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第四章 第五節 ヤマトの絶望

第1031話 対マガンジー用兵器の説明

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 アルによる対マガンジー用兵器の説明があるとのことで、パイロットが集められた。

 目の前に投映された説明のためのCG映像が動きはじめる。
 
 亜獣マガンジーが粒子のようにばらけていく映像——
 下半身部分に埋込まれていた『核』がむきだしになってくる。『核』を隠そうと飛び散った粒子状の細胞が、おそろしいスピードで再集結しはじめ『核』を覆いつくしはじめる。

 そのとき、デミリアンに装着された装置から、波動が照射される。

 とたんに再結合をはじめたマガンジーの細胞がうごきをとめる。すぐさまデミリアンが再結合はじめた細胞をはねのけ、『核』をむきだしにしていく。が、さきほどまでデミリアンの腕にまとわりついて、邪魔をしてきた細胞はまったく動かなかった。
 その隙をついてデミリアンが『核』部分に手をのばす。が、細胞は動かない。
 デミリアンが『核』をつかんで、ひっぱりだす。だが、邪魔するはずの細胞はまだ動こうとしない。
 シミュレーションCGは、デミリアンがひっぱりだした『核』を渾身の力で握りつぶしたところで終わった。

「すまねぇが、ぶっつけ本番でやってもらわなきゃならねぇ」
 アルがいつものように、詫びをいれながら話はじめたのを聞いて、アスカはヤマトが負傷したあとも、自分たちのやることはなにも変わらないのだというのを、あらためて感じていた。
「ちゃんと作動するのならいいわ」
 レイがとくに感情もこめずに返事をする。ヤマトのことなどなかったかのようで、いつものレイらしい。あまりにも平常運転すぎて、すこしイラッとする。


「ああ、それは信頼してくれ。ただどれくらいの時間、亜獣の再集結を阻止できるかは未知数だ」
 アルの言い方に、ユウキがため息まじりに切り込んだ。
「アル、今回の対マガンジー兵器は、バラバラにしたマガンジーのからだが再集結させないようにする装置ではないのかな」
「ユウキ、すまねぇが、さっきから説明しているように、この装置は亜獣のもつ生体波長と、逆位相の誘引波を出すことで、細胞の再集結を一定時間阻害するしろもんだ。だが亜獣が生体波長の位相を変えられると、とたんに効力をうしなっちまう。どれがどれくらい時間もつのかは、こちらでも計算できねぇっていうわけさ」

「では、せっかくマガンジーをバラバラにして核を剥き出しにできたとしても、数秒程度で元に戻られてしまうってこともありますの?」
 クララがけわしい表情でアルに疑問をぶつけた。
 いつもより必死さが感じられる。すくなくともクララは、ヤマトがいなくなる可能性を受けとめている。なんとか自分がその穴埋めにならないか、そんな覚悟がすけてみえる。
「んにゃ、クララ。そりゃない。前にエドに聞いたが、亜獣は生体波長の位相を変えることができるが、最低でも30秒程度はかかるそうだ。亜獣が亜空間にもどるときに、その位相を変えるらしいンだが、次に出現する日時や場所を特定するために、その変わった位相をその30秒ほどでスキャンしなきゃならなかったらしい」
 アルはすこしさびしそうにつぎ足した。
「毎回、それを嘆いていたな。もうちょっと時間があればってな……」

「30秒あれば、なんとでもしてあげますわ」
 キラがつよい口調で言い放った。こちらは兄が戦えなくなったことを嘆いたり、悔しがったりしているのでないとすぐにわかった。
 自分が兄の代わりに、このデミリアンの戦いの先頭に立たねばならな、という不退転の決意があふれでていた。
「30秒あれば核を引きずりだして、叩き潰してやれますわ」

「あたしなら20秒あれば充分だわ」
 アスカはキラに目配せしてから、強気を口にした。

 あたしもヤマトがいなくなったこの部隊での、自分の立ち位置を明確に宣言しなければならない。

「アスカ、スピードを競うわけじゃねぇ。最低30秒はなんとかする。おそらくあと15から30秒はアドオンできると思ってる」
「1分あれば、わたしも余裕で倒せそうですわ」
 クララはすこし控えめな口調で言った。覚悟はあったとしても、自信にあふれているとは言えない口調だった。
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