1,032 / 1,035
第四章 第五節 ヤマトの絶望
第1031話 対マガンジー用兵器の説明
しおりを挟む
アルによる対マガンジー用兵器の説明があるとのことで、パイロットが集められた。
目の前に投映された説明のためのCG映像が動きはじめる。
亜獣マガンジーが粒子のようにばらけていく映像——
下半身部分に埋込まれていた『核』がむきだしになってくる。『核』を隠そうと飛び散った粒子状の細胞が、おそろしいスピードで再集結しはじめ『核』を覆いつくしはじめる。
そのとき、デミリアンに装着された装置から、波動が照射される。
とたんに再結合をはじめたマガンジーの細胞がうごきをとめる。すぐさまデミリアンが再結合はじめた細胞をはねのけ、『核』をむきだしにしていく。が、さきほどまでデミリアンの腕にまとわりついて、邪魔をしてきた細胞はまったく動かなかった。
その隙をついてデミリアンが『核』部分に手をのばす。が、細胞は動かない。
デミリアンが『核』をつかんで、ひっぱりだす。だが、邪魔するはずの細胞はまだ動こうとしない。
シミュレーションCGは、デミリアンがひっぱりだした『核』を渾身の力で握りつぶしたところで終わった。
「すまねぇが、ぶっつけ本番でやってもらわなきゃならねぇ」
アルがいつものように、詫びをいれながら話はじめたのを聞いて、アスカはヤマトが負傷したあとも、自分たちのやることはなにも変わらないのだというのを、あらためて感じていた。
「ちゃんと作動するのならいいわ」
レイがとくに感情もこめずに返事をする。ヤマトのことなどなかったかのようで、いつものレイらしい。あまりにも平常運転すぎて、すこしイラッとする。
「ああ、それは信頼してくれ。ただどれくらいの時間、亜獣の再集結を阻止できるかは未知数だ」
アルの言い方に、ユウキがため息まじりに切り込んだ。
「アル、今回の対マガンジー兵器は、バラバラにしたマガンジーのからだが再集結させないようにする装置ではないのかな」
「ユウキ、すまねぇが、さっきから説明しているように、この装置は亜獣のもつ生体波長と、逆位相の誘引波を出すことで、細胞の再集結を一定時間阻害するしろもんだ。だが亜獣が生体波長の位相を変えられると、とたんに効力をうしなっちまう。どれがどれくらい時間もつのかは、こちらでも計算できねぇっていうわけさ」
「では、せっかくマガンジーをバラバラにして核を剥き出しにできたとしても、数秒程度で元に戻られてしまうってこともありますの?」
クララがけわしい表情でアルに疑問をぶつけた。
いつもより必死さが感じられる。すくなくともクララは、ヤマトがいなくなる可能性を受けとめている。なんとか自分がその穴埋めにならないか、そんな覚悟がすけてみえる。
「んにゃ、クララ。そりゃない。前にエドに聞いたが、亜獣は生体波長の位相を変えることができるが、最低でも30秒程度はかかるそうだ。亜獣が亜空間にもどるときに、その位相を変えるらしいンだが、次に出現する日時や場所を特定するために、その変わった位相をその30秒ほどでスキャンしなきゃならなかったらしい」
アルはすこしさびしそうにつぎ足した。
「毎回、それを嘆いていたな。もうちょっと時間があればってな……」
「30秒あれば、なんとでもしてあげますわ」
キラがつよい口調で言い放った。こちらは兄が戦えなくなったことを嘆いたり、悔しがったりしているのでないとすぐにわかった。
自分が兄の代わりに、このデミリアンの戦いの先頭に立たねばならな、という不退転の決意があふれでていた。
「30秒あれば核を引きずりだして、叩き潰してやれますわ」
「あたしなら20秒あれば充分だわ」
アスカはキラに目配せしてから、強気を口にした。
あたしもヤマトがいなくなったこの部隊での、自分の立ち位置を明確に宣言しなければならない。
「アスカ、スピードを競うわけじゃねぇ。最低30秒はなんとかする。おそらくあと15から30秒はアドオンできると思ってる」
「1分あれば、わたしも余裕で倒せそうですわ」
クララはすこし控えめな口調で言った。覚悟はあったとしても、自信にあふれているとは言えない口調だった。
目の前に投映された説明のためのCG映像が動きはじめる。
亜獣マガンジーが粒子のようにばらけていく映像——
下半身部分に埋込まれていた『核』がむきだしになってくる。『核』を隠そうと飛び散った粒子状の細胞が、おそろしいスピードで再集結しはじめ『核』を覆いつくしはじめる。
そのとき、デミリアンに装着された装置から、波動が照射される。
とたんに再結合をはじめたマガンジーの細胞がうごきをとめる。すぐさまデミリアンが再結合はじめた細胞をはねのけ、『核』をむきだしにしていく。が、さきほどまでデミリアンの腕にまとわりついて、邪魔をしてきた細胞はまったく動かなかった。
その隙をついてデミリアンが『核』部分に手をのばす。が、細胞は動かない。
デミリアンが『核』をつかんで、ひっぱりだす。だが、邪魔するはずの細胞はまだ動こうとしない。
シミュレーションCGは、デミリアンがひっぱりだした『核』を渾身の力で握りつぶしたところで終わった。
「すまねぇが、ぶっつけ本番でやってもらわなきゃならねぇ」
アルがいつものように、詫びをいれながら話はじめたのを聞いて、アスカはヤマトが負傷したあとも、自分たちのやることはなにも変わらないのだというのを、あらためて感じていた。
「ちゃんと作動するのならいいわ」
レイがとくに感情もこめずに返事をする。ヤマトのことなどなかったかのようで、いつものレイらしい。あまりにも平常運転すぎて、すこしイラッとする。
「ああ、それは信頼してくれ。ただどれくらいの時間、亜獣の再集結を阻止できるかは未知数だ」
アルの言い方に、ユウキがため息まじりに切り込んだ。
「アル、今回の対マガンジー兵器は、バラバラにしたマガンジーのからだが再集結させないようにする装置ではないのかな」
「ユウキ、すまねぇが、さっきから説明しているように、この装置は亜獣のもつ生体波長と、逆位相の誘引波を出すことで、細胞の再集結を一定時間阻害するしろもんだ。だが亜獣が生体波長の位相を変えられると、とたんに効力をうしなっちまう。どれがどれくらい時間もつのかは、こちらでも計算できねぇっていうわけさ」
「では、せっかくマガンジーをバラバラにして核を剥き出しにできたとしても、数秒程度で元に戻られてしまうってこともありますの?」
クララがけわしい表情でアルに疑問をぶつけた。
いつもより必死さが感じられる。すくなくともクララは、ヤマトがいなくなる可能性を受けとめている。なんとか自分がその穴埋めにならないか、そんな覚悟がすけてみえる。
「んにゃ、クララ。そりゃない。前にエドに聞いたが、亜獣は生体波長の位相を変えることができるが、最低でも30秒程度はかかるそうだ。亜獣が亜空間にもどるときに、その位相を変えるらしいンだが、次に出現する日時や場所を特定するために、その変わった位相をその30秒ほどでスキャンしなきゃならなかったらしい」
アルはすこしさびしそうにつぎ足した。
「毎回、それを嘆いていたな。もうちょっと時間があればってな……」
「30秒あれば、なんとでもしてあげますわ」
キラがつよい口調で言い放った。こちらは兄が戦えなくなったことを嘆いたり、悔しがったりしているのでないとすぐにわかった。
自分が兄の代わりに、このデミリアンの戦いの先頭に立たねばならな、という不退転の決意があふれでていた。
「30秒あれば核を引きずりだして、叩き潰してやれますわ」
「あたしなら20秒あれば充分だわ」
アスカはキラに目配せしてから、強気を口にした。
あたしもヤマトがいなくなったこの部隊での、自分の立ち位置を明確に宣言しなければならない。
「アスカ、スピードを競うわけじゃねぇ。最低30秒はなんとかする。おそらくあと15から30秒はアドオンできると思ってる」
「1分あれば、わたしも余裕で倒せそうですわ」
クララはすこし控えめな口調で言った。覚悟はあったとしても、自信にあふれているとは言えない口調だった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
華の剣士
小夜時雨
ファンタジー
遥か昔、燐の国の王は神の加護を得て、獣を意のままに操る血族となった。その燐で生まれたハヨンは、幼き頃にある少年に助けられる。その少年の手がかりは、剣の柄に描かれていた紋章から、王族であるということのみ。昔の恩返しのために、ハヨンは史上初の女剣士を目指す。
しかし城内では派閥により大混乱で…。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
「虚空の記憶」
るいす
SF
未来の世界では、記憶ストレージシステムが人々の生活を一変させていた。記憶のデジタル保存と再生が可能となり、教育や生活の質が飛躍的に向上した。しかし、この便利なシステムには、記憶の消失や改ざんのリスクも存在していた。ある日、システムの不具合で一部の記憶が消失し、人々の間に不安が広がる。消失した記憶の謎を追う若い女性リナが、真実を求めて冒険に身を投じることで、未来の社会に希望と変革をもたらす物語が始まる。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
ロボ娘(機ぐるみ)にされたおんなのこ!
