998 / 1,035
第四章 第四節 ヤマト襲撃される
第997話 草薙、焦りを感じる
しおりを挟む
これ以上ないほどまずい状況に追い込まれた。
ヤマトは草薙のうしろに追従して、建物内を移動しながら焦りを感じていた。
ふつうの人間なら、『恐怖』という『感情』が先にたっていたはずだろう。感情を封印できるヤマトにとっては、それは『焦り』という『状況』に置き換えられていた。
「タケルくん、敵の全体像が把握できたわ」
草薙が脳内通信システムを通じて話しかけてきた。ヤマトは外部装置を介して、その思考を受け取るなり返事した。
「五十人くらい?」
「鋭いわね。ええ、いまのところ特定できたのは、45人」
イタリアでドラゴンズ・ボール奪取で争ったときの追手の数と大差ない——
つまり総力を日本に送り込んできているということだ
そのなかにヤタもいるはずだ。
問題なのは、むこうが素体に人格を憑依させているのに対して、こちらはまったくの生身であるということだ。国際連邦軍の精鋭に守られてはいるが、ふいをつかれて防戦をしいられているし、なにより、セイントがいない。
命を奪うつもりなのだろうか?
あの一件でダイ・ラッキーとグランディスは、壊滅状態に追い込まれているという。
こちらが想像している以上に、怒り狂っている可能性はある。
ヤマトは自分だけは大丈夫だ、という自信をもてなかった。
「どうします?」
「数がすこし多いからこの建物内で迎え撃って、ある程度戦力を減らしてから脱出をはかることにします」
「相手は素体を使ってる。倒しても容れ物を入れ替えられれば切りがない」
「ええ。だから今、ヤシナ副司令にここ一帯の素体を使用不可にしてもらっている。うまくすれば敵の戦力を大幅にそげるかもしれない」
「あまり期待できないと思う。敵もそれは想定しているだろうから」
「わかってる。おそらく簡単に特定できない裏世界の個体を用意していると思う。それでもほかの個体に乗り移られなければ勝機はぐっと高まるわ」
先頭を進んでいた草薙の歩みがとまった。ヤマトの周りを取り巻いていた兵士も動きをとめる。ヤマトのうしろを警護していたバトーが囁くような思念を送ってきた。
「大佐、ここで敵を迎え撃ってぇかい」
ヤマトはあたりを見回した。
そこはビルの地下に広がるヴァーチャル・サバイバル・ゲームエリアだった。
数世紀前はこの場所に地下街が広がっていたという話だったが、商業空間が高層化したり、空中を生かしたフライスルー・ショップに移行し、地下の活用は限られたものになっていた。
そのゲームエリアは軍にあるシミュレーションエリアのように、形状を自在に変えられる素体を使って、街並みを構築するつくりになっており、現在はヨーロッパのどこかの街並みが広がっていた。
ヤマトは草薙のうしろに追従して、建物内を移動しながら焦りを感じていた。
ふつうの人間なら、『恐怖』という『感情』が先にたっていたはずだろう。感情を封印できるヤマトにとっては、それは『焦り』という『状況』に置き換えられていた。
「タケルくん、敵の全体像が把握できたわ」
草薙が脳内通信システムを通じて話しかけてきた。ヤマトは外部装置を介して、その思考を受け取るなり返事した。
「五十人くらい?」
「鋭いわね。ええ、いまのところ特定できたのは、45人」
イタリアでドラゴンズ・ボール奪取で争ったときの追手の数と大差ない——
つまり総力を日本に送り込んできているということだ
そのなかにヤタもいるはずだ。
問題なのは、むこうが素体に人格を憑依させているのに対して、こちらはまったくの生身であるということだ。国際連邦軍の精鋭に守られてはいるが、ふいをつかれて防戦をしいられているし、なにより、セイントがいない。
命を奪うつもりなのだろうか?
あの一件でダイ・ラッキーとグランディスは、壊滅状態に追い込まれているという。
こちらが想像している以上に、怒り狂っている可能性はある。
ヤマトは自分だけは大丈夫だ、という自信をもてなかった。
「どうします?」
「数がすこし多いからこの建物内で迎え撃って、ある程度戦力を減らしてから脱出をはかることにします」
「相手は素体を使ってる。倒しても容れ物を入れ替えられれば切りがない」
「ええ。だから今、ヤシナ副司令にここ一帯の素体を使用不可にしてもらっている。うまくすれば敵の戦力を大幅にそげるかもしれない」
「あまり期待できないと思う。敵もそれは想定しているだろうから」
「わかってる。おそらく簡単に特定できない裏世界の個体を用意していると思う。それでもほかの個体に乗り移られなければ勝機はぐっと高まるわ」
先頭を進んでいた草薙の歩みがとまった。ヤマトの周りを取り巻いていた兵士も動きをとめる。ヤマトのうしろを警護していたバトーが囁くような思念を送ってきた。
「大佐、ここで敵を迎え撃ってぇかい」
ヤマトはあたりを見回した。
そこはビルの地下に広がるヴァーチャル・サバイバル・ゲームエリアだった。
数世紀前はこの場所に地下街が広がっていたという話だったが、商業空間が高層化したり、空中を生かしたフライスルー・ショップに移行し、地下の活用は限られたものになっていた。
そのゲームエリアは軍にあるシミュレーションエリアのように、形状を自在に変えられる素体を使って、街並みを構築するつくりになっており、現在はヨーロッパのどこかの街並みが広がっていた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
8分間のパピリオ
横田コネクタ
SF
人間の血管内に寄生する謎の有機構造体”ソレウス構造体”により、人類はその尊厳を脅かされていた。
蒲生里大学「ソレウス・キラー操縦研究会」のメンバーは、20マイクロメートルのマイクロマシーンを操りソレウス構造体を倒すことに青春を捧げるーー。
というSFです。
銀河文芸部伝説~UFOに攫われてアンドロメダに連れて行かれたら寝ている間に銀河最強になっていました~
まきノ助
SF
高校の文芸部が夏キャンプ中にUFOに攫われてアンドロメダ星雲の大宇宙帝国に連れて行かれてしまうが、そこは魔物が支配する星と成っていた。
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
もうダメだ。俺の人生詰んでいる。
静馬⭐︎GTR
SF
『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。
(アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)
CREATED WORLD
猫手水晶
SF
惑星アケラは、大気汚染や森林伐採により、いずれ人類が住み続けることができなくなってしまう事がわかった。
惑星アケラに住む人類は絶滅を免れる為に、安全に生活を送れる場所を探す事が必要となった。
宇宙に人間が住める惑星を探そうという提案もあったが、惑星アケラの周りに人が住めるような環境の星はなく、見つける前に人類が絶滅してしまうだろうという理由で、現実性に欠けるものだった。
「人間が住めるような場所を自分で作ろう」という提案もあったが、資材や重力の方向の問題により、それも現実性に欠ける。
そこで科学者は「自分達で世界を構築するのなら、世界をそのまま宇宙に作るのではなく、自分達で『宇宙』にあたる空間を新たに作り出し、その空間で人間が生活できるようにすれば良いのではないか。」と。
基本中の基本
黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。
もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。
シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる