ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

文字の大きさ
上 下
330 / 935
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜

第218話 ヤツはサムライの国ニッポンの男の子だかンな

しおりを挟む
 アンドロギュノスを斬って斬って、斬りまくって六百メートルの距離を駆け抜けていったセイの姿に、エヴァはあきれかえるばかりだった。
「セイさん、息ひとつあがってませんよ」
「オリンピックであの力使ったら、観客のど肝を抜いてただろうな」
 マリアが皮肉をこめて言ったが、スピロは珍しくうっとりとしたような感想を漏らした。
「マリア様。『スタディオン走』はあんなに距離はありませんわよ」
「それにしても、ため息がでるような華麗な剣さばきでしたこと」
「ま、ヤツはサムライの国ニッポンの男の子だかンな」
 マリアが手でひさしをつくって、はるかかなた、見えるかどうかもあやしいほどの距離にいるセイのほうを見ながら言った。その顔には愛おしい気持ちがあふれていた。
 エヴァはマリアの心情を思うと、すこしやりきれない気持ちだった。セイのことが好きで好きでしかたがないことは、はた目にも痛いほど感じられる。

『セイと一緒に旅すりゃ誰だって好きになっちまう』

 マリアはたまにそう言うことがあった。いつもエヴァは何も言いかえさなかったが、その気持ちには同感だった
 エヴァの中には好きという明隙な気持ちはなかったが、セイと離れたくないという気持ちがすこしづつ高まっているのを感じていた。
 前世の記憶の中に潜るという特種な任務での、バディとしての信頼感からなのか、ただ単純に依存したいという気持ちなのかは自分でもわからない。もしかしたら、子供の頃父親と離れていたせいでかなえられなかった、居心地の良さや安心感を求めているだけかもしれない。
 いや、単純に異性として好きになっているのに気づいてないだけか……。

 エヴァはセイが不自然にあたりを見回しているのに気づいた。なにか気になることがあるのか、どうもなにかを探しているようにみえる。
 エヴァはスロットルレバーをひねってバイクを上昇させた。するとほどなく、後部座席のタルディスが北側の観客席のむこう、スタディオンの方を指さして叫んだ。
「エヴァさん、あそこ!。何か大きなものが!」

 たしかに何かがが動いていた。ガチャン、ガチャンと乾いた音を立てながら、高く積み上がり、堅牢に組み上がっていた。すでにビル十階ほどにまでなっており、全体像を見る限り、人間のフォルムに似せた機械にみえる。
 細部に目をむけると顔の部分には戦車の車輪がはめこまれ、その外周は装飾品に飾られていた。身体には御者台や装飾品、スタディオンにあった審判員の椅子までもが組み込まれていた。手や足は馬と戦車をつなぐながえくびきが使われ、革ひもや手綱で補強されてできあがっていた。


 そしてその右肩にはアンドレアルフスがそして左肩にはアルキビアデスが乗っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...