ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

文字の大きさ
上 下
263 / 935
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜

第151話 セイ、最後尾をとらえる

しおりを挟む
 セイの戦車がついに最後尾をとらえた。さきほどから全体のペースがじりじりと落ちてきたせいで、戦車の操縦がおぼつかないセイでも食いついていけている。
 おそらくルキアノスのおかげなのだろう。巧みな手綱さばきでほかの戦車を牽制して、レース自体のペースをダウンさせているにちがいなかった。
 セイはすぐ目の前に最後尾の二台の戦車に迫った。横にならんでセイの前をふさいでいる。
『これを抜くのはやっかいだぞ!』
 セイは心の中でそう自戒し、どこかつけいる隙がないかを探ろうとした。だが、セイの戦車の馬たちが、戦車に触れそうなばかりに近づくと、ふいに正面の二台の戦車が両側に間隔をとり、セイのために道をあけはじめた。
 まるでセイに道を譲ろうとしているかのように、その隙間は馬車一台分きっちりの間隔がある。セイは目の前にひらけた空間に目をやった。おどろいたことに道をゆずってくれたのはすぐ手前の二台だけではなかった。その奥の二台も手前の戦車と連動するように道をあけてくれていた。
 セイにはこれは両側から狭みうちするための、あからかさまな罠としか思えなかった。
 どうする——?。
 セイは迷った。このままスピードをあげても、この間隔を無事に抜けられるとは到底思えない。だからと言ってこのままの状態をずっと続けていることもできない。
 その時、右側の戦車に乗る、かなり筋肉質の体をした卸者がふりむいて、大声でセイに言ってきた。
「セイ様、わたしたちはあなたの味方でさぁ。この間を通り抜けて前にでてくだせぇ」
「味方?」
 セイが間の抜けた返事をすると、今度は左側の御者が声をあげた。こちらはかなり年を喰ってみえる。かなりのベテランなのかもしれない。
「ルキアノス様から、アルキビアデス様のご命令であなた様を勝たせよ、と指示を受けております」
「アルキビアデス……。きみたちは?」
「はい、アルキビアデス様の御者です」
「でも、こんなことをしちゃあ、君たちが勝てないんじゃないか」
 セイが前にむかって精いっぱい声をあげると、筋肉質の御者が悟ったような顔をむけてきた。
「しかたがありませんや。アルキビアデス様のご命令ですからね。それよか、セイ様を勝たせられなかった時のほうが、あとでお叱りを受けてしまいまさあ」

「さあ、セイ様、早く。早くしませんと折り返し点がきてしまいます」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...