981 / 1,035
第四章 第三節 Z.P.G.(25世紀のルール)
第980話 ちょっとぉ、こいつも陽動?
しおりを挟む
だが、マガンジーのからだは動いていた。
腕と頭をうしなっても前進するスピードをゆるめようともせず、核廃棄物が埋められているであろう場所にむかい続けていた。
「とまりませんわ! 首がとんだのに」
クララが叫ぶと、地球の司令部からミサトが失望を隠そうともせず言った。
『ちょっとぉ、こいつも陽動? 本体は別のところにいるってぇのぉ』
「いえ、そんなはずはありません。あれが本体です」
金田日がすぐさまミサトの意見を否定した。
「キラ君のときとおなじで、ああやって簡単にダメージを受けることで、攻撃を回避しようとしているんです。ほらみてください。すでにクララ君が斬り落した腕が再生しようとしています」
金田日がモニタ画面上で指し示した部分をみると、肩口から斬り落されていたはずの腕が、すこしづつ再生しているのがわかった。
「斬り落された腕が粒子状になって、元の場所に戻っているんです」
「爆縮爆弾を使うしかないですか?」
ヤマトが声をあげた。
「あ、いや。ヤマト君、やみくもに使ってもキラ君とおなじ結果になる。あれは見事な攻撃だったが、それでも亜獣の再生を許した。一粒も残さず消滅できないならやめたほうがいい」
「それは無理な話ですね。すでに月基地側に半分は移動しているし」
「こちら側のマガンジーと同時に消滅させる必要があるのかな」
モニタ画面を通じてユウキが打診してきた。
「ふ、そんな絶妙なタイミングを要する作戦、今思いつかれても困るわ」
春日リンがモニタ越しに鼻を鳴らす音が聞こえた。
「こっちは4体も月面へ送り出してるんだから、できるだけリスクは避けてちょうだい」
その口ぶりからリンが月面での作戦を歓迎していないことがわかった。
「リンさん、4体もいるんですから、なんとかしたいと思ってます。なにかほかに作戦、ありますか?」
「そうよ、クララお姉さまのおっしゃるとおりですわ。4人も雁首揃えて、指をくわえたまま、っていうのは勘弁してもらえないかしら。でないとあたくし……」
「ちょっとぉ、キラ。勝手な攻撃はやめてちょうだい! あなたは今、日本支部の指令下にあるのよ。今、はじめちゃんと作戦練ってるとこ。ちょっと待ちなさい」
「わかりましたわ。なる早でお願いいたします。それまで……」
「うまくあしらってってもらえるかしら」
リンがまたキラのことばをさえぎるように言った。
どうもリンはキラが苦手らしい。
距離感を探りあぐねていると言ったほうがいいだろうか。相手を褒めまくったり、尊敬の念をあらわにしての懐に入り込む、キラのスタイルが嫌いなのかもしれない。
腕と頭をうしなっても前進するスピードをゆるめようともせず、核廃棄物が埋められているであろう場所にむかい続けていた。
「とまりませんわ! 首がとんだのに」
クララが叫ぶと、地球の司令部からミサトが失望を隠そうともせず言った。
『ちょっとぉ、こいつも陽動? 本体は別のところにいるってぇのぉ』
「いえ、そんなはずはありません。あれが本体です」
金田日がすぐさまミサトの意見を否定した。
「キラ君のときとおなじで、ああやって簡単にダメージを受けることで、攻撃を回避しようとしているんです。ほらみてください。すでにクララ君が斬り落した腕が再生しようとしています」
金田日がモニタ画面上で指し示した部分をみると、肩口から斬り落されていたはずの腕が、すこしづつ再生しているのがわかった。
「斬り落された腕が粒子状になって、元の場所に戻っているんです」
「爆縮爆弾を使うしかないですか?」
ヤマトが声をあげた。
「あ、いや。ヤマト君、やみくもに使ってもキラ君とおなじ結果になる。あれは見事な攻撃だったが、それでも亜獣の再生を許した。一粒も残さず消滅できないならやめたほうがいい」
「それは無理な話ですね。すでに月基地側に半分は移動しているし」
「こちら側のマガンジーと同時に消滅させる必要があるのかな」
モニタ画面を通じてユウキが打診してきた。
「ふ、そんな絶妙なタイミングを要する作戦、今思いつかれても困るわ」
春日リンがモニタ越しに鼻を鳴らす音が聞こえた。
「こっちは4体も月面へ送り出してるんだから、できるだけリスクは避けてちょうだい」
その口ぶりからリンが月面での作戦を歓迎していないことがわかった。
「リンさん、4体もいるんですから、なんとかしたいと思ってます。なにかほかに作戦、ありますか?」
「そうよ、クララお姉さまのおっしゃるとおりですわ。4人も雁首揃えて、指をくわえたまま、っていうのは勘弁してもらえないかしら。でないとあたくし……」
「ちょっとぉ、キラ。勝手な攻撃はやめてちょうだい! あなたは今、日本支部の指令下にあるのよ。今、はじめちゃんと作戦練ってるとこ。ちょっと待ちなさい」
「わかりましたわ。なる早でお願いいたします。それまで……」
「うまくあしらってってもらえるかしら」
リンがまたキラのことばをさえぎるように言った。
どうもリンはキラが苦手らしい。
距離感を探りあぐねていると言ったほうがいいだろうか。相手を褒めまくったり、尊敬の念をあらわにしての懐に入り込む、キラのスタイルが嫌いなのかもしれない。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
グラッジブレイカー! ~ポンコツアンドロイド、時々かたゆでたまご~
尾野 灯
SF
人類がアインシュタインをペテンにかける方法を知ってから数世紀、地球から一番近い恒星への進出により、新しい時代が幕を開ける……はずだった。
だが、無謀な計画が生み出したのは、数千万の棄民と植民星系の独立戦争だった。
ケンタウリ星系の独立戦争が敗北に終ってから十三年、荒廃したコロニーケンタウルスⅢを根城に、それでもしぶとく生き残った人間たち。
そんな彼らの一人、かつてのエースパイロットケント・マツオカは、ひょんなことから手に入れた、高性能だがポンコツな相棒AIノエルと共に、今日も借金返済のためにコツコツと働いていた。
そんな彼らのもとに、かつての上官から旧ケンタウリ星系軍の秘密兵器の奪還を依頼される。高額な報酬に釣られ、仕事を受けたケントだったが……。
懐かしくて一周回って新しいかもしれない、スペースオペラ第一弾!
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。
コレクターガールの憂鬱な日常
MOKO
SF
女子高生の立川遥香は、ある日
全宇宙指名手配中の凶悪宇宙人トレモロと
宇宙警察との争いに巻き込まれ
宇宙人トレモロに寄生され
その日を境に遥香の日常生活は激変する。
妙な宇宙人に絡まれるわ
宇宙警察に目をつけられるわ
目立たず騒がず静かに背景と同化し
地味に過ごしまったり送るはずの
女子高生ライフが一変…。
トレモロの体を取り戻すし
健全な身体を取り戻すために
遥香は立ち上がる。
このお話は遥香とトレモロの非常識な日常です。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる