていた。
マリアたちはこの街の大通りの起点になるカルケ門を通り抜けて、アウグステオン広場に入場した。この広場は南側が『ハギア・ソフィア大聖堂』の正面の門に、東側が元老院議事堂に接している上、北側が大宮殿の正面入口でもあった。
すでに噂を聞きつけた住民たちが、自分たちを、そしてメフメト二世をここまで追いこんだ幼女を見ようと、このアウグステオン広場に集まっていた。大通りからついてきたやじ馬も加わって、広場はひとであふれ返りはじめている。
マリアはそこに集まった人々のほうに目をむけた。
興味と不安でざわつく人々たちに目をむけた。老若男女がそこに集っていた。だれもが色鮮やかな衣服をまとい、活気に満ちた表情をしていた。領土拡張をほしいままにしているメフメト二世の勢い、そのままに人民もその栄華を享受しているのだろうと思えた。
ふたりを連行するのに動員された兵士は、百人を超えていたし、ハリシオス門からイスタンブールのメインの大通りを進む様は、ちょっとした凱旋パレードのようになっていたからだ。いく先々の通り沿いを埋め尽くすやじ馬を見ては、騒動を起こそうという気にもなれない。
ノアもすっかり静かになっていた。トルコ兵に捕まるまでは、けっこう大騒ぎをしていたが、さすがに疲れたらしい。マリアとおなじようにからだを縄で縛られたあげく、手首に枷をつけられた状態で、兵士たちに言われるがままにつき従っている。もちろんただ歩を進めているはずもなく、あたりの様子や兵の配置、街の道路などをしっかりと確認しているはずだ。
到着には一時間ほどかかった。
テオドシウスの壁から大宮殿までは五キロメートルもあるのだから当然といえば当然だ。 しかし、その長い行軍はまったく苦にならなかった。
誰もがそれに見とれるその光景にマリアも魅了されたからだ。
周りの街並は歴史的にも価値のある建造物がそこかしこに立ち並び、キリスト教の総本山であった格式と千年もの歴史の重みが感じられた。しかもそこにあらたにイスラムの彩色美あふれる建造物や装飾が加わろうとしている最中なのだ。
ビザンチン帝国攻略の戦いの激しさを物語るような、戦いの爪跡ももちろんあるにはあった。だがそれらはほとんどがテオドシウスの城壁付近だけで、その奥にあるコンスタンチンの城壁の内側の建築物の損壊は免れていた。
大宮殿はコンスタンティノープルの半島の南西端に位置し、競馬場と『ハギア・ソフィア大聖堂』が隣接していた。大宮殿は『ハギア・ソフィア大聖堂』が五棟はすっぽり収まるほどの広大な敷地に建設され、宮殿や多数の別館、皇帝や皇后の住まいなどで構成されていた。
マリアたちはこの街の大通りの起点になるカルケ門を通り抜けて、アウグステオン広場に入場した。この広場は南側が『ハギア・ソフィア大聖堂』の正面の門に、東側が元老院議事堂に接している上、北側が大宮殿の正面入口でもあった。
すでに噂を聞きつけた住民たちが、自分たちを、そしてメフメト二世をここまで追いこんだ幼女を見ようと、このアウグステオン広場に集まっていた。大通りからついてきたやじ馬も加わって、広場はひとであふれ返りはじめている。
マリアはそこに集まった人々のほうに目をむけた。
興味と不安でざわつく人々たちに目をむけた。老若男女がそこに集っていた。だれもが色鮮やかな衣服をまとい、活気に満ちた表情をしていた。領土拡張をほしいままにしているメフメト二世の勢い、そのままに人民もその栄華を享受しているのだろうと思えた。
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