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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第944話 レイぃぃぃぃ。渡しなさいぃぃぃ
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ヤタの肩口に配置されている排気口から、ぶおっという排気音がした。
「ヤマト・タケル、もう終わりだ。ドラゴンズ・ボールを渡してもらおう」
その口調にはすくなくとも初対面のときのような穏やかさはなかった。怒りに滾っているのが、いやおうなく伝わってくるような迫力に満ちていた。
「そうはいかない」
「そういうと思いましたよ」
そう言うやいなや、鍵爪をヤマトの首元を狙って繰り出してきた。ヤマトは手をつきだして、その攻撃をよけようとした。が、直撃されれば首がへし折れただろう一撃の、衝撃をやわらげるのが精いっぱいだった。
「さあ、渡せ!」
ヤタがヤマトの首を締め上げる。
「みんな、動くな」
ヤマトが叫んだ。声帯のない素体で助かったと思った。
「この距離だと近すぎて、だれがボールを持っているかわからないらしい」
「はん、なるほどね。そこまでの精度はないってことね」
「タケルくん、だがそのままではキミが潰される」
「ユウキ、潰されたら別の素体に入れ替わるだけさ。ヤタの脅しは無意味さ」
ヤマトはユウキの心配に、ブラフをまぜて答えた。
この素体を潰されたら、次がないことをヤタに気取られるわけにはいかない。
ヤタがまわりにいるパイロットたちを見回した。だれがドラゴンズ・ボールを持っているのか探っているようだった。
「動かないのなら、それでいいですよ。動かしてみせますから」
ヤタは腕ヤマトを掴んでいた腕をブンとふると、アスカとレイがいる方角へ投げつけた。ヤマトのからだがふたりにぶつかって、ふたりをなぎ倒した。
「そっちですか!」
ヤタはユウキとクララがいる方角へ鍵爪を伸ばした。が、ユウキが前に飛び出して、鍵爪の盾になった。ユウキのからだが座席5つ分ほどむこうへはじき飛ばされた。
「クララぁぁぁ、あなたですねぇぇ」
確信をもった足取りで、ヤタがクララのほうへ足を踏み出した。
が、ユウキが身をていして、稼いだ時間をクララは無駄にしなかった。クララはすばやくからだをひねると、ドラゴンズ・ボールをヤタの足元をすり抜けるような角度で転がした。反対側にいるヤマトたちのほうへボールがころころと床を転がっていく。
小回りがきかないヤタの素体では、そのボールを補足しながらも、反応できないようだった。からだをあわてて反転させたが、すでにボールはヤマトが拾いあげていた。
ヤマトはそのままヤタがあけた最後尾の穴にむかって、駆けだそうとしたがレイにとめられた。
「タケル、伏せて!」
とっさにヤマトはからだをかがめた。そしてすかさずレイの方角へボールを転がした。
その瞬間、渾身の力で振り回されたヤタの鍵爪が、自分の頭上を通り抜けていった。
そのまま駆け出していたら、ヤタの鍵爪の餌食になったのはまちがいなかった。
「レイぃぃぃぃ。渡しなさいぃぃぃ」
ヤタがレイをロック・オンしていた。
レイはヤタが大穴をあけた列車の最後尾の一番近くに立っていた。このまま穴にむかってドラゴンズ・ボールを投げ出せれば、それで任務完了だった。
が、修復液が思ったよりも速く穴を塞いでいて、サッカーボール大にまで縮まっていた。いくらレイでもそこからボールを通して、外へ放りだすのは無理というものだった。
「レイ! ボールを離すな!」
ヤマトは叫んだ。
その声と同時にヤタがレイに飛びかかった。
が、レイの姿が、瞬時にヤマトの姿に入れ替わった。
レイはヤマトがいた場所にいた。
「ヤマト・タケル、もう終わりだ。ドラゴンズ・ボールを渡してもらおう」
その口調にはすくなくとも初対面のときのような穏やかさはなかった。怒りに滾っているのが、いやおうなく伝わってくるような迫力に満ちていた。
「そうはいかない」
「そういうと思いましたよ」
そう言うやいなや、鍵爪をヤマトの首元を狙って繰り出してきた。ヤマトは手をつきだして、その攻撃をよけようとした。が、直撃されれば首がへし折れただろう一撃の、衝撃をやわらげるのが精いっぱいだった。
「さあ、渡せ!」
ヤタがヤマトの首を締め上げる。
「みんな、動くな」
ヤマトが叫んだ。声帯のない素体で助かったと思った。
「この距離だと近すぎて、だれがボールを持っているかわからないらしい」
「はん、なるほどね。そこまでの精度はないってことね」
「タケルくん、だがそのままではキミが潰される」
「ユウキ、潰されたら別の素体に入れ替わるだけさ。ヤタの脅しは無意味さ」
ヤマトはユウキの心配に、ブラフをまぜて答えた。
この素体を潰されたら、次がないことをヤタに気取られるわけにはいかない。
ヤタがまわりにいるパイロットたちを見回した。だれがドラゴンズ・ボールを持っているのか探っているようだった。
「動かないのなら、それでいいですよ。動かしてみせますから」
ヤタは腕ヤマトを掴んでいた腕をブンとふると、アスカとレイがいる方角へ投げつけた。ヤマトのからだがふたりにぶつかって、ふたりをなぎ倒した。
「そっちですか!」
ヤタはユウキとクララがいる方角へ鍵爪を伸ばした。が、ユウキが前に飛び出して、鍵爪の盾になった。ユウキのからだが座席5つ分ほどむこうへはじき飛ばされた。
「クララぁぁぁ、あなたですねぇぇ」
確信をもった足取りで、ヤタがクララのほうへ足を踏み出した。
が、ユウキが身をていして、稼いだ時間をクララは無駄にしなかった。クララはすばやくからだをひねると、ドラゴンズ・ボールをヤタの足元をすり抜けるような角度で転がした。反対側にいるヤマトたちのほうへボールがころころと床を転がっていく。
小回りがきかないヤタの素体では、そのボールを補足しながらも、反応できないようだった。からだをあわてて反転させたが、すでにボールはヤマトが拾いあげていた。
ヤマトはそのままヤタがあけた最後尾の穴にむかって、駆けだそうとしたがレイにとめられた。
「タケル、伏せて!」
とっさにヤマトはからだをかがめた。そしてすかさずレイの方角へボールを転がした。
その瞬間、渾身の力で振り回されたヤタの鍵爪が、自分の頭上を通り抜けていった。
そのまま駆け出していたら、ヤタの鍵爪の餌食になったのはまちがいなかった。
「レイぃぃぃぃ。渡しなさいぃぃぃ」
ヤタがレイをロック・オンしていた。
レイはヤタが大穴をあけた列車の最後尾の一番近くに立っていた。このまま穴にむかってドラゴンズ・ボールを投げ出せれば、それで任務完了だった。
が、修復液が思ったよりも速く穴を塞いでいて、サッカーボール大にまで縮まっていた。いくらレイでもそこからボールを通して、外へ放りだすのは無理というものだった。
「レイ! ボールを離すな!」
ヤマトは叫んだ。
その声と同時にヤタがレイに飛びかかった。
が、レイの姿が、瞬時にヤマトの姿に入れ替わった。
レイはヤマトがいた場所にいた。
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