38 / 935
ダイブ2 不気味の国のアリスの巻 〜 ルイス・キャロル 編〜
第8話 セイ、首を刎ねてやるわ
しおりを挟む
「セイ、首を刎ねてやるわ」
女王は足下にいるセイを見おろして、開口一番、わめくように言った。
「ハートの女王様、そんなむごいこと、やめて」
女王の手につかまれているアリスが命乞いをした。
「許さないわよ。こいつはこの庭にいるものを全部殺したのよ」
「でも、首を刎ねるのはよしてちょうだい」
「じゃあ、踏みつぶしてやる」
そういうなり、女王は足をおおきくあげて、ドン、と力いっぱい踏みつけた。セイは逃げる間もなく、女王の足の下敷きになった。
「セイ!!」
アリスが悲鳴をあげた。
「大丈夫。アリス。心配ないよ」
踏みつけたられたはずの女王の足下から、セイの声が聞こえた。アリスが上からのぞき見ると、セイが女王の足下からはい出てくるのが見えた。
「女王、ハイヒールは踏みつけるのには不向きだよ」
セイが下から大声で助言すると、女王は怒り心頭という顔つきで叫んだ。
「衛兵。この男を捕らえなさい」
ふと見ると、いつのまにか、まわりを、トランプのからだをした兵隊たちに囲まれていることに気づいた。トランプたちは皆手に槍を掲げて、セイのほうへ先端をむけていた。
「あれ、あれ、囲まれるにもほどがあるな」
そういうと、セイは小瓶をとりだして、ぐびり、と今度はたっぷりと咽に流し込んだ。
見る見るセイのからだがおおきくなっていきはじめていく。まわりを取り囲んでいた兵隊たちのうえに落ちた、黒い影が伸びていく。驚きの表情でじりっと後退する兵隊たち。
ハートの女王とおなじくらいおおきくなったところで、セイが大地を蹴飛ばして風をおこした。その風に煽られたトランプの兵隊たちは、テムズ川まで飛ばされそのまま流されていった。セイがテムズ川の水面にうつる自分の姿に気づいた。
そこにはエプロンドレス姿に女装した巨人がいた。思わずセイが漏らす。
「すげー、恥ずかしいンですけどぉ」
「なんて、破廉恥な!」女王が怒りまかせに叫んだ。
「ですよ・ね!」とセイも同調する。
「そんな薬を隠し持っているなんて、恥をしるべきです」
「あ、そっち?」
「セイ、迎えにきてくれたのね」
女王のてのなかのアリスの声にセイがすぐに反応した。
「女王陛下、失礼します」というなり、顔にびんたをくらわせる。虚をつかれて手が緩んだところをセイは見逃さない。女王の右手からアリスを取り戻すと、やさしく手に包みこんだ。
「アリス、大丈夫だった?」
「セイ。なんともないわ」
セイはほっとして、にんまりと笑った。が、そのままセイの顔が引きつった。
ハッとして気づくと、ハートの女王がセイの首をむんずと掴んでいた。
「首を握りつぶしてやるわ」
身動きを封じられた上、息ができなくなったが、セイはまずはアリスを助けようと、しゃがみ込んで地面にむけて手をのばした。
だが、なぜか地面に手が届かなかった。
「セイ、届かないわ。もうちょっと下よ」
こんなに大きくなっているのに、数メートル先の地面に届かないのが腑に落ちない。セイはハッとした。
縮んでいる……!。
この巨人の姿は、あの小瓶のなかの液体を飲んでも、そんなに長続きしないのか。
セイは女王に首元をつかまれたままの状態で、精いっぱい叫んだ。
「ドジソン!。チャールズ・ドジソン!、どこだぁぁぁ」
するとすぐ下の木立から声がした。
「セイ、ぼー、ぼくはここだ」
セイは顔をしかめながら、ドジソンに言った。
「そこでアリスを受けとめてくれ」
「むー、むー、無理だ。ぼー、ぼくの力では」
「ぼくのからだは縮んでいる。はやくしないと手遅れになる」
「でー、でも……」
「ルイス。ルイス・キャロル!!。きみのアリスへの愛をいま見せてくれ」
