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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第73話 タルディスがなぶり殺しにされる!!
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ゾーイはそのことばに驚いてあわてて、タルディスのほうへ目をむけた。そのとき、頭のなかにスピロの声が響いた。
『ゾーイ。大丈夫です。わたしたちがなんとかします』
『いや、だけど、お姉さまひとりじゃあ……』
『セイ様も向かっています。あなたはそこで見ていなさい』
あわてて見回すと、自分たちとは反対側の土手からセイがヒポクラテスを引き連れて、飛び出してきたのが見えた。それと同時に、自分たちから離れた場所から人をかき分けてくるスピロとソクラテス、プラトンと彼の肩の上に乗っかったマリアの姿もあった。
ゾーイはスピロに言われたまま、その場で成り行きを見守ることにした。
しかし、そのあとに起きた流れはゾーイには、じつに焦れったく感じた。
タルディスに馬乗りになって殴り続けているエウクレスに、一番最初に駆けよったのはソクラテスだった。ソクラテスは、『この勝負はそなたの勝ちだから、これ以上やるのは無意味だ。アテナイの市民を代表して、この試合を終了して欲しい』と願いでた。
だが、エウクレスはギリシア一番の賢者のことばに耳を貸そうとしなかった。ソクラテスはタルディスのすぐわきに膝をたてて、タルディスに声をかけようとした。が、それを「邪魔するな」のひと言のもと、エウクレスが突き飛ばした。
老人、しかもあの賢人ソクラテスが手をかけられて、場内がうおっと一瞬盛り上がる。
が、よろめいてうしろにたたらを踏んだソクラテスを、あわてて背後から支えたのはプラトンだった。プラトンはマリアを肩車したまま、腰をおとして倒れそうになった師匠を受けとめた。
その時、プラトンの上でマリアがなにかを叫んだが、ゾーイには聴き取れなかった。どうやら隣でエウクレスの蛮行を諌めようとしたスピロにむかって言ったものらしかった。
が、スピロになにかを言われたエウクレスは、タルディスの髪の毛を引っつかむと、荒々しくタルディスのからだを持ちあげ、観客に誇示するようにして無理やり起立さたせた。それはまるで、立っているのだから、意識がなくなったわけではない、というパフォーマンスのようにみえた。
エウクレスはその状態のままタルディスにむかって、もう一方の拳でパンチをふるいはじめた。だが、タルディスは完全に目を閉じていて、だれが見ても意識がないことがすぐにわかる。
タルディスをなぶり殺しにしようとしているエウクレスに、スピロがことさら険しい表情で声をあげる。だが、すさまじい歓声のせいで、スピロの声もスピロの心の声もまったく聞こえてこなかった。スピロはなおも食い下がって、エウクレスを執拗に咎め立てしていた。その舌鋒にエウクレスが苛立ちを露にしているのが、遠めにもわかる。
と、エウクレスがタルディスの顔にむけていた拳を、おおきくふりあげスピロを殴りつけようとした。
『お姉さま!!』
だが、そのパンチは寸でのところでスピロには当たらずに済んだ。
スピロの前に走りでたセイが、目の前で腕を十字に組んで『クロスアームブロック』で、エウクレスのパンチを防いでいた。
『ゾーイ。大丈夫です。わたしたちがなんとかします』
『いや、だけど、お姉さまひとりじゃあ……』
『セイ様も向かっています。あなたはそこで見ていなさい』
あわてて見回すと、自分たちとは反対側の土手からセイがヒポクラテスを引き連れて、飛び出してきたのが見えた。それと同時に、自分たちから離れた場所から人をかき分けてくるスピロとソクラテス、プラトンと彼の肩の上に乗っかったマリアの姿もあった。
ゾーイはスピロに言われたまま、その場で成り行きを見守ることにした。
しかし、そのあとに起きた流れはゾーイには、じつに焦れったく感じた。
タルディスに馬乗りになって殴り続けているエウクレスに、一番最初に駆けよったのはソクラテスだった。ソクラテスは、『この勝負はそなたの勝ちだから、これ以上やるのは無意味だ。アテナイの市民を代表して、この試合を終了して欲しい』と願いでた。
だが、エウクレスはギリシア一番の賢者のことばに耳を貸そうとしなかった。ソクラテスはタルディスのすぐわきに膝をたてて、タルディスに声をかけようとした。が、それを「邪魔するな」のひと言のもと、エウクレスが突き飛ばした。
老人、しかもあの賢人ソクラテスが手をかけられて、場内がうおっと一瞬盛り上がる。
が、よろめいてうしろにたたらを踏んだソクラテスを、あわてて背後から支えたのはプラトンだった。プラトンはマリアを肩車したまま、腰をおとして倒れそうになった師匠を受けとめた。
その時、プラトンの上でマリアがなにかを叫んだが、ゾーイには聴き取れなかった。どうやら隣でエウクレスの蛮行を諌めようとしたスピロにむかって言ったものらしかった。
が、スピロになにかを言われたエウクレスは、タルディスの髪の毛を引っつかむと、荒々しくタルディスのからだを持ちあげ、観客に誇示するようにして無理やり起立さたせた。それはまるで、立っているのだから、意識がなくなったわけではない、というパフォーマンスのようにみえた。
エウクレスはその状態のままタルディスにむかって、もう一方の拳でパンチをふるいはじめた。だが、タルディスは完全に目を閉じていて、だれが見ても意識がないことがすぐにわかる。
タルディスをなぶり殺しにしようとしているエウクレスに、スピロがことさら険しい表情で声をあげる。だが、すさまじい歓声のせいで、スピロの声もスピロの心の声もまったく聞こえてこなかった。スピロはなおも食い下がって、エウクレスを執拗に咎め立てしていた。その舌鋒にエウクレスが苛立ちを露にしているのが、遠めにもわかる。
と、エウクレスがタルディスの顔にむけていた拳を、おおきくふりあげスピロを殴りつけようとした。
『お姉さま!!』
だが、そのパンチは寸でのところでスピロには当たらずに済んだ。
スピロの前に走りでたセイが、目の前で腕を十字に組んで『クロスアームブロック』で、エウクレスのパンチを防いでいた。
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