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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第213話 あのぉ、この悪魔、どうします?
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スピロがマリアに言われるがまま視線をむけると、スタートゲートの『アフェシス』側の折り返し点の標柱の上に何者かが立っていた。なにかを乞うような仕草をくりかえしている。
セイのほうを見ると、その標柱とは反対側のタラクシッポス側の標柱付近で、残党の怪物を粛々と狩っていた。それを交互に見ていたマリアが面倒くさそうに言った。
「しゃあねぇ。オレたちの方が近い。倒しに行くかぁ」
「そうですわね。親玉のアンドレアルフスを倒せば、怪物どももあらかた消えちゃうでしょしね」
マリアは大きな剣を肩に担ぎ上げると、競馬場のなかに足を踏みいれ歩き出した。それを見てエヴァもバイクに跨がる。
スピロもそのあとに続いて歩き出してから、はたと思い出して尋ねた。
「マリア様、あの……、この固まりかけの悪魔、どうされます?」
マリアはふりむきもせず、サラリと答えた。
「首、刎ねとけ。復活せんともかぎらんしな」
「あのぉ、わたくし、悪魔の首を刎ねられるような武器を持ってませんのよ」
「ゾーイは?」
「マリア様、わがままかと思いますが、ゾーイに残酷な後始末を押しつけたくありません」
マリアはくるりと振り向くと、不機嫌そうな顔をこちらにむけた。が、すぐにあたりを見回してなにかを拾いあげると、スピロの方へ投げてよこした。
スピ口はあわててそれをキャッチした。
「ほら、剣だ。どうやらどっかの兵隊か、警備のヤツが身につけてたモンだろ。おまえもこっちの世界の武器だったら使えンだろう。そいつでそこのバカ悪魔の首を叩き落としとけ」
スピロは手にした剣をまじまじと見た。
刀身が彎曲している60センチほどの片刃の剣。束と剣身とが一体に作られた『マカイラ』と呼ばれる戦刀。スパルタ兵が好んだと言われているから、おそらくスパルタ兵が帯刀していたものだろう。
剣を子細に見つめればみつめるほど、スピロは自分のなかに、怖さとためらいが込み上げてくるのに気づいた。自分はこれを構えたとたん、この剣を振るえないとわかった。
横にいるゾーイがその様子を心配そうに見ているのが、目をむけなくても感じられる。
そう自分にはそんな資格はないし、そんな能力はない——。
そんな思いがつきあげてくる。
が、それと同時にふいに、スピロはこころの重石がとれるのを感じた。
そうなのだ。自分には最初からそんな資格などないのだ——。
セイのほうを見ると、その標柱とは反対側のタラクシッポス側の標柱付近で、残党の怪物を粛々と狩っていた。それを交互に見ていたマリアが面倒くさそうに言った。
「しゃあねぇ。オレたちの方が近い。倒しに行くかぁ」
「そうですわね。親玉のアンドレアルフスを倒せば、怪物どももあらかた消えちゃうでしょしね」
マリアは大きな剣を肩に担ぎ上げると、競馬場のなかに足を踏みいれ歩き出した。それを見てエヴァもバイクに跨がる。
スピロもそのあとに続いて歩き出してから、はたと思い出して尋ねた。
「マリア様、あの……、この固まりかけの悪魔、どうされます?」
マリアはふりむきもせず、サラリと答えた。
「首、刎ねとけ。復活せんともかぎらんしな」
「あのぉ、わたくし、悪魔の首を刎ねられるような武器を持ってませんのよ」
「ゾーイは?」
「マリア様、わがままかと思いますが、ゾーイに残酷な後始末を押しつけたくありません」
マリアはくるりと振り向くと、不機嫌そうな顔をこちらにむけた。が、すぐにあたりを見回してなにかを拾いあげると、スピロの方へ投げてよこした。
スピ口はあわててそれをキャッチした。
「ほら、剣だ。どうやらどっかの兵隊か、警備のヤツが身につけてたモンだろ。おまえもこっちの世界の武器だったら使えンだろう。そいつでそこのバカ悪魔の首を叩き落としとけ」
スピロは手にした剣をまじまじと見た。
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剣を子細に見つめればみつめるほど、スピロは自分のなかに、怖さとためらいが込み上げてくるのに気づいた。自分はこれを構えたとたん、この剣を振るえないとわかった。
横にいるゾーイがその様子を心配そうに見ているのが、目をむけなくても感じられる。
そう自分にはそんな資格はないし、そんな能力はない——。
そんな思いがつきあげてくる。
が、それと同時にふいに、スピロはこころの重石がとれるのを感じた。
そうなのだ。自分には最初からそんな資格などないのだ——。
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