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ダイブ1 化天の夢幻の巻 〜 織田信長編 〜
第25話 我が名は惟任日向守 五宿老、藤田伝五!!。参る!。
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右側の敵に対峙するセイのうごきは実にシンプルだった。
セイはこちらに突進してくる敵陣に正面からとびこむと、からだをぐっと沈みこませて、滑りこむようにしてまずは横に一太刀ふるった。刃をふりだす強烈なスピードに刀身がしなったかと思うと、そのまま数倍もの長さにひゅんと伸びる。十メートルはあろうかという刀身が魔物たちの足元をすくう。
そのひと太刀目で、先鋒の一列目の魔物たちの、膝から下を断ち切った。
前のめりで突進してきた魔物たちの膝から上だけが、その勢いのまま前に放りだされる。そのすぐうしろを走っていた部隊は、その残された足や転がったからだにつまずきそうになって、あわてて避けようとする。それだけ注意がそれれば、セイにとってあとはたやすかった。ふた太刀目は、魔物たちに首筋を狙って一閃されていた。一瞬でも足元に気をとられた者の首は、もう次の瞬間には空中に舞っていた。
一瞬にして数個の頭が地面に転がる。
「うおおおー」
信長が雄叫びのような奇声をあげる。同時進行しているマリアとエヴァの活躍を合わ見ている。信長の興奮は収まるどころか、さらに高まっていた。今度は弥助の胸ぐらにしがみついて激しく揺さぶりながら言った。
「なんという太刀筋じゃ!。一気に十人は斬り伏せおったわ」
「大変……凄うご……ざいますな、御屋形……様」
興奮した信長にからだを揺さぶられては、弥助もなんとかことばを返すのがやっとだった。
一群となって斬りかかってきた魔物を倒した先にいたのは、二体の魔物だった。
さきほど殲滅した魔物よりも一回り大きな体躯で、首回りは太く強靱そうな体つき。防具も重厚かつ強固で、臑当|《すねあて》を見ただけでも、先ほどのように足や首を薙ぎ払うようなまねは難しそうだった。
ラスボス前の中ボスってところか……。
セイは走りながら、空中にむけて手をあげた。
手の中に光が走って、三本の刀が空中に出現した。刀は突っ込んでいくセイの上を追従するようについてくる。
正面の中ボスに近づくと「我が名は惟任日向守五宿老、藤田伝五……」と名乗りをあげてきた。
セイはそんな武士の作法に、一切配慮なく、けさ懸けに藤田伝五に刀を振り降ろした。伝五が力強い力でその太刀を正面から受けてくる。セイはそのままその刀を押し込むと、その剣から手を離した。セイの手が離れたにもかかわらず刀は力を加え続け、藤田伝五の刀を押しとどめ続ける。
セイは頭上に浮いている三本の刀の一本の柄に手をかけると、勢いよく引き抜き、そのまま藤田伝五の首筋むけて打ち下ろした。セイが手放した刀と鍔ぜりあいをさせられていた伝五は、その太刀を受けるすべがなかった。刃が首の中心部分までざっくりと食い込む。
だが、伝五のからだはまったく揺らぎもしない。首に刀が刺さったまま、ぎろりと凶悪な目をセイにむける余裕すらあった。
「そんななまくら刀では、我を斬るのはでき……」
そう嘯いたが、矢継ぎ早にセイが頭上から二本目の刀を引き抜き、伝五ののど笛に突き立てるのは見えなかった。咽を貫かれことばが途切れた。
二本の刀を首にさされて、さすがの魔物もうしろによろめいた。鍔ぜりあいをしていた無人の刀が、ここぞとばかりに、ぐっと伝五のからだを押し込む。バランスをうしなって、うしろに倒れる伝五。
その背後に三本目の刀を抜いて待ちかまえているセイがいた。倒れてくる伝五の延髄付近をめがけて刀を突き出す。
どーんと派手な音をたてて倒れた時には、自重と倒れた勢いもあって、完全に刀身は首をうしろから前に貫いていた。
すでに勝負はついていたが、セイは無人で魔物の相手をしていた剣を掴むと、魔物のうえに飛び乗り、三本もの刀が刺さった首筋にむけて、四本目の刀を突き立ててとどめをさした。
セイは絶命した藤田伝五のからだから飛び降りて、マリアたちが戦っている方角をみた。
場合によっては左の中ボスも倒さねばならない。
と、ドーンとあたりの空気を震わせるようなひときわ大きな爆発音がして、左側の中ボスの上半身が吹き飛ぶのが見えた。ぱらぱらと辺りに肉片が飛び散る。
その足元には剣を地面に突き立てたマリアが、そしてそのすぐ上にピストル・バイクに乗ったエヴァがいた。セイはすぐにふたりがどうやって倒したかわかった。
マリアが中ボスに接近戦を挑み、足に剣を突き立てて身動きできなくしたところで、至近距離からエヴァが一発見舞った、ということだ。
セイが見ているのに気づいて、疲れ切った顔でマリアが親指を立てて見せてきた。
そのとき、ふっと空気が揺らぐのを感じた。
セイがとっさに剣を構える。
刃と刃の噛み合う音。
襲ってきたのは斉藤利三だった。
セイはこちらに突進してくる敵陣に正面からとびこむと、からだをぐっと沈みこませて、滑りこむようにしてまずは横に一太刀ふるった。刃をふりだす強烈なスピードに刀身がしなったかと思うと、そのまま数倍もの長さにひゅんと伸びる。十メートルはあろうかという刀身が魔物たちの足元をすくう。
そのひと太刀目で、先鋒の一列目の魔物たちの、膝から下を断ち切った。
前のめりで突進してきた魔物たちの膝から上だけが、その勢いのまま前に放りだされる。そのすぐうしろを走っていた部隊は、その残された足や転がったからだにつまずきそうになって、あわてて避けようとする。それだけ注意がそれれば、セイにとってあとはたやすかった。ふた太刀目は、魔物たちに首筋を狙って一閃されていた。一瞬でも足元に気をとられた者の首は、もう次の瞬間には空中に舞っていた。
一瞬にして数個の頭が地面に転がる。
「うおおおー」
信長が雄叫びのような奇声をあげる。同時進行しているマリアとエヴァの活躍を合わ見ている。信長の興奮は収まるどころか、さらに高まっていた。今度は弥助の胸ぐらにしがみついて激しく揺さぶりながら言った。
「なんという太刀筋じゃ!。一気に十人は斬り伏せおったわ」
「大変……凄うご……ざいますな、御屋形……様」
興奮した信長にからだを揺さぶられては、弥助もなんとかことばを返すのがやっとだった。
一群となって斬りかかってきた魔物を倒した先にいたのは、二体の魔物だった。
さきほど殲滅した魔物よりも一回り大きな体躯で、首回りは太く強靱そうな体つき。防具も重厚かつ強固で、臑当|《すねあて》を見ただけでも、先ほどのように足や首を薙ぎ払うようなまねは難しそうだった。
ラスボス前の中ボスってところか……。
セイは走りながら、空中にむけて手をあげた。
手の中に光が走って、三本の刀が空中に出現した。刀は突っ込んでいくセイの上を追従するようについてくる。
正面の中ボスに近づくと「我が名は惟任日向守五宿老、藤田伝五……」と名乗りをあげてきた。
セイはそんな武士の作法に、一切配慮なく、けさ懸けに藤田伝五に刀を振り降ろした。伝五が力強い力でその太刀を正面から受けてくる。セイはそのままその刀を押し込むと、その剣から手を離した。セイの手が離れたにもかかわらず刀は力を加え続け、藤田伝五の刀を押しとどめ続ける。
セイは頭上に浮いている三本の刀の一本の柄に手をかけると、勢いよく引き抜き、そのまま藤田伝五の首筋むけて打ち下ろした。セイが手放した刀と鍔ぜりあいをさせられていた伝五は、その太刀を受けるすべがなかった。刃が首の中心部分までざっくりと食い込む。
だが、伝五のからだはまったく揺らぎもしない。首に刀が刺さったまま、ぎろりと凶悪な目をセイにむける余裕すらあった。
「そんななまくら刀では、我を斬るのはでき……」
そう嘯いたが、矢継ぎ早にセイが頭上から二本目の刀を引き抜き、伝五ののど笛に突き立てるのは見えなかった。咽を貫かれことばが途切れた。
二本の刀を首にさされて、さすがの魔物もうしろによろめいた。鍔ぜりあいをしていた無人の刀が、ここぞとばかりに、ぐっと伝五のからだを押し込む。バランスをうしなって、うしろに倒れる伝五。
その背後に三本目の刀を抜いて待ちかまえているセイがいた。倒れてくる伝五の延髄付近をめがけて刀を突き出す。
どーんと派手な音をたてて倒れた時には、自重と倒れた勢いもあって、完全に刀身は首をうしろから前に貫いていた。
すでに勝負はついていたが、セイは無人で魔物の相手をしていた剣を掴むと、魔物のうえに飛び乗り、三本もの刀が刺さった首筋にむけて、四本目の刀を突き立ててとどめをさした。
セイは絶命した藤田伝五のからだから飛び降りて、マリアたちが戦っている方角をみた。
場合によっては左の中ボスも倒さねばならない。
と、ドーンとあたりの空気を震わせるようなひときわ大きな爆発音がして、左側の中ボスの上半身が吹き飛ぶのが見えた。ぱらぱらと辺りに肉片が飛び散る。
その足元には剣を地面に突き立てたマリアが、そしてそのすぐ上にピストル・バイクに乗ったエヴァがいた。セイはすぐにふたりがどうやって倒したかわかった。
マリアが中ボスに接近戦を挑み、足に剣を突き立てて身動きできなくしたところで、至近距離からエヴァが一発見舞った、ということだ。
セイが見ているのに気づいて、疲れ切った顔でマリアが親指を立てて見せてきた。
そのとき、ふっと空気が揺らぐのを感じた。
セイがとっさに剣を構える。
刃と刃の噛み合う音。
襲ってきたのは斉藤利三だった。
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