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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第199話 打つ手だてがない——?
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「かもしれない、だとぉ。じゃあ、本物かもしれないんだな」
「え、あぁ、マリアさん。済まないね。あたいには判断できない」
「ゾーイ。無責任なこと言うな」
こちらはさらに強い剣幕だったが、ゾーイはそれに応える術がなかった。が、スピロがすぐに解決策を強く提案してきた。
「ゾーイ。セイ様の戦車に飛び乗って、今すぐ戦車をとめてください。そうすればその子は、サエさんは轢かれるずに済みます。そうマリアさんにも伝えてください」
スピロはゾーイとマリアが思念で語りあっているのを聞いていたのだろう。マリアの声が直接聞こえるわけではないので、ゾーイのした返事から判断したと思われた。
「了解さ、お姉さま。セイさんの戦車に飛び乗って、戦車をとめるよ」
ゾーイはことの経緯がわかるように、マリアにも伝わるいい方で復唱した。が、マリアがひときわ強い思念でそれに異議をねじこんできた。
「待て、ゾーイ。ほんとうにそんなことで回避できるのか!。あいてはこんな小賢しいマネをする悪魔だぞ。そんなに簡単に逃れられるはずねぇだろ。スピロに伝えろ!。ヤツは非力なバカ悪魔だが、悪意の塊だってことを忘れるなってな」
ゾーイがすぐさまそれをスピロに伝えると、スピロは反省のことばを口にした。
「マリア様の言う通りですね。わたくしともあろうものが、授けていただいた武器で簡単に退治できるものですから、敵を侮ってしまいました」
「ゾーイ。その子が本物だろうと偽物だろうとどっちでもいい。セイにその子を轢かせるな。それがどちらだろうと、セイは自分の妹を救えなかったという事実に嘖まされる。なんとかしてくれ!」
そのマリアの悲痛な思いを伝え聞いて、ゾーイは絶望的な気分になっていた。
自分ごときの力量ではとても太刀打ちできない——。
どこから手をつけていいかわからない。叫んで逃げ出したい気分にかられる。
「ゾーイ。いまからわたくしがいくつかの作戦を授けます。でも、たぶんうまくいかないでしょう……」
姉のあまりにも力ない物言いにゾーイは戸惑った。
打つ手だてがない——?。
これまでの窮地を知恵で救ってきた姉をして、ここまで言わせるほど追い込まれているのか。
ゾーイは勇気を振り絞る思いでスピロに尋ねた。
「お姉さま……。ほんとうにダメ……だったら……?」
スピロはとても辛そうな口調で答えた。
「そうですね。ゾーイ、もしそのときは、ごめんなさい……」
「おまえに命をかけてもらいます」
「え、あぁ、マリアさん。済まないね。あたいには判断できない」
「ゾーイ。無責任なこと言うな」
こちらはさらに強い剣幕だったが、ゾーイはそれに応える術がなかった。が、スピロがすぐに解決策を強く提案してきた。
「ゾーイ。セイ様の戦車に飛び乗って、今すぐ戦車をとめてください。そうすればその子は、サエさんは轢かれるずに済みます。そうマリアさんにも伝えてください」
スピロはゾーイとマリアが思念で語りあっているのを聞いていたのだろう。マリアの声が直接聞こえるわけではないので、ゾーイのした返事から判断したと思われた。
「了解さ、お姉さま。セイさんの戦車に飛び乗って、戦車をとめるよ」
ゾーイはことの経緯がわかるように、マリアにも伝わるいい方で復唱した。が、マリアがひときわ強い思念でそれに異議をねじこんできた。
「待て、ゾーイ。ほんとうにそんなことで回避できるのか!。あいてはこんな小賢しいマネをする悪魔だぞ。そんなに簡単に逃れられるはずねぇだろ。スピロに伝えろ!。ヤツは非力なバカ悪魔だが、悪意の塊だってことを忘れるなってな」
ゾーイがすぐさまそれをスピロに伝えると、スピロは反省のことばを口にした。
「マリア様の言う通りですね。わたくしともあろうものが、授けていただいた武器で簡単に退治できるものですから、敵を侮ってしまいました」
「ゾーイ。その子が本物だろうと偽物だろうとどっちでもいい。セイにその子を轢かせるな。それがどちらだろうと、セイは自分の妹を救えなかったという事実に嘖まされる。なんとかしてくれ!」
そのマリアの悲痛な思いを伝え聞いて、ゾーイは絶望的な気分になっていた。
自分ごときの力量ではとても太刀打ちできない——。
どこから手をつけていいかわからない。叫んで逃げ出したい気分にかられる。
「ゾーイ。いまからわたくしがいくつかの作戦を授けます。でも、たぶんうまくいかないでしょう……」
姉のあまりにも力ない物言いにゾーイは戸惑った。
打つ手だてがない——?。
これまでの窮地を知恵で救ってきた姉をして、ここまで言わせるほど追い込まれているのか。
ゾーイは勇気を振り絞る思いでスピロに尋ねた。
「お姉さま……。ほんとうにダメ……だったら……?」
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「そうですね。ゾーイ、もしそのときは、ごめんなさい……」
「おまえに命をかけてもらいます」
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