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ダイブ1 化天の夢幻の巻 〜 織田信長編 〜
第21話 いや必要ない。こっちはもう討たせてもらった
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足軽たちがその場に飛び散ったあとも、弓侍、刀侍、槍侍たちが次々と中庭にのりこんできた。ザザッと派手な玉砂利の音をさせて、槍侍たちがセイたちを取り囲む陣形をとる。
その奥から立派な鎧に身を包んだ鎧武者が姿を現した。その軍勢を率いている隊長とおもわしき男が、ひときわ長い槍を抱えて前に進み出る。
鎧武者は先陣をきった部隊がことごとく倒されているのを見て、その中心に立っているセイに目をむけた。
「これはきさまがやったのか」
「そうだ。この三人の若者が全部やったのだ!」
信長がからだを前のめりにしゃしゃりでると、わが事のように威張りくさった
「信長、黙ってろ!!」
マリアが信長を大声でしかりつけた。
鎧武者がセイの目を見て言った。
「きさま何者だ。どうやら、バテレンとも違うようだが……」
「誰だっていいでしょ。あなたが知るには及ばないよ」
「きさま、私が誰だと!」
「知ってるよ。あんたが信長に致命傷をおわせる男だからね。安田国継さん、いや天野源右エ門さんか……」
「なんと!」
国継が驚愕とも困惑ともとれるような表情を浮かべたが、セイは突き放すように言った。
「でも、どうだっていいや。だってあんた……」
「試験にでないもん」
安田国継の形相が変わった。
「なにかは知らねど、私を愚弄するとはいい度胸だ。小姓だと思って目こぼしをしようと思うたが、信長の前にまずはお主を討たせてもらおうか?」
安田国継が槍を構え、セイの方にむける。
「いや必要ない。こっちはもう討たせてもらった」
「なにい」
安田国継が怒りの声を発したが、その一瞬ののち槍をかまえた両手がぼとりと地面におちた。槍の先が緑石にぶつかり、カランと乾いた音をたてる。
国継が、なくなった上腕を唖然として見つめるが、その表情のまま首から血を吹きださせると、切断面を見せながら頭がうしろに倒れた。その場に崩れ落ちる国継のからだ。
「あいかわらず、みごとな太刀筋ですねぇ」
エヴァがピストル・バイクのシートにしなだれかかったまま、うっとりとした目つきで言った。
安田国継が目にもとまらぬ速さで討取られて、部下たちはたじろいだ。が、思わずうしろに半歩さがった途端、首元から血煙を吹きださせて、バタバタと倒れていった。
彼らの前にいつのまにか、剣を抜いたマリアがいた。
「エヴァ、オレの太刀筋も、見事だろうが」
「はいはい、見事ですわよ」
ピストル・バイクの車体に寝そべったまま、エヴァが気のない拍手を数回してみせる。
信長は興奮を隠せず、蘭丸の胸元をつかんで大きくゆさぶった。
「うはははは。蘭丸!!。見たか、セイの太刀を!、あの稚……、マリアどのの太刀を!」
「あ、はい……、いえ、信長様、どちらもわたしにはまったく……見えませんでした」
「そうじゃ、いつ抜いたのか、いつ斬ったのか、まったくわからんかった」
エヴァが額に青筋をたてんばかりに顔をゆがめて、うしろをふりむいた。
「静かにしろ、信長。いい加減、叩き斬るぞ。このうつけ者!!」
後続の部隊がすぐに攻めてきそうもない気配を感じ取って、セイは空にむかって大声で叫んだ。
「明智光秀!!」
「あんたがすぐそこの、三条堀川に陣をかまえているのはわかってる」
その奥から立派な鎧に身を包んだ鎧武者が姿を現した。その軍勢を率いている隊長とおもわしき男が、ひときわ長い槍を抱えて前に進み出る。
鎧武者は先陣をきった部隊がことごとく倒されているのを見て、その中心に立っているセイに目をむけた。
「これはきさまがやったのか」
「そうだ。この三人の若者が全部やったのだ!」
信長がからだを前のめりにしゃしゃりでると、わが事のように威張りくさった
「信長、黙ってろ!!」
マリアが信長を大声でしかりつけた。
鎧武者がセイの目を見て言った。
「きさま何者だ。どうやら、バテレンとも違うようだが……」
「誰だっていいでしょ。あなたが知るには及ばないよ」
「きさま、私が誰だと!」
「知ってるよ。あんたが信長に致命傷をおわせる男だからね。安田国継さん、いや天野源右エ門さんか……」
「なんと!」
国継が驚愕とも困惑ともとれるような表情を浮かべたが、セイは突き放すように言った。
「でも、どうだっていいや。だってあんた……」
「試験にでないもん」
安田国継の形相が変わった。
「なにかは知らねど、私を愚弄するとはいい度胸だ。小姓だと思って目こぼしをしようと思うたが、信長の前にまずはお主を討たせてもらおうか?」
安田国継が槍を構え、セイの方にむける。
「いや必要ない。こっちはもう討たせてもらった」
「なにい」
安田国継が怒りの声を発したが、その一瞬ののち槍をかまえた両手がぼとりと地面におちた。槍の先が緑石にぶつかり、カランと乾いた音をたてる。
国継が、なくなった上腕を唖然として見つめるが、その表情のまま首から血を吹きださせると、切断面を見せながら頭がうしろに倒れた。その場に崩れ落ちる国継のからだ。
「あいかわらず、みごとな太刀筋ですねぇ」
エヴァがピストル・バイクのシートにしなだれかかったまま、うっとりとした目つきで言った。
安田国継が目にもとまらぬ速さで討取られて、部下たちはたじろいだ。が、思わずうしろに半歩さがった途端、首元から血煙を吹きださせて、バタバタと倒れていった。
彼らの前にいつのまにか、剣を抜いたマリアがいた。
「エヴァ、オレの太刀筋も、見事だろうが」
「はいはい、見事ですわよ」
ピストル・バイクの車体に寝そべったまま、エヴァが気のない拍手を数回してみせる。
信長は興奮を隠せず、蘭丸の胸元をつかんで大きくゆさぶった。
「うはははは。蘭丸!!。見たか、セイの太刀を!、あの稚……、マリアどのの太刀を!」
「あ、はい……、いえ、信長様、どちらもわたしにはまったく……見えませんでした」
「そうじゃ、いつ抜いたのか、いつ斬ったのか、まったくわからんかった」
エヴァが額に青筋をたてんばかりに顔をゆがめて、うしろをふりむいた。
「静かにしろ、信長。いい加減、叩き斬るぞ。このうつけ者!!」
後続の部隊がすぐに攻めてきそうもない気配を感じ取って、セイは空にむかって大声で叫んだ。
「明智光秀!!」
「あんたがすぐそこの、三条堀川に陣をかまえているのはわかってる」
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