398 / 935
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第46話 トルコ軍に攻撃をしかけろ!
しおりを挟む
「レオン。トルコ軍の攻撃をしのげるかい?」
ロルフがふいに打診してきた。レオンは一も二もなく返事した。
「ええ、もちろんです」
ロルフ・ギュンターの打診は絶対だ。断るなどという選択肢は持ちえない。
「ただ、あまりにも広範囲すぎます。全部を防ぐというのはさすがに……」
「んじゃあ、どンくらいの範囲ならイケんの?」
ノアは目の前にひろがるドナウ川の対岸をざっと見渡した。
「そうですね。ぼくを中心にして両側に1キロメートル程度ですかね。あの程度の大砲の砲弾なら、それくらいの範囲はなんとかなり……いえ、なんとかしてみせます」
「あの程度の大砲?」
ブラドがレオンが口にした言葉を聞き逃さなかった。
「レオン、貴様はウルバン砲をあの程度と抜かすか?。コンスタンティノープルもあれには苦しめられたのだぞ。あの大砲がどれほどの威力だと思っている!」
「殿、まだそのようなことをおっしゃいますか?」
ヴラドは威圧してきたが、レオンは毅然とした態度で言った。
「殿、そこにいるロルフ、そしてマリアが殿のご期待を上回る『力』をお見せしたかと思います。わたしも今からそれをお見せしたく存じます」
レオンは自信がみなぎっていくのを感じた。先だってまで、このブラドの前でずっと萎縮し続けていたのが嘘のようだった。この男は理不尽きわまりない暴君だが、『使える』と値踏みしたとたんに、態度を一変させる切り替えの早さがあった。
おそらくマリアもロルフも瞬時に、カリスマや横暴のなかに潜む、その実務的な臭いを嗅ぎ分けたのだろう。ならば自分もそこにつけ入ることができる。
ヴラドの威厳に飲み込まれることも、へりくだることもない——。
「殿、こちらからトルコ軍に攻撃をしかけていただけますか?」
レオンは恭しい態度でヴラドに申し出たが、なかば命令と言ってよかった。ロルフのやり方だ——。
「いいだろう。ストイカ!。攻撃命令を」
ストイカは逡巡するように視線を泳がせたが、すぐに君主に従った。
やがてしばらくしてから、前方のワラキア軍から号砲とともに煙が立ちのぼった。と、数秒後にトルコ軍の陣地に土煙がはねあがった。幕舎までは届かなかったが、前線で渡河の準備をしている兵士の数人がそれに巻き込まれた。
そこから一気に緊張が高まった。
対岸のほうでは指揮官らしき男が、何かを強い口調で命令しはじめ、砲手とおぼしき連中が砲座のほうへ駆け出していく。そのすぐうしろを補佐係らしき若者たちも続く。
ロルフがふいに打診してきた。レオンは一も二もなく返事した。
「ええ、もちろんです」
ロルフ・ギュンターの打診は絶対だ。断るなどという選択肢は持ちえない。
「ただ、あまりにも広範囲すぎます。全部を防ぐというのはさすがに……」
「んじゃあ、どンくらいの範囲ならイケんの?」
ノアは目の前にひろがるドナウ川の対岸をざっと見渡した。
「そうですね。ぼくを中心にして両側に1キロメートル程度ですかね。あの程度の大砲の砲弾なら、それくらいの範囲はなんとかなり……いえ、なんとかしてみせます」
「あの程度の大砲?」
ブラドがレオンが口にした言葉を聞き逃さなかった。
「レオン、貴様はウルバン砲をあの程度と抜かすか?。コンスタンティノープルもあれには苦しめられたのだぞ。あの大砲がどれほどの威力だと思っている!」
「殿、まだそのようなことをおっしゃいますか?」
ヴラドは威圧してきたが、レオンは毅然とした態度で言った。
「殿、そこにいるロルフ、そしてマリアが殿のご期待を上回る『力』をお見せしたかと思います。わたしも今からそれをお見せしたく存じます」
レオンは自信がみなぎっていくのを感じた。先だってまで、このブラドの前でずっと萎縮し続けていたのが嘘のようだった。この男は理不尽きわまりない暴君だが、『使える』と値踏みしたとたんに、態度を一変させる切り替えの早さがあった。
おそらくマリアもロルフも瞬時に、カリスマや横暴のなかに潜む、その実務的な臭いを嗅ぎ分けたのだろう。ならば自分もそこにつけ入ることができる。
ヴラドの威厳に飲み込まれることも、へりくだることもない——。
「殿、こちらからトルコ軍に攻撃をしかけていただけますか?」
レオンは恭しい態度でヴラドに申し出たが、なかば命令と言ってよかった。ロルフのやり方だ——。
「いいだろう。ストイカ!。攻撃命令を」
ストイカは逡巡するように視線を泳がせたが、すぐに君主に従った。
やがてしばらくしてから、前方のワラキア軍から号砲とともに煙が立ちのぼった。と、数秒後にトルコ軍の陣地に土煙がはねあがった。幕舎までは届かなかったが、前線で渡河の準備をしている兵士の数人がそれに巻き込まれた。
そこから一気に緊張が高まった。
対岸のほうでは指揮官らしき男が、何かを強い口調で命令しはじめ、砲手とおぼしき連中が砲座のほうへ駆け出していく。そのすぐうしろを補佐係らしき若者たちも続く。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる