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ダイブ3 クォ=ヴァディスの巻 〜 暴君ネロ 編 〜
第19話 ぼくらは無力だ……
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「あいかわらず、省エネ主義だな」
まったくの無傷で戻ってきたエヴァを、マリアが皮肉たっぷりに迎えた。
「あら、お金にならない案件に、時間も霊力も割くわけにはいきませんわ」
「は、セイもおまえのやり方は気に入らねえってサ」
マリアがセイの顔を見ながら、賛同を求めるような目つきで言った。
「ちょ、ちょっと、マリア。ぼくはそんなことひと言も言ってないじゃないか」
「あら、セイさんもこの時代に『銃』を持ち出すのはルール違反だとかいいますの」
「いや、だから……、エヴァ。ぼくはなにも言ってない。それにぼくだって、日本の侍が使っていた『日本刀』を持ち出してるんだ。ひとのことなんて言えない……」
「だからと言って、飛び道具はさすがにねぇだろ」
「いいんじゃないかな。それぞれのスタイルで」
「あら、セイさんはマリアとちがって理解あるのね。じゃあ、次はもっとど派手な武器を創造してみせますわ」
「おい、セイ。てめえのせいでエヴァが調子こきはじめてンじゃねぇか。そのうち紀元前の世界にランチャーミサイルとか持ち出すぞ」
「あら、それ、いいわね」
「いいわね、じゃねぇよ。卑怯すぎるほどチートだし、なにより……美学に欠ける」
マリアがいつものようにエヴァを睨みつけると、セイが横からエヴァを援護した。
「マリア。強力な武器はそれだけ『未練の力』を使うんだ。エヴァだって相応のリスクを覚悟して使ってるんだ」
「おい、なんだその『未練の力』とかいうのは?」
「きみたちもその力を使ってるから、そんな魔法じみたことできるんだろ?」
「はぁ?。セイ、なにを言っている。この力はオレたちの修練の賜物だ。どんだけ修業したと思っている」
「まぁ、そうかもしれないけど、その力の源は、この世界で、自分の知っている『歴史』を変えたい、という『思い』なんだよ」
マリアとエヴァが驚いた表情でお互いの顔を見合わせた。
「ん、まぁ、確かにこの力に『源』があるというのは聞いたことがありますけど……」
マリアが記憶をたどるように、ぽつぽつとことばを紡いだが、マリアがそれを一蹴するように言った。
「オレの信心の深さがその『源』っていうヤツだよ」
「マリア、違う。ぼくはなんどもそれで引き揚げに失敗したんだ。ぼくらのこの力は、今あの王妃スポルスの歴史を変えたいという『未練』の強さにかかっているんだ」
「じゃあ、なにか!。あの王妃が自分の人生を受け入れて、『このままでいいわ』って思えば、オレたちのパワーはうしなわれるのか?」
「そうだよ。空から武器も取り出せないし、人間ばなれした動きもできないし、化物のようなパワーも出せない」
「まぁ、それじゃあ、まるでふつうの人間みたいじゃないですか……」とエヴァがため息をつくように言った。
「あぁ。エヴァ。その通りだよ。もしスポルスからネロから逃れたかった、という『未練』の気持ちが無くなったら……」
「ぼくらは無力だ……」
そのとき、数人の兵士たちがバラバラと音をさせて足早に牢の前にやってきた。今度はいきなり掴みかかって、無理やり連行しようとしなかった。すでに二つの魔術を目の当たりにしてせいで、その扱いに慎重になっているのだろう。
ライオンを素手で倒したり、鞭使いを遠くから殺すような力を、自分たちに向けられてはたまらない、という気持ちがありありと見て取れた。
兵士たちは牢屋の外に仁王立ちしたまま、みな、セイのほうをにらみつけていた。
「やっぱりぼくの順番らしい」
セイが肩をすくめるとマリアが嫌みたらしく言った。
「オレが代わって、もう一回でてもいいぞ」
「まさか。女の子にそんなことさせたんじゃあ戻ってから、かがりにたんまり叱られちゃうよ」
まったくの無傷で戻ってきたエヴァを、マリアが皮肉たっぷりに迎えた。
「あら、お金にならない案件に、時間も霊力も割くわけにはいきませんわ」
「は、セイもおまえのやり方は気に入らねえってサ」
マリアがセイの顔を見ながら、賛同を求めるような目つきで言った。
「ちょ、ちょっと、マリア。ぼくはそんなことひと言も言ってないじゃないか」
「あら、セイさんもこの時代に『銃』を持ち出すのはルール違反だとかいいますの」
「いや、だから……、エヴァ。ぼくはなにも言ってない。それにぼくだって、日本の侍が使っていた『日本刀』を持ち出してるんだ。ひとのことなんて言えない……」
「だからと言って、飛び道具はさすがにねぇだろ」
「いいんじゃないかな。それぞれのスタイルで」
「あら、セイさんはマリアとちがって理解あるのね。じゃあ、次はもっとど派手な武器を創造してみせますわ」
「おい、セイ。てめえのせいでエヴァが調子こきはじめてンじゃねぇか。そのうち紀元前の世界にランチャーミサイルとか持ち出すぞ」
「あら、それ、いいわね」
「いいわね、じゃねぇよ。卑怯すぎるほどチートだし、なにより……美学に欠ける」
マリアがいつものようにエヴァを睨みつけると、セイが横からエヴァを援護した。
「マリア。強力な武器はそれだけ『未練の力』を使うんだ。エヴァだって相応のリスクを覚悟して使ってるんだ」
「おい、なんだその『未練の力』とかいうのは?」
「きみたちもその力を使ってるから、そんな魔法じみたことできるんだろ?」
「はぁ?。セイ、なにを言っている。この力はオレたちの修練の賜物だ。どんだけ修業したと思っている」
「まぁ、そうかもしれないけど、その力の源は、この世界で、自分の知っている『歴史』を変えたい、という『思い』なんだよ」
マリアとエヴァが驚いた表情でお互いの顔を見合わせた。
「ん、まぁ、確かにこの力に『源』があるというのは聞いたことがありますけど……」
マリアが記憶をたどるように、ぽつぽつとことばを紡いだが、マリアがそれを一蹴するように言った。
「オレの信心の深さがその『源』っていうヤツだよ」
「マリア、違う。ぼくはなんどもそれで引き揚げに失敗したんだ。ぼくらのこの力は、今あの王妃スポルスの歴史を変えたいという『未練』の強さにかかっているんだ」
「じゃあ、なにか!。あの王妃が自分の人生を受け入れて、『このままでいいわ』って思えば、オレたちのパワーはうしなわれるのか?」
「そうだよ。空から武器も取り出せないし、人間ばなれした動きもできないし、化物のようなパワーも出せない」
「まぁ、それじゃあ、まるでふつうの人間みたいじゃないですか……」とエヴァがため息をつくように言った。
「あぁ。エヴァ。その通りだよ。もしスポルスからネロから逃れたかった、という『未練』の気持ちが無くなったら……」
「ぼくらは無力だ……」
そのとき、数人の兵士たちがバラバラと音をさせて足早に牢の前にやってきた。今度はいきなり掴みかかって、無理やり連行しようとしなかった。すでに二つの魔術を目の当たりにしてせいで、その扱いに慎重になっているのだろう。
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兵士たちは牢屋の外に仁王立ちしたまま、みな、セイのほうをにらみつけていた。
「やっぱりぼくの順番らしい」
セイが肩をすくめるとマリアが嫌みたらしく言った。
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