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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第197話 頼れるのは自分以上の策士だけだ——
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「エヴァ、まずい。それがヤツらの狙いだ。ヤツらはセイをターゲットに変更したと言ってたよな。だったら簡単に止められないはずだ」
「どうすれば?」
エヴァもなんとなく深刻な事態を察したらしい。
マリアは逡巡した。自分がどれほどの助けができるのか自分でもわからない。怪物を倒すのとは勝手がちがいすぎる。
頼れるのは自分以上の策士だけだ——。
「ゾーイ。スピロに伝えてくれ」
マリアは剣をふりながら叫んだ。ゾーイはすぐに応えた。
「マリアさん、何を伝えりゃいいんだい」
余計な質問やつまらない|挨拶《》がないのが助かる。仕事のできる証拠だ。
「ゴールラインにセイの妹のサエの姿が確認された。このままだとセイの戦車がトップでゴールすると同時に妹を轢いちまう。どうすればいい!」
それだけ言って返事を待った。すぐにゾーイが答えを返してきた。
「『おまかせください』って言ってるよ」
「本当だな、まかせていいンだな、スピロ」
「マリアさん、ここはお姉さまに委ねてくれないかい」
「じゃあ、伝えてくれ。オレ個人の見立てとしては、そこにいる妹のサエは、悪魔が創った偽物だと思っている。下級悪魔が召喚なんかできねぇとな。だが、もし本物だったら……。いや、本物か偽物かはどうでもいい。セイに自分の妹を轢かせるような真似はさせたくねぇ」
マリアは飛んできた百の頭をもつ竜ラードーンを下から突き刺してから言った。
「頼む、なんとかしてくれ。万が一、セイが罪の意識で立ち直れなくなったら、オレは一生自分を許せなくなるかもしれねぇ……」
マリアの思いの丈をぶつけるように訴えに、ゾーイが答えた。
「それはなにがなんでも阻止します、だってさ」
「安請け合いしてるんじゃねぇだろうな。もししくじったらただじゃおかねぇぞ、スピロ」
「マリアさん。それはどうやらあたいの役目らしいよ」
「ど、どういうことだ?」
「あたいに任せてくんなよ。あたいがなんとかしてみせるさぁ」
そんなゾーイの安請け合いしたような軽い口調を最後に思念が途絶えた。とたんにマリアは不安のほうがおおきくなった。上空でホバリングしているエヴァに訊いた。
「エヴァ、どうなってる!」
エヴァの顔は下からは見えなかったが、声はあきらかにとまどいの色が感じられた。
「ゾーイさんがすごい勢いで、ゴールラインのサエさんめがけてダッシュしています」
マリアの心配のあまりに臓腑が一気に重たくなるような感覚に陥った。
おもわず口から悪口が漏れ出す。
「マジかよ、スピロ。ゾーイなんかじゃ、なンにもできねぇだろうがぁ」
「どうすれば?」
エヴァもなんとなく深刻な事態を察したらしい。
マリアは逡巡した。自分がどれほどの助けができるのか自分でもわからない。怪物を倒すのとは勝手がちがいすぎる。
頼れるのは自分以上の策士だけだ——。
「ゾーイ。スピロに伝えてくれ」
マリアは剣をふりながら叫んだ。ゾーイはすぐに応えた。
「マリアさん、何を伝えりゃいいんだい」
余計な質問やつまらない|挨拶《》がないのが助かる。仕事のできる証拠だ。
「ゴールラインにセイの妹のサエの姿が確認された。このままだとセイの戦車がトップでゴールすると同時に妹を轢いちまう。どうすればいい!」
それだけ言って返事を待った。すぐにゾーイが答えを返してきた。
「『おまかせください』って言ってるよ」
「本当だな、まかせていいンだな、スピロ」
「マリアさん、ここはお姉さまに委ねてくれないかい」
「じゃあ、伝えてくれ。オレ個人の見立てとしては、そこにいる妹のサエは、悪魔が創った偽物だと思っている。下級悪魔が召喚なんかできねぇとな。だが、もし本物だったら……。いや、本物か偽物かはどうでもいい。セイに自分の妹を轢かせるような真似はさせたくねぇ」
マリアは飛んできた百の頭をもつ竜ラードーンを下から突き刺してから言った。
「頼む、なんとかしてくれ。万が一、セイが罪の意識で立ち直れなくなったら、オレは一生自分を許せなくなるかもしれねぇ……」
マリアの思いの丈をぶつけるように訴えに、ゾーイが答えた。
「それはなにがなんでも阻止します、だってさ」
「安請け合いしてるんじゃねぇだろうな。もししくじったらただじゃおかねぇぞ、スピロ」
「マリアさん。それはどうやらあたいの役目らしいよ」
「ど、どういうことだ?」
「あたいに任せてくんなよ。あたいがなんとかしてみせるさぁ」
そんなゾーイの安請け合いしたような軽い口調を最後に思念が途絶えた。とたんにマリアは不安のほうがおおきくなった。上空でホバリングしているエヴァに訊いた。
「エヴァ、どうなってる!」
エヴァの顔は下からは見えなかったが、声はあきらかにとまどいの色が感じられた。
「ゾーイさんがすごい勢いで、ゴールラインのサエさんめがけてダッシュしています」
マリアの心配のあまりに臓腑が一気に重たくなるような感覚に陥った。
おもわず口から悪口が漏れ出す。
「マジかよ、スピロ。ゾーイなんかじゃ、なンにもできねぇだろうがぁ」
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