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第四章 第三節 Z.P.G.(25世紀のルール)
第981話 月基地が滅びない程度にがんばります
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「わかりましたわ。あたくしとユウキさんで月基地が滅びない程度にがんばります」
キラもリンの対応にカチンときたのだろう。やや辛口とも思える対応で返答してきた。
クララは司令部とパイロット間がこれ以上ぎくしゃくして欲しくないと感じた。
「本部、こちらはタケルさんとマガンジーをできるだけ解体してみます。なにか弱点や攻撃方法を見つけ出してください」
「ええ、そうね。クララ。お願いするわ」
リンの返事は安堵したような、ため息まじりだった。
クララは進行するマガンジーの前に、立ち塞がって待ち構えているヤマトに声をかけた。
「タケルさん、わたしは背後からムチをふるい続けてみます」
「了解だ。剣よりもリーチが長いから、リスクはすくないだろう」
クララはムチを一度しならせると、マガンジーの背後から力いっぱい打ちつけた。一撃で背中にあった背びれが数葉弾け飛んだ。だがその程度の成果など気にせず、クララはかまわず何度も何度もムチをふるった。
首から下が吹き飛び、胸が砕けて両腕ごと落ち、みぞおちあたりから上がすっかりなくなる。
だがマガンジーは前進をとめない。
亜獣とはいえ、腹から下だけが動いている姿は、すくなからずグロテスクにみえた。
まるでできのわるいホラー映画だわ。
クララは恐怖や驚愕という感情と、アドレナリンなどの脳内物質を制御するために、アカデミーで見せられたホラー映像を思いだした。クラスメイトから悲鳴めいたものが漏れたりしていたが、クララには陳腐なこけおどしにしか見えなかった。
今度はクララはマガンジーの足にムチをくれた。弱点は上半身にあると踏んで攻撃を集中させていたが、下半身だけになっても歩みをとめない、となると、まずは足を止めることが最優先なのはたしかだった。
だが、下半身は上半身ほど簡単ではなかった。足を切断するのにムチを10発近く叩き込まねばならなかったし、切断したあとの再生スピードは上半身の比ではなく、ものの10秒ほどで元に戻って、すぐに前進しはじめた。
「なんていう再生速度なの!」
「下半身に弱点があるからなのかもしれない」
「タケルさん。だとしたら下半身を剣でえぐってみてください。わたしは足をもう一度切断します」
そう言うなり亜獣の大腿部へ、背後からムチを叩き込んだ。同時にヤマトは正面から切りかかる。再生しはじめた上半身を横に切り落とし、さらにその下へと剣を移動させていくと、亜獣のからだが横にスライスされる。
スライス、スライス、スライス!
数メートル単位で徐々に下部にむかって、スライスされながらも、マガンジーはゆっくりと前へ進んでいく。
不気味ったらない——
亜獣はモンスターであるのは承知していたが、切り刻まれながらもしゃにむに前進していく姿は別物の化物で、悪夢にうなされそうな気がした。
キラもリンの対応にカチンときたのだろう。やや辛口とも思える対応で返答してきた。
クララは司令部とパイロット間がこれ以上ぎくしゃくして欲しくないと感じた。
「本部、こちらはタケルさんとマガンジーをできるだけ解体してみます。なにか弱点や攻撃方法を見つけ出してください」
「ええ、そうね。クララ。お願いするわ」
リンの返事は安堵したような、ため息まじりだった。
クララは進行するマガンジーの前に、立ち塞がって待ち構えているヤマトに声をかけた。
「タケルさん、わたしは背後からムチをふるい続けてみます」
「了解だ。剣よりもリーチが長いから、リスクはすくないだろう」
クララはムチを一度しならせると、マガンジーの背後から力いっぱい打ちつけた。一撃で背中にあった背びれが数葉弾け飛んだ。だがその程度の成果など気にせず、クララはかまわず何度も何度もムチをふるった。
首から下が吹き飛び、胸が砕けて両腕ごと落ち、みぞおちあたりから上がすっかりなくなる。
だがマガンジーは前進をとめない。
亜獣とはいえ、腹から下だけが動いている姿は、すくなからずグロテスクにみえた。
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クララは恐怖や驚愕という感情と、アドレナリンなどの脳内物質を制御するために、アカデミーで見せられたホラー映像を思いだした。クラスメイトから悲鳴めいたものが漏れたりしていたが、クララには陳腐なこけおどしにしか見えなかった。
今度はクララはマガンジーの足にムチをくれた。弱点は上半身にあると踏んで攻撃を集中させていたが、下半身だけになっても歩みをとめない、となると、まずは足を止めることが最優先なのはたしかだった。
だが、下半身は上半身ほど簡単ではなかった。足を切断するのにムチを10発近く叩き込まねばならなかったし、切断したあとの再生スピードは上半身の比ではなく、ものの10秒ほどで元に戻って、すぐに前進しはじめた。
「なんていう再生速度なの!」
「下半身に弱点があるからなのかもしれない」
「タケルさん。だとしたら下半身を剣でえぐってみてください。わたしは足をもう一度切断します」
そう言うなり亜獣の大腿部へ、背後からムチを叩き込んだ。同時にヤマトは正面から切りかかる。再生しはじめた上半身を横に切り落とし、さらにその下へと剣を移動させていくと、亜獣のからだが横にスライスされる。
スライス、スライス、スライス!
数メートル単位で徐々に下部にむかって、スライスされながらも、マガンジーはゆっくりと前へ進んでいく。
不気味ったらない——
亜獣はモンスターであるのは承知していたが、切り刻まれながらもしゃにむに前進していく姿は別物の化物で、悪夢にうなされそうな気がした。
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