女王は足下にいるセイを見おろして、開口一番、わめくように言った。
「ハートの女王様、そんなむごいこと、やめて」
女王の手につかまれているアリスが命乞いをした。
「許さないわよ。こいつはこの庭にいるものを全部殺したのよ」
「でも、首を刎ねるのはよしてちょうだい」
「じゃあ、踏みつぶしてやる」
そういうなり、女王は足をおおきくあげて、ドン、と力いっぱい踏みつけた。セイは逃げる間もなく、女王の足の下敷きになった。
「セイ!!」
アリスが悲鳴をあげた。
「大丈夫。アリス。心配ないよ」
踏みつけたられたはずの女王の足下から、セイの声が聞こえた。アリスが上からのぞき見ると、セイが女王の足下からはい出てくるのが見えた。
「女王、ハイヒールは踏みつけるのには不向きだよ」
セイが下から大声で助言すると、女王は怒り心頭という顔つきで叫んだ。
「衛兵。この男を捕らえなさい」
ふと見ると、いつのまにか、まわりを、トランプのからだをした兵隊たちに囲まれていることに気づいた。トランプたちは皆手に槍を掲げて、セイのほうへ先端をむけていた。
「あれ、あれ、囲まれるにもほどがあるな」
そういうと、セイは小瓶をとりだして、ぐびり、と今度はたっぷりと咽に流し込んだ。
見る見るセイのからだがおおきくなっていきはじめていく。まわりを取り囲んでいた兵隊たちのうえに落ちた、黒い影が伸びていく。驚きの表情でじりっと後退する兵隊たち。
ハートの女王とおなじくらいおおきくなったところで、セイが大地を蹴飛ばして風をおこした。その風に煽られたトランプの兵隊たちは、テムズ川まで飛ばされそのまま流されていった。セイがテムズ川の水面にうつる自分の姿に気づいた。
そこにはエプロンドレス姿に女装した巨人がいた。思わずセイが漏らす。
「すげー、恥ずかしいンですけどぉ」
「なんて、破廉恥な!」女王が怒りまかせに叫んだ。
「ですよ・ね!」とセイも同調する。
「そんな薬を隠し持っているなんて、恥をしるべきです」
「あ、そっち?」
「セイ、迎えにきてくれたのね」
女王のてのなかのアリスの声にセイがすぐに反応した。
「女王陛下、失礼します」というなり、顔にびんたをくらわせる。虚をつかれて手が緩んだところをセイは見逃さない。女王の右手からアリスを取り戻すと、やさしく手に包みこんだ。
「アリス、大丈夫だった?」
「セイ。なんともないわ」
セイはほっとして、にんまりと笑った。が、そのままセイの顔が引きつった。
ハッとして気づくと、ハートの女王がセイの首をむんずと掴んでいた。
「首を握りつぶしてやるわ」
身動きを封じられた上、息ができなくなったが、セイはまずはアリスを助けようと、しゃがみ込んで地面にむけて手をのばした。
だが、なぜか地面に手が届かなかった。
「セイ、届かないわ。もうちょっと下よ」
こんなに大きくなっているのに、数メートル先の地面に届かないのが腑に落ちない。セイはハッとした。
縮んでいる……!。
この巨人の姿は、あの小瓶のなかの液体を飲んでも、そんなに長続きしないのか。
セイは女王に首元をつかまれたままの状態で、精いっぱい叫んだ。
「ドジソン!。チャールズ・ドジソン!、どこだぁぁぁ」
するとすぐ下の木立から声がした。
「セイ、ぼー、ぼくはここだ」
セイは顔をしかめながら、ドジソンに言った。
「そこでアリスを受けとめてくれ」
「むー、むー、無理だ。ぼー、ぼくの力では」
「ぼくのからだは縮んでいる。はやくしないと手遅れになる」
「でー、でも……」
「ルイス。ルイス・キャロル!!。きみのアリスへの愛をいま見せてくれ」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる