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第四章 第三節 Z.P.G.(25世紀のルール)
第974話 亜獣は廃炉でなにをするつもり
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核融合炉——
クララは自分のなかに不安が込み上げてくるのを感じていた。
核融合炉という旧時代の遺物のことももっともだったが、一番はヤマト・タケルがその事実を知らなかったことだ。
デミリアンに関することではないからしかたがない。
こころのなかでそう断じても、どうして亜獣がそんな場所へ向っているのか、を想像すると、獏とした不安は拭いきれない。
「金田日博士」
クララは思い切って声をあげた。
「亜獣は廃炉でなにをするつもりでしょうか? 確信がなくてもいいですから、博士の見解を教えてください」
正面のモニタ画面に金田日が映し出された。
「クララくん、了解した。確信はないが、いままでの経緯からの推論させてもらう」
彼は一度咳払いをしてから続けた。
「わたしには亜獣がエネルギーを狙っているのではないかと思っている。火星でも酸素生成装置を破壊しようとした。核施設に比べるとたいしたエネルギーとは言えないが、それでも火星域では、一番のエネルギー発生源だったのはたしかだ」
「エネルギーというより熱や音に引寄せられている可能性は?」
「うむ、その可能性もあるだろう。だが今むかっている核融合炉はすでに操業を停止して、200年近い。熱源も音も発していないはずだ。そうなると純粋に高次元のエネルギーがそこにあるから、ではないか、と推察せざるを得ない」
「では、亜獣マガンジーは、そのエネルギーを使ってなにをするつもりなんでしょう?」
「それはわからない。現時点では月の裏側に放棄された核廃棄物の状態も量も不明だ。ただマガンジーはそれらのエネルギーを利用することができる亜獣である可能性が高い、とういうことだ」
「あいつは高次元エネルギーを吸収して、自分を進化もしくは強化することができる特性をもっている亜獣だ、とぼくは思っている」
ヤマトが言った。
「火星でキラがあいつをバラバラにしたにもかかわらず復活したのは、もしかしたらあの酸素生成装置から放出されていたエネルギーを吸収したせいかもしれない」
「お兄さま」
画面にキラ・ヤマトが割り込んできた。
「あの施設から排出されていたエネルギーなんて、たかがしれたものですわ。しかもあたくしはあっと言う間に倒しました。ほとんど近づいてなんていやしませんわ」
「ああ、キラ。おまえの言う通りだ。だが、そんな短い時間、離れた距離であっても、あの爆縮攻撃から復活したとしたら……」
「ちょっと待ってくれないか、タケル君」
慌てたように声をあげたのはユウキだった。
「そこには核廃棄物がある可能性があるのだろう。ウランやプルトニウムのような。そのエネルギーは酸素生成装置なんかと比較にならないほどおおきいのではないか」
「ああ、桁違いにね」
そう呟いた瞬間、金田日が大声をあげた。
「マガンジーが巨大化してる!」
クララは自分のなかに不安が込み上げてくるのを感じていた。
核融合炉という旧時代の遺物のことももっともだったが、一番はヤマト・タケルがその事実を知らなかったことだ。
デミリアンに関することではないからしかたがない。
こころのなかでそう断じても、どうして亜獣がそんな場所へ向っているのか、を想像すると、獏とした不安は拭いきれない。
「金田日博士」
クララは思い切って声をあげた。
「亜獣は廃炉でなにをするつもりでしょうか? 確信がなくてもいいですから、博士の見解を教えてください」
正面のモニタ画面に金田日が映し出された。
「クララくん、了解した。確信はないが、いままでの経緯からの推論させてもらう」
彼は一度咳払いをしてから続けた。
「わたしには亜獣がエネルギーを狙っているのではないかと思っている。火星でも酸素生成装置を破壊しようとした。核施設に比べるとたいしたエネルギーとは言えないが、それでも火星域では、一番のエネルギー発生源だったのはたしかだ」
「エネルギーというより熱や音に引寄せられている可能性は?」
「うむ、その可能性もあるだろう。だが今むかっている核融合炉はすでに操業を停止して、200年近い。熱源も音も発していないはずだ。そうなると純粋に高次元のエネルギーがそこにあるから、ではないか、と推察せざるを得ない」
「では、亜獣マガンジーは、そのエネルギーを使ってなにをするつもりなんでしょう?」
「それはわからない。現時点では月の裏側に放棄された核廃棄物の状態も量も不明だ。ただマガンジーはそれらのエネルギーを利用することができる亜獣である可能性が高い、とういうことだ」
「あいつは高次元エネルギーを吸収して、自分を進化もしくは強化することができる特性をもっている亜獣だ、とぼくは思っている」
ヤマトが言った。
「火星でキラがあいつをバラバラにしたにもかかわらず復活したのは、もしかしたらあの酸素生成装置から放出されていたエネルギーを吸収したせいかもしれない」
「お兄さま」
画面にキラ・ヤマトが割り込んできた。
「あの施設から排出されていたエネルギーなんて、たかがしれたものですわ。しかもあたくしはあっと言う間に倒しました。ほとんど近づいてなんていやしませんわ」
「ああ、キラ。おまえの言う通りだ。だが、そんな短い時間、離れた距離であっても、あの爆縮攻撃から復活したとしたら……」
「ちょっと待ってくれないか、タケル君」
慌てたように声をあげたのはユウキだった。
「そこには核廃棄物がある可能性があるのだろう。ウランやプルトニウムのような。そのエネルギーは酸素生成装置なんかと比較にならないほどおおきいのではないか」
「ああ、桁違いにね」
そう呟いた瞬間、金田日が大声をあげた。
「マガンジーが巨大化してる!」
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