ジャン・幸田
SF
夏休みを境に女の子は変わるというけど・・・
二学期の朝、登校したら同級生がロボットになっていた?
学園のザコキャラであった僕、鈴木翔太はクラスメイトの金城恵理がロボット姿であるのに気付いた!
彼女は、国家的プロジェクトのプロトタイプに選ばれたという、でもそれは波乱の学園生活の始まりだった!
それにしても、なんですか、そのプロジェクトって!! 大人はいつも説明責任を果たさないんだから!
*作者の妄想を元に作ったので大目に見てくださいませ。
Apricot's Brethren
七種 智弥
SF
~あらすじ~
目覚めた時、少年は自分がどこにいるのかわからなかった。周囲は見知らぬ風景で、何の手掛かりもない。記憶喪失に陥り、自分の正体や過去のことを思い出すことができないのだ。
少年は不安と焦りを感じながらも、周囲を探索し始める。いつの間にか迷い込んだ家屋の中で、何か手掛かりを見つけることを期待しながら。
しかし、その最中に家主に発見されてしまう。驚きとパニックに襲われる中、少年は説明しようとするものの、家主は警戒心を抱いている様子だった。
男との腹を割った会話の末、少年は家主に自分の状況を説明する。記憶喪失であり、自分の正体を探しているのだと。家主は悶着の末、少年と行動を共にすることとなる。
そして少年の正体を追求するための冒険へ。彼らは様々な場所を訪れ、人々と出会いながら少年の謎を解き明かしていく。
果たして、少年Xの正体とは何なのか。彼の過去や記憶はどこにあるのか。そして、この見知らぬ世界に迷い込んだ理由とは何なのか。
少年と男の物語は、彼らの運命を変える大きな真実へと続いていく……。
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。
揚惇命
SF
三国志の三英雄の1人劉備玄徳が大好きな高校生の劉義賢が劉備玄徳の墓を訪れるが、くまなく調べると何かの装置が作動し墓の中に落ちる。
辺りを見回すと奥に劉備玄徳愛用の双股剣があったので触れると謎の女性の『玄徳様の運命をお変えください』という言葉で光に包まれ目を覚ますとそこは後漢末期の涿郡涿県楼桑村だった。
目の前にいる兄だと名乗る劉備殿に困惑しながらも義勇兵を結成し、激動の時代を劉備殿の天下のために尽力する物語。
1章 黄巾の乱編 完結
2章 反董卓連合編 完結
3章 群雄割拠編 完結
4章 三国鼎立編 完結
5章 天下統一編 鋭意製作中
※二次創作ではありますが史実に忠実ではなくオリジナル戦記寄りとなってます。
数多くの武将が出るため、誰が話しているかわからなくなることを避けるために「」の前に名前を入れます。
読みにくい場合はコメントなどで教えてもらえるとありがたいです。
オリジナルキャラも登場します。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる