989 / 1,035
第四章 第三節 Z.P.G.(25世紀のルール)
第988話 当面の危機は去った
しおりを挟む
できる——
前回の半分のサイズしかない。中心部へ届かせるのは造作もないっつ。
キュウィィィィィン
耳鳴りがするような高周波の音が、振動となって伝わってくる。カウントダウンがはじまった証。
キラはさらにもうすこしだけ腕を押し込んでから、背中のバーニアスラスタから超流動斥力波を、一気に噴出させた。
亜獣の腹の部分がピカッと光ると、亜獣のからだがその光った部分にむかって、内部へ萎縮しながら吸い込まれていった。その中心には黒い煤のようなものをまとって、回転している黒い玉。砂や土をまいあげて、近くのものをあたりかまわず吸い込んでいく。
が、黒い玉から稲妻が走ったかと思うと、なにもかもを飲みこんでいた力は消え、黒い玉はその場で霧消した。
キラはユウキのセラ・マーズの隣に降りたつと言った。
「アルさん、ぜったいに次は仕留めますので、爆弾のほう、よろしくお願いいたしますね」
------------------------------------------------------------
当面の危機は去った——
カツライ・ミサトはとりあえずそう考えることにした。
しかも今回の亜獣マガンジーを倒す方法の端緒をつかむこともできた。
上出来だ——
「アル! キラのリクエスト! なんとかできるわよね」
ミサトはアルが映るモニタ画面を正面から見すえた。威圧するつもりはなかったが、重圧から解放されたせいか、自分でもつよい口調だとわかった。
「いや、すまねぇが、カツライ司令。ちぃとばかり待ってくだせえよ」
「弱点はわかったのよ。それに対抗する方法もね」
「それはわかってます。だけど技術的なものが追いつくかどうかはまだ……」
「亜空間に亜獣の本体以外を送り込む爆弾を作ればいいだけでしょう」
「カツライ司令、それが難しいのですよ」
アルより先に金田日が横から発言してきた。
「なぜならあの爆弾は、亜獣特有のマーカーを識別して、それに対して効力を発揮するという構造になっているからです」
「どーいうことよぉ」
「亜獣を識別するマーカーは『核』だけではなく、からだ全体から発せられています。そのなかから『核』以外を選別して爆発に巻込む、というのは相当に難易度が高いのです」
「じゃあ、どうすれば……」
「そのためにアルさんは時間が欲しい、と……」
「どれくらい?」
「それは次回の亜獣出現がいつになるかによります」
「そう、じゃあ、金田日博士、それが特定できたら教えてちょうだい」
ミサトは相手が金田日になってしまったことで、たちまち興味をうしなった。
今回の戦いでの成果は局のところ、とりあえずの『猶予』が与えられた、ということだけだ。4体ものデミリアンを月にまで送り込んで、決着を引き延ばしになっただけなのだ。
また嫌みを言われるわね——
あの国連本部の会議場でお偉方に囲まれながら、言い訳に終始している自分を想像してミサトはうんざりした。
ポジティブにとらえれば、ひとは死んでないし、施設やデミリアンに損害はなかったのだから、なにかを咎められることはない。
ミサトはふーっとわざとらしく大きく嘆息してから言った。
「タケルくん、クララ、ユウキ、キラ、作戦終了よ。次回がいつになるかは亜獣次第ってとこだけど、とりあえずご苦労様」
前回の半分のサイズしかない。中心部へ届かせるのは造作もないっつ。
キュウィィィィィン
耳鳴りがするような高周波の音が、振動となって伝わってくる。カウントダウンがはじまった証。
キラはさらにもうすこしだけ腕を押し込んでから、背中のバーニアスラスタから超流動斥力波を、一気に噴出させた。
亜獣の腹の部分がピカッと光ると、亜獣のからだがその光った部分にむかって、内部へ萎縮しながら吸い込まれていった。その中心には黒い煤のようなものをまとって、回転している黒い玉。砂や土をまいあげて、近くのものをあたりかまわず吸い込んでいく。
が、黒い玉から稲妻が走ったかと思うと、なにもかもを飲みこんでいた力は消え、黒い玉はその場で霧消した。
キラはユウキのセラ・マーズの隣に降りたつと言った。
「アルさん、ぜったいに次は仕留めますので、爆弾のほう、よろしくお願いいたしますね」
------------------------------------------------------------
当面の危機は去った——
カツライ・ミサトはとりあえずそう考えることにした。
しかも今回の亜獣マガンジーを倒す方法の端緒をつかむこともできた。
上出来だ——
「アル! キラのリクエスト! なんとかできるわよね」
ミサトはアルが映るモニタ画面を正面から見すえた。威圧するつもりはなかったが、重圧から解放されたせいか、自分でもつよい口調だとわかった。
「いや、すまねぇが、カツライ司令。ちぃとばかり待ってくだせえよ」
「弱点はわかったのよ。それに対抗する方法もね」
「それはわかってます。だけど技術的なものが追いつくかどうかはまだ……」
「亜空間に亜獣の本体以外を送り込む爆弾を作ればいいだけでしょう」
「カツライ司令、それが難しいのですよ」
アルより先に金田日が横から発言してきた。
「なぜならあの爆弾は、亜獣特有のマーカーを識別して、それに対して効力を発揮するという構造になっているからです」
「どーいうことよぉ」
「亜獣を識別するマーカーは『核』だけではなく、からだ全体から発せられています。そのなかから『核』以外を選別して爆発に巻込む、というのは相当に難易度が高いのです」
「じゃあ、どうすれば……」
「そのためにアルさんは時間が欲しい、と……」
「どれくらい?」
「それは次回の亜獣出現がいつになるかによります」
「そう、じゃあ、金田日博士、それが特定できたら教えてちょうだい」
ミサトは相手が金田日になってしまったことで、たちまち興味をうしなった。
今回の戦いでの成果は局のところ、とりあえずの『猶予』が与えられた、ということだけだ。4体ものデミリアンを月にまで送り込んで、決着を引き延ばしになっただけなのだ。
また嫌みを言われるわね——
あの国連本部の会議場でお偉方に囲まれながら、言い訳に終始している自分を想像してミサトはうんざりした。
ポジティブにとらえれば、ひとは死んでないし、施設やデミリアンに損害はなかったのだから、なにかを咎められることはない。
ミサトはふーっとわざとらしく大きく嘆息してから言った。
「タケルくん、クララ、ユウキ、キラ、作戦終了よ。次回がいつになるかは亜獣次第ってとこだけど、とりあえずご苦労様」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
第一次世界大戦はウィルスが終わらせた・しかし第三次世界大戦はウィルスを終らせる為に始められた・bai/AI
パラレル・タイム
SF
この作品は創造論を元に30年前に『あすかあきお』さんの
コミック本とジョンタイターを初めとするタイムトラベラーや
シュタインズゲートとGATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて・斯く戦えり
アングロ・サクソン計画に影響されています
当時発行されたあすかあきおさんの作品を引っ張り出して再読すると『中国』が経済大国・
強大な軍事力を持つ超大国化や中東で
核戦争が始まる事は私の作品に大きな影響を与えましたが・一つだけ忘れていたのが
全世界に伝染病が蔓延して多くの方が無くなる部分を忘れていました
本編は反物質宇宙でアベが艦長を務める古代文明の戦闘艦アルディーンが
戦うだけでなく反物質人類の未来を切り開く話を再開しました
この話では主人公のアベが22世紀から21世紀にタイムトラベルした時に
分岐したパラレルワールドの話を『小説家になろう』で
『青い空とひまわりの花が咲く大地に生まれて』のタイトルで発表する準備に入っています
2023年2月24日第三話が書き上がり順次発表する予定です
話は2019年にウィルス2019が発生した
今の我々の世界に非常に近い世界です
物語は第四次世界大戦前夜の2038年からスタートします
後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜
黄舞
SF
「お前もういらないから」
大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。
彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。
「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」
「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」
個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。
「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」
現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。
私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。
その力、思う存分見せつけてあげるわ!!
VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。
つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。
嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。
現代兵器で異世界無双
wyvern
ファンタジー
サバゲ好き以外どこにでもいるようなサラリーマンの主人公は、
ある日気づけば見知らぬ森の中にいた。
その手にはLiSMと呼ばれるip〇d似の端末を持たされていた。
これはアサルトライフルや戦闘機に戦車や空母、果ては缶コーヒーまで召喚できてしまうチート端末だった。
森を出た主人公は見る風景、人、町をみて中近世のような異世界に転移させられと悟った。
そしてこちらの世界に来てから幾日か経った時、
主人公を転移させた張本人のコンダート王国女王に会い、
この国がデスニア帝国という強大な隣国に陸・海・空から同時に攻められ敗戦色濃厚ということを知る。
主人公は、自分が召喚されたのはLiSMで召喚した現代兵器を使ってこの国を救って欲しいからだと知り、
圧倒的不利なこの状況を現代兵器を駆使して立ち向かっていく!
そして軍事のみならず、社会インフラなどを現代と引けを取らない状態まで成長させ、
超大国となったコンダート王国はデスニア帝国に逆襲を始める
そしてせっかく異世界来たのでついでにハーレム(軍団)も作っちゃいます笑!
Twitterやってます→https://twitter.com/wyvern34765592
妹が憎たらしいのには訳がある
武者走走九郎or大橋むつお
SF
土曜日にお母さんに会うからな。
出勤前の玄関で、ついでのように親父が言った。
俺は親の離婚で別れた妹に四年ぶりに会うことになった……。
お母さんに連れられた妹は向日葵のような笑顔で座っていた。
座っていたんだけど……
〈完結〉世界を大きくひっくり返しかき回し、またお前に会えたとしても。
江戸川ばた散歩
SF
「婚約破棄を力技で破棄させた理由と結果。」の元ネタ話。
時代は遠未来。ただ生活は現代のそれとそう変わらない。所詮食べ物だの着るものなどはそう変わるものではないということで。
舞台は星間統一国家を作った「帝都政府」と、それぞれ属国的な独立惑星国家のあるところ。
「帝国」と「属国」と思ってもらえばいいです。
その中の一つ「アルク」で軍におけるクーデター未遂事件の犯人が公開処刑されたことを皮切りに話ははじまる。
視点は途中までは「アルク」にて、大統領の愛人につけられたテルミンのもの。彼がその愛人を世話し見ているうちに帝都政府の派遣員とも関係を持ったり、愛人の復讐に手を貸したり、という。
中盤は流刑惑星「ライ」にて、記憶を失った男、通称「BP」が収容所で仲間と生き残り、やがて蜂起して脱出するまでの話。
後半は元大統領の愛人が政府を乗っ取った状態を覆すために過去の記憶が曖昧な脱走者達が裏社会とも手を組んだりして色々ひっくり返す話。
その中で生き残って会いたいと思う二人は存在するんだけど、十年という長い時間と出来事は、それぞれの気持ちを地味に変化させて行くという。
そんで出てくる人々の大半が男性なんでBL+ブロマンス要素満載。
カテゴリに迷ったけど、この設定のゆるゆる感はSFではなくファンタジーだろってことでカテゴリとタイトルと構成と視点書き換えで再投稿。
……したはずなんですが、どうもこの中の人達、恋愛感情とかにばかり動かされてるよな、社会とかそれ以外の他人とか、ということでBLに更に変更。
適宜変えます(笑)。
初稿は25年近く昔のものです。
性描写がある章には※つきで。
アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)
愛山雄町
SF
ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め!
■■■
人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。
■■■
宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。
アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。
4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。
その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。
彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。
■■■
小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる