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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第89話 まわりの人々が自分を狙っている!!!
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まわりの人々が自分を狙っている——?。
セイはすぐにその意味を理解した。群衆の輪はボクシングのエリアを越えてスカンマにまで踏み入り、すでに近代ボクシングの『リング』より狭い空間になっていた
「エウクレス、いまだ。この少年を倒せ」
背後で声がしたと思うと、いきなり右腕をつかまれた。
セイはすぐさまふりほどこうとうしろをむいた。そこへエウクレスの強力なパンチがねじ込まれてきた。あわてて首を捻って『ヘッド・スリップ』でかわすと、セイの腕をつかんでいた男が代わりにパンチの犠牲になって、うしろへ吹っ飛んだ。
「審判、試合をとめてくれ。ぼくは観客に腕をつかまれた」
だが審判が抗議をするセイに目をむけるより早く、エウクレスのパンチがとんできた。
すかさずサイドステップですっと横へ移動したが、また別の観衆たちの壁にぶつかった。
「すみません」
反射的にセイは謝ったが、そこにいた男は両手を横にひろげて、こちらを睨みつけていた。邪魔だてするために、立ちはだかったという仕草だった。
「どいてくれ」
セイがその男を荒っぽく押しのけようとしたところへ、エウクレスのフックがふり抜かれてきた。セイはダッキングで避けて、エウクレスの腹にジャブを入れながら体をかわしたが、エウクレスのパンチはその場所に立っていた観客の数人をなぎ払っていた。
「ちょこまかと逃げやがって」
こうなったら、とりあえずだれかれ構わず排除するしかない——。
セイは腹を括った。
うしろから掴みかかってきた男をカウンター気味のストレートで吹き飛ばすと、そのうしろから飛びかかってきた男にジャブ二発でたたらを踏ませる。その男が倒れそうなところをローリングでかいくぐって、そのうしろの男にレバー・ブロー(腎臓打ち)。すかさずサイド・ステップで、体勢を入れ替えると、今度は右側から脚につかみかかってきた男に、打ち下ろしのストレートを、さらにその隣のぼうっとしている男にフックを浴びせる。
セイはもう誰をどう殴っているのか、自分でもわからないくらい拳をふるっていた。自分が習得したあらゆるディフェンスやかわすテクニックを駆使した。数ラウンドぶっ続け、かと思うほどハードなスパーリング。実際には一方的に殴っているので、スパーとは言えなかったが、途中で腕があがらなくなりそうになるほど、パンチの嵐を見舞ってた。
群衆たちがセイの邪魔をあきらめた頃には、セイはその場にへたり込みそうなほど疲れていたが、それでもファイティング・ポーズは崩さなかった。そのセイの足元やそのまわりには観客たちが何人も倒れていた。気絶している者もいれば、ボディ・ブローを喰らってその場で悶絶している者もいた。地面に横たわる観衆を見つめている者には、もうセイを邪魔立てしようとするものはいなかった。
すこし気を抜くと、だらりと腕がさがってしまいそうほどダメージがあったが、セイは気合いがこもった声で叫んだ。
「審判。エウクレスとの試合を再開してください」
審判はセイを睨みつけてきた。なにかよからぬ企てがあるような目つきだった。だが、審判は無言のまま、手に持った杖で自分の足元を指した。
そこにエウクレスが横たわっていた。
どさくさに紛れて、いつの間にか倒したらしかった。
「あれぇ?」
セイは思わず間抜けな声を出すと、近くから称賛の声があがった。
「おまえの勝ちだ、セイ!」
プラトンの肩の上に乗っかっていたマリアだった。
セイは鉛のように重たくなった両腕を、歯を食いしばって天空につきあげた。
その瞬間、スタディオンは歓声でおおきく揺れた。
セイはすぐにその意味を理解した。群衆の輪はボクシングのエリアを越えてスカンマにまで踏み入り、すでに近代ボクシングの『リング』より狭い空間になっていた
「エウクレス、いまだ。この少年を倒せ」
背後で声がしたと思うと、いきなり右腕をつかまれた。
セイはすぐさまふりほどこうとうしろをむいた。そこへエウクレスの強力なパンチがねじ込まれてきた。あわてて首を捻って『ヘッド・スリップ』でかわすと、セイの腕をつかんでいた男が代わりにパンチの犠牲になって、うしろへ吹っ飛んだ。
「審判、試合をとめてくれ。ぼくは観客に腕をつかまれた」
だが審判が抗議をするセイに目をむけるより早く、エウクレスのパンチがとんできた。
すかさずサイドステップですっと横へ移動したが、また別の観衆たちの壁にぶつかった。
「すみません」
反射的にセイは謝ったが、そこにいた男は両手を横にひろげて、こちらを睨みつけていた。邪魔だてするために、立ちはだかったという仕草だった。
「どいてくれ」
セイがその男を荒っぽく押しのけようとしたところへ、エウクレスのフックがふり抜かれてきた。セイはダッキングで避けて、エウクレスの腹にジャブを入れながら体をかわしたが、エウクレスのパンチはその場所に立っていた観客の数人をなぎ払っていた。
「ちょこまかと逃げやがって」
こうなったら、とりあえずだれかれ構わず排除するしかない——。
セイは腹を括った。
うしろから掴みかかってきた男をカウンター気味のストレートで吹き飛ばすと、そのうしろから飛びかかってきた男にジャブ二発でたたらを踏ませる。その男が倒れそうなところをローリングでかいくぐって、そのうしろの男にレバー・ブロー(腎臓打ち)。すかさずサイド・ステップで、体勢を入れ替えると、今度は右側から脚につかみかかってきた男に、打ち下ろしのストレートを、さらにその隣のぼうっとしている男にフックを浴びせる。
セイはもう誰をどう殴っているのか、自分でもわからないくらい拳をふるっていた。自分が習得したあらゆるディフェンスやかわすテクニックを駆使した。数ラウンドぶっ続け、かと思うほどハードなスパーリング。実際には一方的に殴っているので、スパーとは言えなかったが、途中で腕があがらなくなりそうになるほど、パンチの嵐を見舞ってた。
群衆たちがセイの邪魔をあきらめた頃には、セイはその場にへたり込みそうなほど疲れていたが、それでもファイティング・ポーズは崩さなかった。そのセイの足元やそのまわりには観客たちが何人も倒れていた。気絶している者もいれば、ボディ・ブローを喰らってその場で悶絶している者もいた。地面に横たわる観衆を見つめている者には、もうセイを邪魔立てしようとするものはいなかった。
すこし気を抜くと、だらりと腕がさがってしまいそうほどダメージがあったが、セイは気合いがこもった声で叫んだ。
「審判。エウクレスとの試合を再開してください」
審判はセイを睨みつけてきた。なにかよからぬ企てがあるような目つきだった。だが、審判は無言のまま、手に持った杖で自分の足元を指した。
そこにエウクレスが横たわっていた。
どさくさに紛れて、いつの間にか倒したらしかった。
「あれぇ?」
セイは思わず間抜けな声を出すと、近くから称賛の声があがった。
「おまえの勝ちだ、セイ!」
プラトンの肩の上に乗っかっていたマリアだった。
セイは鉛のように重たくなった両腕を、歯を食いしばって天空につきあげた。
その瞬間、スタディオンは歓声でおおきく揺れた。
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