320 / 935
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第208話 ゾォィィ、ありがとう
しおりを挟む
ゾーイはポダルゴスの首につかまったまま、眼下をのぞき見た。
人や怪物たちが豆粒ほどに見える。ふとゴールライン上に目をやると、少女の姿がゆっくりと消えていくのが見えた。ゾーイは、はあぁっと安堵のため息が漏らしながら、ポダルゴスの首筋にもたれかかり、頬をよせると『みんな、ありがとう……』と囁いた。
四頭に馬たちが誇らしげにいなないた。
ゾーイはセイのいる御者台に戻ることにした。ポダルゴスの首を軽くなでると、うしろにからだを捻るようにしてジャンプした。ふわっと浮いたからだがまるでスローモーションのようにゆっくりと、御者台に戻っていく。
「ゾぉぉぉイ!!」
が、つま先が床についた瞬間、ゾーイはセイに抱きすくめられた。
「ありがとう。ありがとう……」
熱い思いがこもった感謝のことばとともに、セイが抱きしめるその腕にちからがこもってくる。ゾーイは男の子とハグすることはあったが、こんなに情熱的に抱きしめられたのははじめてだった。
ゾーイはドキッとした。
吐息が耳元をくすぐるほどの距離にセイの顔があった。
安堵のせいだろうか、嬉しさのあまりだろうか、すこしセイの目元は潤んでみえる。
自分の顔が赤くなるのが自分でもわかった。
「なんてすごいんだ。ゾーイ」
セイは抱きついたまま、ゾーイの耳元で声をあげた。ゾーイはこみあげる嬉しさと気恥ずかしさで、どうしていいかわからなくなった。胸の高鳴りがとまらない。その胸の鼓動がセイの胸を通して伝わってしまわないのか心配になる。
その鼓動のはやさで自分の気持ちがばれやしないだろうか……。
ゾーイはあわててセイに進言した。
「セイさん、このあとどうすればいいのかい。ずっと飛ばし続けるわけには……」
それを聞いてセイがやっとゾーイを解放してくれた。
「ゾーイ。ありがとう。あとはぼくに任せて。まずは下にいる怪物どもを一掃する。だからすぐに降りてきて」
「一掃する?。下にはまだ何千ってえ怪物がいるんだよ。それを全部だなんて……」
「大丈夫さ。ヤツらは弱い」
「弱いって、たしかにマリアさんもそう言ってたけどさぁ」
「マリアが?。じゃあ、まちがいない」
「いくら弱いといってもあれだけの数だよ」
「心配しないで。こっちもそれだけの数を用意するから……」
「それだけの数……?」
人や怪物たちが豆粒ほどに見える。ふとゴールライン上に目をやると、少女の姿がゆっくりと消えていくのが見えた。ゾーイは、はあぁっと安堵のため息が漏らしながら、ポダルゴスの首筋にもたれかかり、頬をよせると『みんな、ありがとう……』と囁いた。
四頭に馬たちが誇らしげにいなないた。
ゾーイはセイのいる御者台に戻ることにした。ポダルゴスの首を軽くなでると、うしろにからだを捻るようにしてジャンプした。ふわっと浮いたからだがまるでスローモーションのようにゆっくりと、御者台に戻っていく。
「ゾぉぉぉイ!!」
が、つま先が床についた瞬間、ゾーイはセイに抱きすくめられた。
「ありがとう。ありがとう……」
熱い思いがこもった感謝のことばとともに、セイが抱きしめるその腕にちからがこもってくる。ゾーイは男の子とハグすることはあったが、こんなに情熱的に抱きしめられたのははじめてだった。
ゾーイはドキッとした。
吐息が耳元をくすぐるほどの距離にセイの顔があった。
安堵のせいだろうか、嬉しさのあまりだろうか、すこしセイの目元は潤んでみえる。
自分の顔が赤くなるのが自分でもわかった。
「なんてすごいんだ。ゾーイ」
セイは抱きついたまま、ゾーイの耳元で声をあげた。ゾーイはこみあげる嬉しさと気恥ずかしさで、どうしていいかわからなくなった。胸の高鳴りがとまらない。その胸の鼓動がセイの胸を通して伝わってしまわないのか心配になる。
その鼓動のはやさで自分の気持ちがばれやしないだろうか……。
ゾーイはあわててセイに進言した。
「セイさん、このあとどうすればいいのかい。ずっと飛ばし続けるわけには……」
それを聞いてセイがやっとゾーイを解放してくれた。
「ゾーイ。ありがとう。あとはぼくに任せて。まずは下にいる怪物どもを一掃する。だからすぐに降りてきて」
「一掃する?。下にはまだ何千ってえ怪物がいるんだよ。それを全部だなんて……」
「大丈夫さ。ヤツらは弱い」
「弱いって、たしかにマリアさんもそう言ってたけどさぁ」
「マリアが?。じゃあ、まちがいない」
「いくら弱いといってもあれだけの数だよ」
「心配しないで。こっちもそれだけの数を用意するから……」
「それだけの数……?」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる