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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第76話 体格の差というのは圧倒的です
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「やれやれ困ったことになりました」
スピロがセイのこぶしに、雄牛の革を巻きながら言った。その横にはあわててやってきたマリア。そして一緒に連れ立ってきたプラトンとソクラテスが囲む。
セイがタルディスを救いうため大騒ぎをおこしたことでスピロの計画も作戦も少々ではあったが変更を余儀なくさせられることになった。どうやらその不満げな気持ちが顔に浮かんでいたのだろう。セイがひたすら申し訳なさそうに頭をさげてきた。
「ごめん、スピロ。いろいろ作戦があったんだろう。台無しにしちゃったね」
「ご心配なく、セイ様。このような邪魔やアクシデントは、折り込み済です」
そうは言ったものの、セイ自身がリグレットなしで、ふたたび競技に参加するはめになることは想定外であった。おなじようなアプローチはしてこない、と高を括って別の可能性に神経を尖らせていただけに、スピロにはしてやられた、という思いがこみあげてならない。
セイは背中をむけているボクシング場の方を目で指し示しながら訊いた。
「で、タルディスさんは?」
すぐに横からプラトンが答えた。
「今、イアトレイアのほうに運び込まれているはずですよ」
「それは、どこです?」
「このスタディオンとヒッポドゥロモのあいだにある『ギリシア住宅』と呼ばれる場所です」
スピロがぎゅっと革ひもを引き締めながら言った。
「ご安心を。ゾーイとエヴァ様をむかわせました。ヒポクラテス様も一緒です」
「ヒポクラテスさんも?」
「当然だろ、セイ。あいつは医者の端くれだぞ」
マリアがこともなげに言ったが、スピロは心配でならなかった。
「かなりしたたかに殴られましたからね。脳に障害でも受けてなければ良いのですが」
「は、スピロ。案じたところで、なるようにしかなんねぇだろ。この時代にゃ、CTスキャンやMRIなんかねえんだから」
「まぁ、そうですが…;」
スピ口がため息をついたところでソクラテスが尋ねてきた。
「で、スピロどの、セイさんはあのモンスターに勝てるのかね?。かの英雄ディアゴラスの直系の孫に」
「ソクラテス様。それはわたくしにもわかりません。勝てる、と言いたいところですが、あまりに体格差がありすぎます。おそらくエウクレスは、11ベキュス(2メートル)はあるでしょう。セイ様も10ベキュス(1メートル80センチ)はありますが、体重差はどうやっても埋め切れません」
「体格なんかちがっても、顎をとらえればなんとかなるだろうて」
「当たれば、ですよ。ですが、逆に相手のパンチを当てられたときは、体格の差というのは圧倒的です」
「どれくらいちがうものなのですか?」
プラトンが目を輝かせて、その答えを知りたがった。
スピロがセイのこぶしに、雄牛の革を巻きながら言った。その横にはあわててやってきたマリア。そして一緒に連れ立ってきたプラトンとソクラテスが囲む。
セイがタルディスを救いうため大騒ぎをおこしたことでスピロの計画も作戦も少々ではあったが変更を余儀なくさせられることになった。どうやらその不満げな気持ちが顔に浮かんでいたのだろう。セイがひたすら申し訳なさそうに頭をさげてきた。
「ごめん、スピロ。いろいろ作戦があったんだろう。台無しにしちゃったね」
「ご心配なく、セイ様。このような邪魔やアクシデントは、折り込み済です」
そうは言ったものの、セイ自身がリグレットなしで、ふたたび競技に参加するはめになることは想定外であった。おなじようなアプローチはしてこない、と高を括って別の可能性に神経を尖らせていただけに、スピロにはしてやられた、という思いがこみあげてならない。
セイは背中をむけているボクシング場の方を目で指し示しながら訊いた。
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すぐに横からプラトンが答えた。
「今、イアトレイアのほうに運び込まれているはずですよ」
「それは、どこです?」
「このスタディオンとヒッポドゥロモのあいだにある『ギリシア住宅』と呼ばれる場所です」
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「ご安心を。ゾーイとエヴァ様をむかわせました。ヒポクラテス様も一緒です」
「ヒポクラテスさんも?」
「当然だろ、セイ。あいつは医者の端くれだぞ」
マリアがこともなげに言ったが、スピロは心配でならなかった。
「かなりしたたかに殴られましたからね。脳に障害でも受けてなければ良いのですが」
「は、スピロ。案じたところで、なるようにしかなんねぇだろ。この時代にゃ、CTスキャンやMRIなんかねえんだから」
「まぁ、そうですが…;」
スピ口がため息をついたところでソクラテスが尋ねてきた。
「で、スピロどの、セイさんはあのモンスターに勝てるのかね?。かの英雄ディアゴラスの直系の孫に」
「ソクラテス様。それはわたくしにもわかりません。勝てる、と言いたいところですが、あまりに体格差がありすぎます。おそらくエウクレスは、11ベキュス(2メートル)はあるでしょう。セイ様も10ベキュス(1メートル80センチ)はありますが、体重差はどうやっても埋め切れません」
「体格なんかちがっても、顎をとらえればなんとかなるだろうて」
「当たれば、ですよ。ですが、逆に相手のパンチを当てられたときは、体格の差というのは圧倒的です」
「どれくらいちがうものなのですか?」
プラトンが目を輝かせて、その答えを知りたがった。
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