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第四章 第三節 Z.P.G.(25世紀のルール)

第988話 当面の危機は去った

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 できる——
 前回の半分のサイズしかない。中心部へ届かせるのは造作もないっつ。

 キュウィィィィィン

 耳鳴りがするような高周波の音が、振動となって伝わってくる。カウントダウンがはじまった証。
 キラはさらにもうすこしだけ腕を押し込んでから、背中のバーニアスラスタから超流動斥力波を、一気に噴出させた。

 亜獣の腹の部分がピカッと光ると、亜獣のからだがその光った部分にむかって、内部へ萎縮しながら吸い込まれていった。その中心には黒い煤のようなものをまとって、回転している黒い玉。砂や土をまいあげて、近くのものをあたりかまわず吸い込んでいく。
 が、黒い玉から稲妻が走ったかと思うと、なにもかもを飲みこんでいた力は消え、黒い玉はその場で霧消した。

 キラはユウキのセラ・マーズの隣に降りたつと言った。

「アルさん、ぜったいに次は仕留めますので、爆弾のほう、よろしくお願いいたしますね」

------------------------------------------------------------

 当面の危機は去った——

 カツライ・ミサトはとりあえずそう考えることにした。

 しかも今回の亜獣マガンジーを倒す方法の端緒をつかむこともできた。
 上出来だ——

「アル! キラのリクエスト! なんとかできるわよね」
 ミサトはアルが映るモニタ画面を正面から見すえた。威圧するつもりはなかったが、重圧から解放されたせいか、自分でもつよい口調だとわかった。
「いや、すまねぇが、カツライ司令。ちぃとばかり待ってくだせえよ」
「弱点はわかったのよ。それに対抗する方法もね」
「それはわかってます。だけど技術的なものが追いつくかどうかはまだ……」
「亜空間に亜獣の本体以外を送り込む爆弾を作ればいいだけでしょう」

「カツライ司令、それが難しいのですよ」
 アルより先に金田日が横から発言してきた。
「なぜならあの爆弾は、亜獣特有のマーカーを識別して、それに対して効力を発揮するという構造になっているからです」
「どーいうことよぉ」
「亜獣を識別するマーカーは『核』だけではなく、からだ全体から発せられています。そのなかから『核』以外を選別して爆発に巻込む、というのは相当に難易度が高いのです」
「じゃあ、どうすれば……」

「そのためにアルさんは時間が欲しい、と……」
「どれくらい?」
「それは次回の亜獣出現がいつになるかによります」
「そう、じゃあ、金田日博士、それが特定できたら教えてちょうだい」

 ミサトは相手が金田日になってしまったことで、たちまち興味をうしなった。
 
 今回の戦いでの成果は局のところ、とりあえずの『猶予』が与えられた、ということだけだ。4体ものデミリアンを月にまで送り込んで、決着を引き延ばしになっただけなのだ。

 また嫌みを言われるわね——

 あの国連本部の会議場でお偉方に囲まれながら、言い訳に終始している自分を想像してミサトはうんざりした。
 ポジティブにとらえれば、ひとは死んでないし、施設やデミリアンに損害はなかったのだから、なにかを咎められることはない。

 ミサトはふーっとわざとらしく大きく嘆息してから言った。

「タケルくん、クララ、ユウキ、キラ、作戦終了よ。次回がいつになるかは亜獣次第ってとこだけど、とりあえずご苦労様」
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