ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜

第50話 マンツーマンで貼り付くっていうのはどうだ?

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「一人一人づつマンツーマンで貼り付くっていうのはどうだ?」

 マリアがたくらみを顔いっぱいにして提案してきた。セイの言う通りで、確かにこういう時のマリアは冴まくっている。
 スピロはマリアに言いたいことがあったが、しばらく泳がしておくことにした。
「もしあの五人のなかに悪魔がひそんでいるなら、ボクシングの試合をみんなで見に行こうと誘うと、相手側が警戒を強める可能性がある。バラバラなら不自然ではねえし、相手も油断して尻尾をだすかもしんねえ」
「マリアさんよ。たしかにいいアイディアだが、どうやってその五人を誘やぁいいです?」
 ゾーイが素直に疑問をぶつけてきた。
「そりゃあ……」
 マリアがことばに詰まった。そこまでは考えていなかったらしい。だが、その状況にすぐさまエヴァが助け舟を出してきた。
「そのまま、ずばりでいいんじゃないんですか?。何者かに悪魔が取りとりついているかもしれないからそれを見破ってやると、明確に対抗姿勢を打ち出してみてはどうでしょう」
 スピロは一瞬それはそれで手っ取り早いと思いかけたが、すぐさま反論した。
「マリア様。それは私たちの任務を考えると、それでも良い気がしますが、いくつか問題点があります。まずこの時代に悪魔という存在はなく、それに似た概念も存在しません。次にマンツーマンで対決を試みるのはいささか性急ですし、全員にむく方法ではありません。すくなくともわたくしは返り討ちに合う可能性が否定できません」
「あら、スピ口さんずいぶん弱気なのですね。なんなら私の銃をお貸ししましょうか?」
 エヴァが屈託もなく申し出た。
「いいえ、結構です」
 そのことばには嫌みや当てこすりのニュアンスはこもっていなかったが、スピロはエヴァのその楽観的な思考が少々鼻についた。
「わたくしは正攻法にこだわりたいですから……」
「なんだい、その正攻法って?」
 それまで口を挟まずにいたセイが興味深げに訊いてきた。まるで子供のように目を輝かせて答えを待っている。スピ口は一度咳払いをしてから答えた。
「本来、昏睡病患者を救うためには、魂を前世の記憶の底に引きずり込んだ悪魔を探しだして、追い払うことで完遂します」
「へぇ、そうなんだ。ボクは前世の記憶の人の『未練』を晴らしてあげれば、助かると思って行動してたんだけど……」
「ええ。まさか、そんな方法があるとは、わたくしたち『サイコ・ダイバーズ』の方では存知あげませんでした」
 エヴァが横からスピロを補足するように言った。
「セイさん、それはあなたが発見した新しい事実なのですよ。夢見博士の論文でそれを知らされた時の私たちの驚きといったらないんですよ」
「ふぅん、そうなんだ」
 セイはなんの感動も感慨もなさげに答えた。 
 まるでハンバーガーショップでできたてのフレンチ・フライを食べたければ『塩抜き』で頼めばいい、程度の裏技でも聞いたかのような反応にスピロは拍子抜けした。
「民間で単独で救助している人物がいるってぇのは、前々から噂にはなってやしたからね」
 ゾーイがすこし浮かれたような調子でセイを褒めそやした。
「ま、その未練を晴らすためにゃあ、その障壁になる悪魔を倒さねぇといけねぇから、結局はおんなじなんだがな」

 マリアが身も蓋もない言い方で混ぜっ返した。
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