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ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第32話 コンスタンティノープル陥落5
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だが、皇帝コンスタンティノス11世はあきらめなかった、
東ローマ帝国パレオロゴス王朝の皇帝、そして初代アウグスツスから脈々と続く正統なローマ皇帝の継承者であるこの自分が、1100年も続く『ローマ帝国』を終わらせるわけにはいかないと決意していた。
コンスタンティノス11世はジュスティニアーニに徹底抗戦を命じる。
メフメトも攻撃の手を緩めることはなかった。
数週間、オスマン=トルコは攻め続けた。金角湾からの攻撃は海側の壁に阻まれ、陸からの砲撃は、あのテオドシウスの城壁が寄せ付けなかった。
その間、なんどもメフメトは撤退を進められ、それを選択しそうになった。犠牲者は増え、食料は手に入らず、膠着し続ける状態に、兵たちの士気は日に日に下がっていくのがわかった。
やがてお互いになんでもありの戦いになり、戦況は日に日に残酷さを増していった。
メフメトは捕虜の船乗りを壁の前に串刺しにして、市民にみえるように晒した。
するとジュスティニアーニは胸壁からトルコの捕虜を首つりにして見せしめにした。
城壁の外では血で血を争う白兵戦がなんども繰り広げられていた。大砲や銃や弓という飛び道具もあったが、まだこの時代は剣や斧や槍が中心の時代で、兵士たちはお互いの目をみながら、相手の血飛沫を浴びながら、命のやりとりをしていた。
その重圧はしだいにお互いの兵士たちを疲弊させていった。
そんな戦いが一ヶ月以上続いた。
コンスタンティノープルはおおきな局面をむかえようとしていた。
資金が尽きたのだった——。
ビザンチン帝国では、兵士のほとんどを傭兵でまかなっているため、資金不足は即、降伏を意味する。コンスタンティノス11世は金を捻出するため、教会内にある聖遺物をすべて溶かすように命じた。
ビザンチン帝国もまた追い込まれていた。
そんなとき、ベネチアがついに動いて、地中海に40隻の巨大な船隊が集結させているとの報告がもたらされた。
メフメトにとっては、もっとも怖れていた事態だった。これほど優位な戦力でありながら、コンスタンティノープルを落とすことができないことに苛立った。
5月20日——。
そんなとき吉報がもたらされた。宮廷づきの占星術師が『星と月が縦にならぶ』、オスマンにとって吉兆となる徴が現れたと予言したのだ。
メフメトはこの予言にこころ踊る思いだった。
果たしてその夜、月が真っ黒に陰りはじめた。
『月食』——。
不吉な現象であったが、イスラムではこのような不吉な事象は、相手に災いをもたらす証と信じられていたので、まさに吉兆だった。
だが、キリスト教徒にとっては、これは自分たちの行く末を象徴しているものだった。だれもがその不吉な兆候に恐怖した。
5月28日 包囲して8週目——。
この日、帝国第一の格式を誇るキリスト教正教会の大聖堂「ハギア・ソフィア大聖堂」に雷が落ちた。ビザンチン帝国の市民は大パニックになった。
聖母に守られているはずのこの聖地で、聖堂の屋根が燃えているのだ。
あの不吉な兆候にくわえて、このような災い——。
キリストの神は民を見捨てた……。
そのとき、コンスタンティノス11世は覚悟をきめた。
東ローマ帝国パレオロゴス王朝の皇帝、そして初代アウグスツスから脈々と続く正統なローマ皇帝の継承者であるこの自分が、1100年も続く『ローマ帝国』を終わらせるわけにはいかないと決意していた。
コンスタンティノス11世はジュスティニアーニに徹底抗戦を命じる。
メフメトも攻撃の手を緩めることはなかった。
数週間、オスマン=トルコは攻め続けた。金角湾からの攻撃は海側の壁に阻まれ、陸からの砲撃は、あのテオドシウスの城壁が寄せ付けなかった。
その間、なんどもメフメトは撤退を進められ、それを選択しそうになった。犠牲者は増え、食料は手に入らず、膠着し続ける状態に、兵たちの士気は日に日に下がっていくのがわかった。
やがてお互いになんでもありの戦いになり、戦況は日に日に残酷さを増していった。
メフメトは捕虜の船乗りを壁の前に串刺しにして、市民にみえるように晒した。
するとジュスティニアーニは胸壁からトルコの捕虜を首つりにして見せしめにした。
城壁の外では血で血を争う白兵戦がなんども繰り広げられていた。大砲や銃や弓という飛び道具もあったが、まだこの時代は剣や斧や槍が中心の時代で、兵士たちはお互いの目をみながら、相手の血飛沫を浴びながら、命のやりとりをしていた。
その重圧はしだいにお互いの兵士たちを疲弊させていった。
そんな戦いが一ヶ月以上続いた。
コンスタンティノープルはおおきな局面をむかえようとしていた。
資金が尽きたのだった——。
ビザンチン帝国では、兵士のほとんどを傭兵でまかなっているため、資金不足は即、降伏を意味する。コンスタンティノス11世は金を捻出するため、教会内にある聖遺物をすべて溶かすように命じた。
ビザンチン帝国もまた追い込まれていた。
そんなとき、ベネチアがついに動いて、地中海に40隻の巨大な船隊が集結させているとの報告がもたらされた。
メフメトにとっては、もっとも怖れていた事態だった。これほど優位な戦力でありながら、コンスタンティノープルを落とすことができないことに苛立った。
5月20日——。
そんなとき吉報がもたらされた。宮廷づきの占星術師が『星と月が縦にならぶ』、オスマンにとって吉兆となる徴が現れたと予言したのだ。
メフメトはこの予言にこころ踊る思いだった。
果たしてその夜、月が真っ黒に陰りはじめた。
『月食』——。
不吉な現象であったが、イスラムではこのような不吉な事象は、相手に災いをもたらす証と信じられていたので、まさに吉兆だった。
だが、キリスト教徒にとっては、これは自分たちの行く末を象徴しているものだった。だれもがその不吉な兆候に恐怖した。
5月28日 包囲して8週目——。
この日、帝国第一の格式を誇るキリスト教正教会の大聖堂「ハギア・ソフィア大聖堂」に雷が落ちた。ビザンチン帝国の市民は大パニックになった。
聖母に守られているはずのこの聖地で、聖堂の屋根が燃えているのだ。
あの不吉な兆候にくわえて、このような災い——。
キリストの神は民を見捨てた……。
そのとき、コンスタンティノス11世は覚悟をきめた。
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