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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第184話 走ってきたのは人ではなかった——
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エヴァは同意をしめすと、召喚中の手をとめた。
すでに地面からはミサイル・ランチャーの銃床だけでなく、銃身が見えていたがそこで召喚は止まった。
その行動を咎めるように、スピロがエヴァに言った。
「ダメ元でも、そのミサイルを打ち込んでセイ様を援護されないのですか」
エヴァは心からの笑顔とともにスピ口に言った。
「たぶん余計なことをするほうが迷惑がかかりますわ」
「迷惑?」
それだけ言ってスピ口が黙りこんだ。その瞬間、ゾーイが叫んだ。
「どういうことなんだい?。巨人が倒れてくよ」
エヴァは見るまでもないと思ったが、あまりの巨体はいやがおうでも視界に入ってくる。
セイが空中にジャンプした姿が見えたかと思うと、サイクロプスがそれに反応し、そして数秒後にはその巨体が傾いでいた。まるで大木を根元から伐採したように、ゆっくりと倒れていくのが見えた。
「なっ!」
マリアがまるで自分の功績であるかのように胸をはって言った。
「嘘でしょう。あんな巨人をいとも簡単に……」
スピ口がことさらに大きな感嘆の声をあげたので、エヴァはマリアをまねて誇らしげに言った。
「セイさんですからね。しょせん下級悪魔が産み出した傀儡程度など問題外ですよ。マリアさんの言うとおり図体がデカイだけで弱いんでしょうよ」
「そのとおり弱えぇンだよ。おかげでオレはフラストレーションの固まりだぜ」
マリアが胸の前で手を組んだまま心底腹立たしげに言った。
その時、エヴァの耳に遠くの方から響く、鬨の声のような雄叫びが聞こえてきた。
「あれはなんでしょう?」
「なんとも騒がしいねぇ」とゾーイが相槌をうつ。
その声はあっという間に近くなってくる。エヴァたちが声のする側に目をむけていると、
評議会場の影から、人々が大挙して走ってくるのが見えた。先ほどエヴァが降らせたドラクマ硬貨の雨に殺到していた観客のようだった。
「もどってきてますよ」
そうスピロが言うとマリアが意地悪げに「エヴァ、偽金ってぇのがバレたようだな」と言ってきたが、エヴァにはそんな皮肉は耳に入らなかった。
走ってきたのは人ではなかった——。
おびただしい数の異形の生物だった。ほとんどは等身大だったが、人間の数倍もある巨体のものや、人間から遠くかけ離れたフォルムのもの、そしてなかには空を飛んでいるものまでがそこにいた。
スピ口がうわ言のように唇をわななかせた。
「サテュロス、セイレーン、キマイラ、ヒッポカムス、ヒュドラ、ラードーン、カリュブディス、オルトロス、ケンタウロス、ヘカトンケイル、ゲリュオンそしてミノタウロス……」
「じ、冗談だろう。まるでギリシア神話の怪物っていう怪物が勢ぞろいしているんじゃないのかい」
ゾーイも顔色をうしなっていた。
エヴァはマリアを見た。
喜色満面の笑みを浮かべながら、マリアは背中から大剣をひき抜いていた。
「うれしいね。ギリシア神話の怪物総出演っていうのは。いい舞台用意してくれてンじゃねぇか」
それを聞けばエヴァはやれやれというため息をつくしかない。仕方がなく先ほど止めていたミサイル・ランチャーの召喚の続きをはじめることにした。
それを横目でみながら、マリアが釘を刺してきた。
「おいエヴァ。半分はオレの獲物だ。残しとけよ」
すでに地面からはミサイル・ランチャーの銃床だけでなく、銃身が見えていたがそこで召喚は止まった。
その行動を咎めるように、スピロがエヴァに言った。
「ダメ元でも、そのミサイルを打ち込んでセイ様を援護されないのですか」
エヴァは心からの笑顔とともにスピ口に言った。
「たぶん余計なことをするほうが迷惑がかかりますわ」
「迷惑?」
それだけ言ってスピ口が黙りこんだ。その瞬間、ゾーイが叫んだ。
「どういうことなんだい?。巨人が倒れてくよ」
エヴァは見るまでもないと思ったが、あまりの巨体はいやがおうでも視界に入ってくる。
セイが空中にジャンプした姿が見えたかと思うと、サイクロプスがそれに反応し、そして数秒後にはその巨体が傾いでいた。まるで大木を根元から伐採したように、ゆっくりと倒れていくのが見えた。
「なっ!」
マリアがまるで自分の功績であるかのように胸をはって言った。
「嘘でしょう。あんな巨人をいとも簡単に……」
スピ口がことさらに大きな感嘆の声をあげたので、エヴァはマリアをまねて誇らしげに言った。
「セイさんですからね。しょせん下級悪魔が産み出した傀儡程度など問題外ですよ。マリアさんの言うとおり図体がデカイだけで弱いんでしょうよ」
「そのとおり弱えぇンだよ。おかげでオレはフラストレーションの固まりだぜ」
マリアが胸の前で手を組んだまま心底腹立たしげに言った。
その時、エヴァの耳に遠くの方から響く、鬨の声のような雄叫びが聞こえてきた。
「あれはなんでしょう?」
「なんとも騒がしいねぇ」とゾーイが相槌をうつ。
その声はあっという間に近くなってくる。エヴァたちが声のする側に目をむけていると、
評議会場の影から、人々が大挙して走ってくるのが見えた。先ほどエヴァが降らせたドラクマ硬貨の雨に殺到していた観客のようだった。
「もどってきてますよ」
そうスピロが言うとマリアが意地悪げに「エヴァ、偽金ってぇのがバレたようだな」と言ってきたが、エヴァにはそんな皮肉は耳に入らなかった。
走ってきたのは人ではなかった——。
おびただしい数の異形の生物だった。ほとんどは等身大だったが、人間の数倍もある巨体のものや、人間から遠くかけ離れたフォルムのもの、そしてなかには空を飛んでいるものまでがそこにいた。
スピ口がうわ言のように唇をわななかせた。
「サテュロス、セイレーン、キマイラ、ヒッポカムス、ヒュドラ、ラードーン、カリュブディス、オルトロス、ケンタウロス、ヘカトンケイル、ゲリュオンそしてミノタウロス……」
「じ、冗談だろう。まるでギリシア神話の怪物っていう怪物が勢ぞろいしているんじゃないのかい」
ゾーイも顔色をうしなっていた。
エヴァはマリアを見た。
喜色満面の笑みを浮かべながら、マリアは背中から大剣をひき抜いていた。
「うれしいね。ギリシア神話の怪物総出演っていうのは。いい舞台用意してくれてンじゃねぇか」
それを聞けばエヴァはやれやれというため息をつくしかない。仕方がなく先ほど止めていたミサイル・ランチャーの召喚の続きをはじめることにした。
それを横目でみながら、マリアが釘を刺してきた。
「おいエヴァ。半分はオレの獲物だ。残しとけよ」
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