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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第240話 ーおまけー オリンピック編 シノプシス
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■オリンピック編
ボクシングのタイトルマッチを見て興奮する拓也。
夢見醒を相手にシャドーボクシングをしようとするのを、醒、軽くスウェーでかわし、逆にフックを入れるまねをする。
「なんだよ。結構うまいじゃん」
「見よう見まねだよ」
前世へ潜る醒。
競技場を取りまく人々の熱狂する歓声が耳を聾する。
見ると競技場の選手たちが一糸もまとわらないすっ裸で競技をしている。
『げえーっ。なんで裸なの?』
古代ギリシアは4年に一度のオリュンピア競技に湧いていた。
選手たちの中から前世の人物を探し出す醒。タルディスと名乗る男は、アテナイの出身で全種目競争の競技者だった。
全種目競争は短距離競争、レスリング、ボクシング、円盤投げ、やり投げの5種目のうち、3種目最高点をとらねば勝者となれない。
タルディスはスパルタ出身の英雄ヒッポステネスに数度の対決にも勝てなかったことを悔やんでいた。だが、今回の大会では「円盤投げ」は負けたものの「やり投げ」で勝利し、残り3種目のうち2つを取りにいくことに執念を燃やしていた。
もう何年も王座に君臨する英雄ヒッポステネスを見た醒は、その男こそがトラウマであることに驚愕する。戦いを制止する醒の言うことも聞かず、レスリングの試合に向かうタルディスだったが、ヒッポステネスの反則の前にタルディスは重傷を負い、ボクシングと短距離競争を残したまま、試合の続行が不可能になってしまう。
おのれの悲運を嘆くタルディス。それを見て醒が代わりに出場することを申し出る。
代役を主審に許された醒は、素っ裸になり競技場へむかう。
観客は身代わりに子供がでてきたことにブーイングを浴びせかけるが、短距離競争でスタートラインに並んだ醒がひとり違ったポーズをしているのを見ると、その騒ぎは最高潮に達し、みな罵声と嘲笑を浴びせかける。
しかし、スタートしたとたん、観衆の罵声が歓声に変わる。スタンディングスタートに対して圧倒的優位なクラウチングスタートで飛び出した醒は、他を寄せ付けることなくぶっちぎりで優勝したのだ。
2対2。総合優勝はボクシング勝負にかかることになる。
『気が進まないな。トラウマ相手じゃあ楽勝だから…』
詰め物を入れた革手袋をこぶしに巻いて醒が、『力をもらうよ』と拳に力をこめるが力がやってこない。あわててタルディスの方を見ると、彼は気絶している。
『やばい。心残りの念を力にできない』
大男のヒッポステネスがこれみよがしに力を誇示するパフォーマンスを見せる。
あせる醒はタルディスを起こそうと駆け寄るが、主審に促されて競技場中央にひっぱりだされてしまう。
『このままじゃやられる』
ヒッポステネス、醒の下半身を見おろして、
「毛もろくに生えそろってないガキが…」
醒、思わずカッとなってヒッポステネスをにらみつける。
が、開始の合図もないまま、ヒッポステネスにいきなり強力なパンチを見舞われる。腕でガードするがふっとばされる醒。
「あいかわらず、汚いまねしてくれるね」
「こうなったら、見よう見まねだな」
と、醒、開き直ってパンチを繰り出す。
が、そのパンチがことごとくヒッポステネスの体をとらえる。
ジャブの応酬に笑っていた観衆も、見たこともないパンチ、フックやアッパーが繰り出されていく内に、騒然となっていく。
「今のパンチ、なんだ?」
見事なフットワークでスウェーしてよけ、追いかけざまにパンチをたたき込む醒の華麗な戦いに、はじめは余裕のヒッポステネスだったが、ボディブローの連打についに地面に崩れ落ちる。
「た、たおれ…た…」
声をうしなう観衆。
必死のヒッポステネス、醒の足をつかむと力まかせに放りなげる。なすすべもなく飛ばされ、気絶しているタルディスにぶつかる醒。
ようやく目をさますタルディス。
「おじさん、あいつを負かしたいんだろ。ちゃんと起きててくれなきゃダメじゃないか」
その心残りの念を拳に宿らせる醒。
醒、ずかずかと競技場中央のヒッポステネスのところにいくと、襲いかかるヒッポステネスを一撃のアッパーで競技場かなたまで軽々とふっとばしてしまう。
「ボクに勝とうなんて、2千5百年早いんだよ」
現代。
ぼーっとしてる醒に拓也が軽いパンチを入れる。もろに顎に入ったパンチを見て、
「なあんだ。この間のはまぐれか…」
醒、何か言いかけるが、頬杖をついてぶすっとする。
1999年5月24日
このシノプシスの奥付はなんと1999年5月24日になってます。
おじいちゃんになるわけです。
どんだけ放置していたのか、と思うと、おのれの怠慢が悔やまれてなりません。
本作は当初、セイとマリア、エヴァの三人での旅として書き進められていましたが、途中で賢人との知恵比べを思いつき、あらたに賢人をやりこめるキャラ、スピロ・クロニスと妹のゾーイ・クロニスを追加して全面改稿しました。
元々、このふたり、とくにもうひとりの主人公になるスピロは、別のエピソードで追加したいと暖めていたのですが、このアイディアのために前倒しで活躍させることにしました。まさかこんな博識で切れ者になるとはおもいませんでしたが……(笑)。
またセイやスピロの活躍をみたい、という方には、大変申し訳ないですが、次はマリアが活躍するエピソード。
5人揃っての旅はその次を予定しています。どうぞお待ちください。
ボクシングのタイトルマッチを見て興奮する拓也。
夢見醒を相手にシャドーボクシングをしようとするのを、醒、軽くスウェーでかわし、逆にフックを入れるまねをする。
「なんだよ。結構うまいじゃん」
「見よう見まねだよ」
前世へ潜る醒。
競技場を取りまく人々の熱狂する歓声が耳を聾する。
見ると競技場の選手たちが一糸もまとわらないすっ裸で競技をしている。
『げえーっ。なんで裸なの?』
古代ギリシアは4年に一度のオリュンピア競技に湧いていた。
選手たちの中から前世の人物を探し出す醒。タルディスと名乗る男は、アテナイの出身で全種目競争の競技者だった。
全種目競争は短距離競争、レスリング、ボクシング、円盤投げ、やり投げの5種目のうち、3種目最高点をとらねば勝者となれない。
タルディスはスパルタ出身の英雄ヒッポステネスに数度の対決にも勝てなかったことを悔やんでいた。だが、今回の大会では「円盤投げ」は負けたものの「やり投げ」で勝利し、残り3種目のうち2つを取りにいくことに執念を燃やしていた。
もう何年も王座に君臨する英雄ヒッポステネスを見た醒は、その男こそがトラウマであることに驚愕する。戦いを制止する醒の言うことも聞かず、レスリングの試合に向かうタルディスだったが、ヒッポステネスの反則の前にタルディスは重傷を負い、ボクシングと短距離競争を残したまま、試合の続行が不可能になってしまう。
おのれの悲運を嘆くタルディス。それを見て醒が代わりに出場することを申し出る。
代役を主審に許された醒は、素っ裸になり競技場へむかう。
観客は身代わりに子供がでてきたことにブーイングを浴びせかけるが、短距離競争でスタートラインに並んだ醒がひとり違ったポーズをしているのを見ると、その騒ぎは最高潮に達し、みな罵声と嘲笑を浴びせかける。
しかし、スタートしたとたん、観衆の罵声が歓声に変わる。スタンディングスタートに対して圧倒的優位なクラウチングスタートで飛び出した醒は、他を寄せ付けることなくぶっちぎりで優勝したのだ。
2対2。総合優勝はボクシング勝負にかかることになる。
『気が進まないな。トラウマ相手じゃあ楽勝だから…』
詰め物を入れた革手袋をこぶしに巻いて醒が、『力をもらうよ』と拳に力をこめるが力がやってこない。あわててタルディスの方を見ると、彼は気絶している。
『やばい。心残りの念を力にできない』
大男のヒッポステネスがこれみよがしに力を誇示するパフォーマンスを見せる。
あせる醒はタルディスを起こそうと駆け寄るが、主審に促されて競技場中央にひっぱりだされてしまう。
『このままじゃやられる』
ヒッポステネス、醒の下半身を見おろして、
「毛もろくに生えそろってないガキが…」
醒、思わずカッとなってヒッポステネスをにらみつける。
が、開始の合図もないまま、ヒッポステネスにいきなり強力なパンチを見舞われる。腕でガードするがふっとばされる醒。
「あいかわらず、汚いまねしてくれるね」
「こうなったら、見よう見まねだな」
と、醒、開き直ってパンチを繰り出す。
が、そのパンチがことごとくヒッポステネスの体をとらえる。
ジャブの応酬に笑っていた観衆も、見たこともないパンチ、フックやアッパーが繰り出されていく内に、騒然となっていく。
「今のパンチ、なんだ?」
見事なフットワークでスウェーしてよけ、追いかけざまにパンチをたたき込む醒の華麗な戦いに、はじめは余裕のヒッポステネスだったが、ボディブローの連打についに地面に崩れ落ちる。
「た、たおれ…た…」
声をうしなう観衆。
必死のヒッポステネス、醒の足をつかむと力まかせに放りなげる。なすすべもなく飛ばされ、気絶しているタルディスにぶつかる醒。
ようやく目をさますタルディス。
「おじさん、あいつを負かしたいんだろ。ちゃんと起きててくれなきゃダメじゃないか」
その心残りの念を拳に宿らせる醒。
醒、ずかずかと競技場中央のヒッポステネスのところにいくと、襲いかかるヒッポステネスを一撃のアッパーで競技場かなたまで軽々とふっとばしてしまう。
「ボクに勝とうなんて、2千5百年早いんだよ」
現代。
ぼーっとしてる醒に拓也が軽いパンチを入れる。もろに顎に入ったパンチを見て、
「なあんだ。この間のはまぐれか…」
醒、何か言いかけるが、頬杖をついてぶすっとする。
1999年5月24日
このシノプシスの奥付はなんと1999年5月24日になってます。
おじいちゃんになるわけです。
どんだけ放置していたのか、と思うと、おのれの怠慢が悔やまれてなりません。
本作は当初、セイとマリア、エヴァの三人での旅として書き進められていましたが、途中で賢人との知恵比べを思いつき、あらたに賢人をやりこめるキャラ、スピロ・クロニスと妹のゾーイ・クロニスを追加して全面改稿しました。
元々、このふたり、とくにもうひとりの主人公になるスピロは、別のエピソードで追加したいと暖めていたのですが、このアイディアのために前倒しで活躍させることにしました。まさかこんな博識で切れ者になるとはおもいませんでしたが……(笑)。
またセイやスピロの活躍をみたい、という方には、大変申し訳ないですが、次はマリアが活躍するエピソード。
5人揃っての旅はその次を予定しています。どうぞお待ちください。
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