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ダイブ3 クォ=ヴァディスの巻 〜 暴君ネロ 編 〜
第17話 少女を裸にひんむき辱めてから殺すのもまた一興かと
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思いもかけない状況に、まだ円形競技場はざわついていたが、玉座ではネロが怒りにふるえていた。
「スポルス、さぞやいい気持ちだろうな。おまえのお友達がワシの面目をつぶしてくれて……」
「いえ、そんなこと……」
スポルスは顔を伏せたが、ネロはスポルスの顎をつかんで顔をもちあげると、自分の顔を近づけてつぶさに眺めながら言った。
「おまえの顔がポッパエア=サビナに似ていなければ……。こんなにもワシの心を奪わなければ、とっくに獣たちの餌にしているものを……」
ネロは愛憎なかばするような目つきをスポルスにむけると、顎を掴んでいた手を頬に滑らせ、ぎゅっと力をこめた。スポルスの顔がゆがむ。
「ポッパエア様はあなたが殺害を命じられたのでしょう」
スポルスが嫌悪をあらわにして、ネロに強い口調で反論した。
「なんだとぉ」
ネロが顔色を曇らせ、さらに手に力をこめはじめたが、その時、ティゲリヌスの威勢の良い声が聞こえてきた。
「皇帝陛下!。次はあの少女にてございます」
ティゲリヌスはまるで先ほどのライオンでの失態をすこしでも取り戻さねば、という焦りが感じられるほど声を張っていた。
ネロはスポルスを突き倒すようにして手をはなすと、アリーナのほうへ目をむけた。心細そうに立っているエヴァを見て目を細めた。
「ほほう。なかなかの美少女ではないか……」
ネロは先ほどの激高していたことなど嘘だったかのように、相好を崩すと、思わず舌なめずりするような顔をした。
「で、今度はどうするつもりだ?」
「はっ。私の腹心の一人、パオンを差し向けましてございます」
「ほう。拷問の達人、鞭使いのパオンか……。ならばなぶり殺しになるのは避けられんな」
「パオンの鞭さばきで、少女を裸にひんむき辱めてから殺すのも、また一興かと……」
「さすがティゲリヌスだのぉ。なかなかの趣向ではないか……。
まぁ、ちと、惜しい気もするがな」
------------------------------------------------------------
競技場の広場に引き摺りだされたエヴァは、一斉に自分に降り注がれる観衆の視線に足がすくむ思いでいた。元々ひと前にでるのはあまり得意ではない彼女にとって、これだけの人に囲まれるというのは、それだけでひとしきりの重圧を噛みしめていることになる。
突然、歓声があがった。エヴァがあわてて顔をあげると、自分の正面十メートルほど離れたところに、両手に長い鞭をもった半裸の大男が現れた。でっぷりとした体躯。毛むくじゃらで、からだになにかを塗っているのか、皮膚がテラテラとてかってみえた。
どこからか男を応援する声が飛んだ。
「パオーン。おまえの鞭でその少女を切り刻んでくれ!」
その声援に呼応するようにパオンが、鞭をしならせた。まだ相当の距離があるというのに、そのまま届くのでないかと思うほどの長い鞭。ひゅんという凶暴な風切り音がエヴァの耳元を通りすぎた。エヴァは「きゃっ」とちいさな悲鳴をあげて、その場に思わずすくんだ。
エヴァの怯える姿に、観衆たちの声がひときわ湧き上がった。
------------------------------------------------------------
牢屋の窓にからエヴァの様子を見ていたセイが叫んだ。
「エヴァ、無理だ。きみだけでも現世に戻って。今すぐ願うんだ」
するとその横のスペースの牢の格子にマリアが勢いよくしがみついてきた。
「おい、エヴァ、金にならんから不満だろうが、とりあえずそいつ倒しとけ!」
「とりあえず……って?」
「おい、さっきも言ったよな、セイ。おまえはなぜオレたちがあいつらに敵わない前提でものを言っている?」
「いや、でも……」
「でも、じゃねぇ。ちゃんと見てろ。あいつは見た目以上にえげつない女だ」
「えげつない?」
「スポルス、さぞやいい気持ちだろうな。おまえのお友達がワシの面目をつぶしてくれて……」
「いえ、そんなこと……」
スポルスは顔を伏せたが、ネロはスポルスの顎をつかんで顔をもちあげると、自分の顔を近づけてつぶさに眺めながら言った。
「おまえの顔がポッパエア=サビナに似ていなければ……。こんなにもワシの心を奪わなければ、とっくに獣たちの餌にしているものを……」
ネロは愛憎なかばするような目つきをスポルスにむけると、顎を掴んでいた手を頬に滑らせ、ぎゅっと力をこめた。スポルスの顔がゆがむ。
「ポッパエア様はあなたが殺害を命じられたのでしょう」
スポルスが嫌悪をあらわにして、ネロに強い口調で反論した。
「なんだとぉ」
ネロが顔色を曇らせ、さらに手に力をこめはじめたが、その時、ティゲリヌスの威勢の良い声が聞こえてきた。
「皇帝陛下!。次はあの少女にてございます」
ティゲリヌスはまるで先ほどのライオンでの失態をすこしでも取り戻さねば、という焦りが感じられるほど声を張っていた。
ネロはスポルスを突き倒すようにして手をはなすと、アリーナのほうへ目をむけた。心細そうに立っているエヴァを見て目を細めた。
「ほほう。なかなかの美少女ではないか……」
ネロは先ほどの激高していたことなど嘘だったかのように、相好を崩すと、思わず舌なめずりするような顔をした。
「で、今度はどうするつもりだ?」
「はっ。私の腹心の一人、パオンを差し向けましてございます」
「ほう。拷問の達人、鞭使いのパオンか……。ならばなぶり殺しになるのは避けられんな」
「パオンの鞭さばきで、少女を裸にひんむき辱めてから殺すのも、また一興かと……」
「さすがティゲリヌスだのぉ。なかなかの趣向ではないか……。
まぁ、ちと、惜しい気もするがな」
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競技場の広場に引き摺りだされたエヴァは、一斉に自分に降り注がれる観衆の視線に足がすくむ思いでいた。元々ひと前にでるのはあまり得意ではない彼女にとって、これだけの人に囲まれるというのは、それだけでひとしきりの重圧を噛みしめていることになる。
突然、歓声があがった。エヴァがあわてて顔をあげると、自分の正面十メートルほど離れたところに、両手に長い鞭をもった半裸の大男が現れた。でっぷりとした体躯。毛むくじゃらで、からだになにかを塗っているのか、皮膚がテラテラとてかってみえた。
どこからか男を応援する声が飛んだ。
「パオーン。おまえの鞭でその少女を切り刻んでくれ!」
その声援に呼応するようにパオンが、鞭をしならせた。まだ相当の距離があるというのに、そのまま届くのでないかと思うほどの長い鞭。ひゅんという凶暴な風切り音がエヴァの耳元を通りすぎた。エヴァは「きゃっ」とちいさな悲鳴をあげて、その場に思わずすくんだ。
エヴァの怯える姿に、観衆たちの声がひときわ湧き上がった。
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牢屋の窓にからエヴァの様子を見ていたセイが叫んだ。
「エヴァ、無理だ。きみだけでも現世に戻って。今すぐ願うんだ」
するとその横のスペースの牢の格子にマリアが勢いよくしがみついてきた。
「おい、エヴァ、金にならんから不満だろうが、とりあえずそいつ倒しとけ!」
「とりあえず……って?」
「おい、さっきも言ったよな、セイ。おまえはなぜオレたちがあいつらに敵わない前提でものを言っている?」
「いや、でも……」
「でも、じゃねぇ。ちゃんと見てろ。あいつは見た目以上にえげつない女だ」
「えげつない?」
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