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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第937話 クララ、反省する
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クララは電磁誘導パルスレーン上を走る列車のなかで、すっかりしょげ返っていた。ヤマトとレイと入れ替わる形になり、豪華客船での短い旅からは解放されたが、船内のショッピング・モールでの失態をいまだ引きずっていた。
「クララくん、きみはけっして失敗したわけではない。あの局面ではベストの選択をしたのだ。なによりドラゴンズ・ボールを敵に奪われなかった」
一緒に列車内に移動してきたユウキは、なんどもそう言って慰めてくれていたが、クララのこころは晴れなかった。
「選択肢はいっぱいあったのですよ。ですがよりにもよって、わたしは狭い店内に飛び込んでしまった。たまたま鋼の数倍という生地のドレスがあったから撃退できましたし、レイさんが加勢にきてくれたのが見えたから、大胆な撃退法を行使することができただけです」
「だが、通路内を走って逃げたところで、エア・バイクに追いつかれていただろうし、武器もなかったのだから攻撃もできなかった」
「ええ。ですが、あの店舗のすぐ脇に従業員用の狭い通用口があったのです。けっしてバイクじゃ通り抜けられないようなね。レイさんはそこから、あのフロアにきてたんです」
「あとからわかっただけだろう。あの時点ではその存在には気づかなかった……」
「そうです。もっと注意深くあたりを探っていればと、悔やまれてなりません」
そのとき、頭のなかにセイントの声が飛び込んできた。
「クララくん、ユウキくん、反省会はそろそろお開きにしてくれ。そろそろヤマトくんたちのエア・バイクがこの列車に追いつく。最後尾の窓に穴は開けてくれたかな?」
「もちろんだとも、セイント。このグラスカッターで穴の切り込みを入れてある。衝撃を加えれば、簡単に穴があくはずだ」
「いいだろう。キミタチは列車が『電磁バリアトンネル』に突入するまでに、ヤマトくんからボールを受け取ってもらわねばならない」
「『電磁バリアトンネル』? それはなんですの?」
「ああ、クララくん。説明してなかったね。このエトナ山の真上にはこの列車専用の電磁誘導パルスレーンが通ってて、それ以外の車両やバイクは侵入不可能になっているんだ」
「電磁誘導パルスレーンを使わなければいいのではないですか?」
「それがそうはいかないのだ。不慮の事故等を想定して、火山の周囲には強烈な電磁バリアが張り巡らされていて侵入をゆるさない」
「この列車には影響ないのですか?」
「そこで『電磁バリアトンネル』が設定されているのだ。列車だけはこのトンネルを通り抜けられるが、出入り口が開閉式になっているので、それ以外の乗り物はこのトンネルに侵入することはできない」
「ということは、そのトンネルに列車が侵入するまでに、ドラゴンズ・ボールを我々が受け取らなければならないということなのだね」
ユウキがセイントに確認する。
「ああ、しくじれば永遠にドラゴンズ・ボールの消滅の機会をうしなうだろうね」
「永遠に? 大袈裟じゃありませんの? 再度チャレンジすればいいだけでは?」
「クララくん、それは難しいだろうね。ワレワレの意図がわかった以上、ダイ・ラッキーがそれを許さないだろうし……」
セイントが目のなかに映像を強制的に投影しながら言った。
そこには二人乗りで街中を縫うようにして、エア・バイクを飛ばしているヤマトとアスカ、そのうしろを援護するように飛ぶレイの姿があった。
そして三人に迫っている、数十台のエア・バイクの群れがあった。
「なによりヤタがその機会を与えてくれるとは到底思えない」
「クララくん、きみはけっして失敗したわけではない。あの局面ではベストの選択をしたのだ。なによりドラゴンズ・ボールを敵に奪われなかった」
一緒に列車内に移動してきたユウキは、なんどもそう言って慰めてくれていたが、クララのこころは晴れなかった。
「選択肢はいっぱいあったのですよ。ですがよりにもよって、わたしは狭い店内に飛び込んでしまった。たまたま鋼の数倍という生地のドレスがあったから撃退できましたし、レイさんが加勢にきてくれたのが見えたから、大胆な撃退法を行使することができただけです」
「だが、通路内を走って逃げたところで、エア・バイクに追いつかれていただろうし、武器もなかったのだから攻撃もできなかった」
「ええ。ですが、あの店舗のすぐ脇に従業員用の狭い通用口があったのです。けっしてバイクじゃ通り抜けられないようなね。レイさんはそこから、あのフロアにきてたんです」
「あとからわかっただけだろう。あの時点ではその存在には気づかなかった……」
「そうです。もっと注意深くあたりを探っていればと、悔やまれてなりません」
そのとき、頭のなかにセイントの声が飛び込んできた。
「クララくん、ユウキくん、反省会はそろそろお開きにしてくれ。そろそろヤマトくんたちのエア・バイクがこの列車に追いつく。最後尾の窓に穴は開けてくれたかな?」
「もちろんだとも、セイント。このグラスカッターで穴の切り込みを入れてある。衝撃を加えれば、簡単に穴があくはずだ」
「いいだろう。キミタチは列車が『電磁バリアトンネル』に突入するまでに、ヤマトくんからボールを受け取ってもらわねばならない」
「『電磁バリアトンネル』? それはなんですの?」
「ああ、クララくん。説明してなかったね。このエトナ山の真上にはこの列車専用の電磁誘導パルスレーンが通ってて、それ以外の車両やバイクは侵入不可能になっているんだ」
「電磁誘導パルスレーンを使わなければいいのではないですか?」
「それがそうはいかないのだ。不慮の事故等を想定して、火山の周囲には強烈な電磁バリアが張り巡らされていて侵入をゆるさない」
「この列車には影響ないのですか?」
「そこで『電磁バリアトンネル』が設定されているのだ。列車だけはこのトンネルを通り抜けられるが、出入り口が開閉式になっているので、それ以外の乗り物はこのトンネルに侵入することはできない」
「ということは、そのトンネルに列車が侵入するまでに、ドラゴンズ・ボールを我々が受け取らなければならないということなのだね」
ユウキがセイントに確認する。
「ああ、しくじれば永遠にドラゴンズ・ボールの消滅の機会をうしなうだろうね」
「永遠に? 大袈裟じゃありませんの? 再度チャレンジすればいいだけでは?」
「クララくん、それは難しいだろうね。ワレワレの意図がわかった以上、ダイ・ラッキーがそれを許さないだろうし……」
セイントが目のなかに映像を強制的に投影しながら言った。
そこには二人乗りで街中を縫うようにして、エア・バイクを飛ばしているヤマトとアスカ、そのうしろを援護するように飛ぶレイの姿があった。
そして三人に迫っている、数十台のエア・バイクの群れがあった。
「なによりヤタがその機会を与えてくれるとは到底思えない」
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