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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第215話 その名を口にするな!!!!
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セイは競馬場のレーンのはるか彼方に出現する新たな異形の怪物に目を奪われた。
「セイ!。そいつはアンドロギュノスだ」
こちらに駆けつけてきながら、マリアが叫んだ。
「アンドロギュノスって……、両性具有っていう?」
「ええ、そうですわ。プラトンの『饗宴』の中で、アリストパネスさんが提示した人間の本来あるべき姿……らしいですわ」
いつの間にか頭上まで飛んできたピストル・バイクの上からエヴァが補足してきた。
「あれが本来の人間の姿?。冗談だろ、エヴァ?」
「いえ、冗談ではありません。プラトンの描く理想の『イデア世界』にいた純粋な人間の姿はあのような形をしていると」
走ってきたスピ口が胸を手で押さえて、息をととのえながら言った。
「でも、あれはどうみても……」
セイがその正体に言及しようとすると、マリアがヒステリックに怒りをぶつけてきた。
「セイ!。その名を口にするな。身の毛がよだつ」
「ええ。セイさん、やめてください。あたしも大の苦手です」
マリアに続いてエヴァまでもセイが口にしようとすることばを必死で押しとどめようとする。
「なんなんだい、口にするのをはばかられるヤツの名って?」
ゾーイが興味深げにきいてきたが、マリアが怒り心頭の顔つきでゾーイを叱りつけた。
「ゾーイ、てめぇ。訊くなと言ってるだろうがぁぁ」
あまりの剣幕にゾーイが目を白黒させた。
競技場にアンドロギュノスがあふれはじめる。そのからだに生えた八本の手足をつかって、カサカサとあたりを違いまわりはじめた。その姿にエヴァが身を震わせた。
「あぁ、嫌だ。からだの色こそ違いますが、もうソレにしか見えませんわ」
マリアも自分の肩を抱くようにして、からだの震えをしずめようとする。
「あぁ、オレもソレにしか見えない。『G』にしかな」
「『G』……。ですか?」
スピロが純粋な興味からそのアルファベットを反芻した。
「ニッポンじゃあ、その忌み名を口にできねぇから隠語で呼ばれているンだよ。『G』ってな」
「なるほど」
ポンとスピロが手を打った。
「あれはコックローチですね」
「だーっ、スピロ。その名を口にするなって言っただろうがぁぁぁ。あーーー、虫酸が走る!!」
それを聞いてゾーイがフォローするように私見を口走った。
「マリアさん、よく見てくださいよぉ。ありゃ、ハリウッド映画にでてくる不気味なクリーチャーだよ。コックローチじゃなくてさぁ」
「ゾーイ。きさまも軽々しくその名を口にすんじゃねぇ」
マリアはそう言うなり怒りの矛先を突然セイの方にむけてきた。
「セイ、おまえなんとかしろ。オレは辞退させてもらうからな」
「えぇ、セイさん、わたしもそうさせてください。見ているだけで気分がもう……」
セイはマリアとエヴァに思いがけない弱点を|カミングアウトされて少々困惑したが、これをあれこれ言っても仕方がないので、スピロとゾーイに大袈裟に肩をすくめてみせてから言った。
「ぼくがなんとかするよ!」
「セイ!。そいつはアンドロギュノスだ」
こちらに駆けつけてきながら、マリアが叫んだ。
「アンドロギュノスって……、両性具有っていう?」
「ええ、そうですわ。プラトンの『饗宴』の中で、アリストパネスさんが提示した人間の本来あるべき姿……らしいですわ」
いつの間にか頭上まで飛んできたピストル・バイクの上からエヴァが補足してきた。
「あれが本来の人間の姿?。冗談だろ、エヴァ?」
「いえ、冗談ではありません。プラトンの描く理想の『イデア世界』にいた純粋な人間の姿はあのような形をしていると」
走ってきたスピ口が胸を手で押さえて、息をととのえながら言った。
「でも、あれはどうみても……」
セイがその正体に言及しようとすると、マリアがヒステリックに怒りをぶつけてきた。
「セイ!。その名を口にするな。身の毛がよだつ」
「ええ。セイさん、やめてください。あたしも大の苦手です」
マリアに続いてエヴァまでもセイが口にしようとすることばを必死で押しとどめようとする。
「なんなんだい、口にするのをはばかられるヤツの名って?」
ゾーイが興味深げにきいてきたが、マリアが怒り心頭の顔つきでゾーイを叱りつけた。
「ゾーイ、てめぇ。訊くなと言ってるだろうがぁぁ」
あまりの剣幕にゾーイが目を白黒させた。
競技場にアンドロギュノスがあふれはじめる。そのからだに生えた八本の手足をつかって、カサカサとあたりを違いまわりはじめた。その姿にエヴァが身を震わせた。
「あぁ、嫌だ。からだの色こそ違いますが、もうソレにしか見えませんわ」
マリアも自分の肩を抱くようにして、からだの震えをしずめようとする。
「あぁ、オレもソレにしか見えない。『G』にしかな」
「『G』……。ですか?」
スピロが純粋な興味からそのアルファベットを反芻した。
「ニッポンじゃあ、その忌み名を口にできねぇから隠語で呼ばれているンだよ。『G』ってな」
「なるほど」
ポンとスピロが手を打った。
「あれはコックローチですね」
「だーっ、スピロ。その名を口にするなって言っただろうがぁぁぁ。あーーー、虫酸が走る!!」
それを聞いてゾーイがフォローするように私見を口走った。
「マリアさん、よく見てくださいよぉ。ありゃ、ハリウッド映画にでてくる不気味なクリーチャーだよ。コックローチじゃなくてさぁ」
「ゾーイ。きさまも軽々しくその名を口にすんじゃねぇ」
マリアはそう言うなり怒りの矛先を突然セイの方にむけてきた。
「セイ、おまえなんとかしろ。オレは辞退させてもらうからな」
「えぇ、セイさん、わたしもそうさせてください。見ているだけで気分がもう……」
セイはマリアとエヴァに思いがけない弱点を|カミングアウトされて少々困惑したが、これをあれこれ言っても仕方がないので、スピロとゾーイに大袈裟に肩をすくめてみせてから言った。
「ぼくがなんとかするよ!」
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