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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第97話 悪魔をいぶり出す糸口がつかめました
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「今、お聞きになったとおりですわ。戦車競争に出場して優勝して欲しい、という願いです。でもそれは叶えらない望みなのです。わたしたちには戦車がありませんから……」
「そうなのじゃ。アルキビアデス」
横からソクラテスがわってはいってきた。
「セイたちはタルディスの優勝を願って遠くから応援にきたのじゃ。そのおかげでタルディスがアテナイに勝利をもたらしてくれたが、タルディスのヤツはよくばりでな。あとからあとから望みを言ってくるのじゃよ。そして今、戦車競争で優勝してくれとまた新しい望みを付け加えてきたのじゃ」
アルキビアデスがセイのほうに顔をむけた。
「それならセイ、わたしの戦車に乗ってくれたまえ。わたしは今回の大会に7台の戦車を出場させるのだよ。今回こそ一位から三位まで独占するつもりでね。でも一台ならセイのために提供してもかまわないよ。もしそれできみが優勝したとしたら願ったり叶ったりだよ」
「いや、でもアルキビアデスさん。ぼくは戦車なんか乗ったことがないし……」
「では、馬と戦車を用意させよう。セイ、あとで競馬場のほうへ来てくれたまえ。戦車の操縦方法は御者頭のルキアノスに習うといい」
「おお、それはありがたいことじゃ」
ソクラテスがアルキビアデスの肩を抱くようにして感謝を述べた。
「ソクラテス、あなたのお役にたてるのなら、これほど光栄なことはありません」
アルキビアデスがうれしそうに言った。その顔はすこし紅潮しているように見えた。
「まぁ、ありがたいですわ。アルキビアデス様のなんと懐の深いことか。これでジョー・デレクさん救出任務が続けられます」
エヴァがはしゃぐように言うと、ゾーイは腕を組んだまま何度も頷いていた。
「ああ、ああ、違いないねぇ。セイさんの強運にはほとほと感心するよ」
「強運?。ゾーイ。この一連の事態を強運と思っているのですか?」
「当然だろうさ。お姉さま、もう打つ手はないと思ってたところに、こんな大金持ちが味方してくれたんだよ」
ゾーイの安堵しきった顔をみてスピロは閃いた。脳内にいっぱいになっていた疑問符の知恵の輪が崩れるようにしてはずれていく——。
うまくいきすぎだ——。まるで……。
なるほど、そうか、そうなのか……。ついに謎を解く糸口を見つけた——。
そのとき、マリアがあきれかえったような声をあげた。
「おい、スピロ、ずいぶん怖い顔をしてるな。なにがあった?」
「怖い顔?。わたくしがですか?」
「あぁ。よからぬことを謀らんでいる悪徳商人のような顔つきになってるぞ」
スピロはそれを聞いて、マリアにむかってうれしそうに微笑んだ。
「悪魔をいぶり出す糸口がつかめたのです。たぶん、天使のような笑みを浮かべているはずだと思いますが?」
「天使の笑み?。スピロ、そいつは『堕天使』の笑みの間違いだろ」
■作者より ------------------------------------------------------------
次回から 五賢人 と 戦車競争の巻
ここからが作者が地獄を見た解決編。もう二度と書くことができないと確信できるほど、難易度の高いストーリーが続きます。
かなり難しい展開になりますが、ぜひスピロの名推理に膝を打って欲しいです。
えげつないほどの参考文献を紐解きながら、まちがいなく、論文一本書いたくらいの労力で書きました。
「そうなのじゃ。アルキビアデス」
横からソクラテスがわってはいってきた。
「セイたちはタルディスの優勝を願って遠くから応援にきたのじゃ。そのおかげでタルディスがアテナイに勝利をもたらしてくれたが、タルディスのヤツはよくばりでな。あとからあとから望みを言ってくるのじゃよ。そして今、戦車競争で優勝してくれとまた新しい望みを付け加えてきたのじゃ」
アルキビアデスがセイのほうに顔をむけた。
「それならセイ、わたしの戦車に乗ってくれたまえ。わたしは今回の大会に7台の戦車を出場させるのだよ。今回こそ一位から三位まで独占するつもりでね。でも一台ならセイのために提供してもかまわないよ。もしそれできみが優勝したとしたら願ったり叶ったりだよ」
「いや、でもアルキビアデスさん。ぼくは戦車なんか乗ったことがないし……」
「では、馬と戦車を用意させよう。セイ、あとで競馬場のほうへ来てくれたまえ。戦車の操縦方法は御者頭のルキアノスに習うといい」
「おお、それはありがたいことじゃ」
ソクラテスがアルキビアデスの肩を抱くようにして感謝を述べた。
「ソクラテス、あなたのお役にたてるのなら、これほど光栄なことはありません」
アルキビアデスがうれしそうに言った。その顔はすこし紅潮しているように見えた。
「まぁ、ありがたいですわ。アルキビアデス様のなんと懐の深いことか。これでジョー・デレクさん救出任務が続けられます」
エヴァがはしゃぐように言うと、ゾーイは腕を組んだまま何度も頷いていた。
「ああ、ああ、違いないねぇ。セイさんの強運にはほとほと感心するよ」
「強運?。ゾーイ。この一連の事態を強運と思っているのですか?」
「当然だろうさ。お姉さま、もう打つ手はないと思ってたところに、こんな大金持ちが味方してくれたんだよ」
ゾーイの安堵しきった顔をみてスピロは閃いた。脳内にいっぱいになっていた疑問符の知恵の輪が崩れるようにしてはずれていく——。
うまくいきすぎだ——。まるで……。
なるほど、そうか、そうなのか……。ついに謎を解く糸口を見つけた——。
そのとき、マリアがあきれかえったような声をあげた。
「おい、スピロ、ずいぶん怖い顔をしてるな。なにがあった?」
「怖い顔?。わたくしがですか?」
「あぁ。よからぬことを謀らんでいる悪徳商人のような顔つきになってるぞ」
スピロはそれを聞いて、マリアにむかってうれしそうに微笑んだ。
「悪魔をいぶり出す糸口がつかめたのです。たぶん、天使のような笑みを浮かべているはずだと思いますが?」
「天使の笑み?。スピロ、そいつは『堕天使』の笑みの間違いだろ」
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次回から 五賢人 と 戦車競争の巻
ここからが作者が地獄を見た解決編。もう二度と書くことができないと確信できるほど、難易度の高いストーリーが続きます。
かなり難しい展開になりますが、ぜひスピロの名推理に膝を打って欲しいです。
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