ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

文字の大きさ
上 下
211 / 935
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜

第99話 今回の戦車競争には罠が仕掛けられている

しおりを挟む
「ところでどうするつもりですか、スピロさん?」

 エヴァがスピロに問いかけた。
「決まってるじゃないか。セイさんには戦車競走の練習をしてもらわないと……」
 ゾーイがどういうわけか力づよく意気込む。
「たしかに。まずはそれですね。運良くアルキビアデス様に、戦車を貸してもらえて、御者頭の方に乗り方を教えてもらえるってことですからね」
「マリア様、本当にそのように思われているのですか?」
「どういうことです?、スピロさん」
 スピロはあきれたように、ため息をついてから言った。
「マリア様、あなたはあのアルキビアデス様に見とれてしまって、正常な判断がつきかねていると思いますが……」
「スピロさん、それはずいぶん失礼な物言いですわ」
「あれは『罠』です。それもあからさまなね」
「罠……?。アルキビアデス様がですか?」
 エヴァが眉根をぎゅっとよせて、不快感をあらわにしたが、口からなにかがついて出てくる前に、マリアが遮った。
「あぁ、あれは『罠』だな。セイをめようっていう魂胆だ。ミエミエのな」
「ちょっと、マリアさん、あなたまで。なぜアルキビアデス様がセイさんを罠にかけようとするのです?。戦車を貸してくれたのですよ?」
「エヴァさん。あたいもお姉さまとおなじ意見でね。もしかしたら、あいつらのターゲットがタルディスさんから、セイさんに変わったんじゃないかと危惧してんのさ」

「タルディスさんからセイさんにって?」
 みんなから出される意見に、まだ抗おうとするエヴァにマリアまでもが、ため息交じりで言った。
「エヴァ。目を醒ませ。タルディスなんかどうでもよくなるほどの大物、つまりセイをあいつらは見つけたってことだよ。だからアルキビアデスをオレたちのとこへよこしたんだ」
「どうして、ぼくに?」
「オマエはバカか。おまえは黄道十二宮の悪魔を倒してるんだ。ウエルキエルのヤツもおまえがハマリエルを倒したことを知っていたんだ。たぶん悪魔の世界じゃ、おまえの手配書がいたるところに貼られてンだろうよ」

「つまり、今回の戦車競争には、罠が仕掛けられているってこと……」
 ようやく合点がいったのか、エヴァが頷きながらそう言った。

「でもやるしか選択肢はないんだ。未練を上書きされてしまったんだからね」
「完全に仕組まれておりますのよ。セイ様。ここで都合よくアルキビアデスが御者を依頼してくるなど、あまりにもあざとい」
 心配そうな顔で警告してきたスピロにセイが訊いた。
「アルキビアデスという男……、スピロ、きみはあれは悪魔だと思う?」
「さあどうでしょう。わたしには『悪魔』を感知する能力はありません。セイ様はどう思われました?」
「残念ながらわからなかった。すくなくとも今まで出会った『悪魔』のように『気配』は感じられなかった」
「スピロ。あのアルキビアデスってヤツはどんなヤツなんだ。ちょっと聞いただけでもかなりヤバそうなヤツだが?」
 マリアが珍しく素直に質問をスピロに投げかけた。

「アルキビアデスは、プラトンのいとこで、容姿端麗、頭脳緻密、弁舌円滑、悲壮劇や詩や歌も一流、しかもソロン以来の名門で大金持ち、すべてにおいて卓越した人物だと言われています。みなさんもご覧になったように、とくにその美貌は男性・女性とわず愛され、男の愛人とも女の愛人とも浮き名を流していたようです」
「やっぱりすごい方なのですね」

 エヴァがうっとりとした気分を吐露とろした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...