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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第936話 あの虫は陸までたどり着くかな
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「よく軍用のエア・バイクを調達できたわね」
アスカがヤマトの背中にしがみついたまま尋ねた。
「レイのおかげさ。ヤタが軍用エア・バイクをあらかじめ用意してたのなら、一台だけなはずはないって言ってね。そしたら上空に伏兵として、三台の軍用バイクを潜ませていたことがわかった」
「で、セイントがそれをハッキングしたっていうわけ?」
「ああ、それまでレイにさんざん煽られてたからね。彼も面子にかけて、あっという間に素体を乗っ取ってくれたよ」
「さすがレイ。だんだん底意地がわるくなってる」
アスカが空を見あげながら言った。
ヤマトもつられるように空をみあげると、晴れ渡った地中海の空を大型のゴキブリが群れになって飛んで行くのが見えた。
「あの虫は陸までたどり着くかな」
「知らないけどたぶん無理ね。でもしぶといから簡単には死なないでしょ」
「そんなモンかな」
「そうであって欲しいわね。あんな姿かたちしてるけど、あれでも高級食材らしいから」
「おいしそうには見えないけどね」
「タケル、このままバイクでエトナ火山までいくの?」
背後を警護するようについてきていたレイが訊いてきた。
「いや、火山のまわりは一般車両は近づけないよう強固なバリアで囲まれているし、電磁誘導パルスレーンは、一般用も軍事用も火山の上を通ってないんだ」
「じゃあ、山を下から登るの?」
「そんな時間のかかるマネはしない。観光列車を使うのさ。さっきまでぼくらが乗っていた列車だ」
「ああ……」
「エトナ山の真上には観光用の電磁誘導パルスレーンだけは通っていて、そこは観光用の列車の通過だけが許可されているんだ。ドラゴンズ・ボールを火口に投げ込むためには、これしか方法がない」
「じゃあ、わたしたちまた待ち伏せされるじゃないの」
「だから、目的地をダイ・ラッキーたちに悟られないよう、いろいろ回り道していたっていうわけなんだ」
「回り道しすぎだと思う」
レイがぼそりとヤマトに不満をもらした。
「ん、まぁ、不測の事態もたぶんにあったのはたしかだ。だが、ここが最終局面だ。ここで奪い返されるわけにはいかない」
「ところで、ユウキとクララは?」
「ぼくらと入れ替えで、今、その観光列車に乗ってる」
「どうやって、このボールを渡すつもり?」
「侵入禁止エリアの手前で、ユウキたちの列車にボールを放り込む」
「放り込む? ずいぶん荒っぽいわね。お兄ちゃんの形見なのよ、もっと慎重に扱いなさいよ」
「できればそうするさ。でも進入禁止エリアを越えると、強烈な電磁バリアの餌食になる」
「どうなるのよぉ」
「アスカ、すべての動力を無効にされるわ」
真横に滑るように近づいてきてレイが言った。
「素体も、エア・バイクも、なにもかもが一切の動きを停止されるの」
「ああ、そうなったら、ぼくらのできるのは……」
「ただ山の中腹に落下するだけだ」
アスカがヤマトの背中にしがみついたまま尋ねた。
「レイのおかげさ。ヤタが軍用エア・バイクをあらかじめ用意してたのなら、一台だけなはずはないって言ってね。そしたら上空に伏兵として、三台の軍用バイクを潜ませていたことがわかった」
「で、セイントがそれをハッキングしたっていうわけ?」
「ああ、それまでレイにさんざん煽られてたからね。彼も面子にかけて、あっという間に素体を乗っ取ってくれたよ」
「さすがレイ。だんだん底意地がわるくなってる」
アスカが空を見あげながら言った。
ヤマトもつられるように空をみあげると、晴れ渡った地中海の空を大型のゴキブリが群れになって飛んで行くのが見えた。
「あの虫は陸までたどり着くかな」
「知らないけどたぶん無理ね。でもしぶといから簡単には死なないでしょ」
「そんなモンかな」
「そうであって欲しいわね。あんな姿かたちしてるけど、あれでも高級食材らしいから」
「おいしそうには見えないけどね」
「タケル、このままバイクでエトナ火山までいくの?」
背後を警護するようについてきていたレイが訊いてきた。
「いや、火山のまわりは一般車両は近づけないよう強固なバリアで囲まれているし、電磁誘導パルスレーンは、一般用も軍事用も火山の上を通ってないんだ」
「じゃあ、山を下から登るの?」
「そんな時間のかかるマネはしない。観光列車を使うのさ。さっきまでぼくらが乗っていた列車だ」
「ああ……」
「エトナ山の真上には観光用の電磁誘導パルスレーンだけは通っていて、そこは観光用の列車の通過だけが許可されているんだ。ドラゴンズ・ボールを火口に投げ込むためには、これしか方法がない」
「じゃあ、わたしたちまた待ち伏せされるじゃないの」
「だから、目的地をダイ・ラッキーたちに悟られないよう、いろいろ回り道していたっていうわけなんだ」
「回り道しすぎだと思う」
レイがぼそりとヤマトに不満をもらした。
「ん、まぁ、不測の事態もたぶんにあったのはたしかだ。だが、ここが最終局面だ。ここで奪い返されるわけにはいかない」
「ところで、ユウキとクララは?」
「ぼくらと入れ替えで、今、その観光列車に乗ってる」
「どうやって、このボールを渡すつもり?」
「侵入禁止エリアの手前で、ユウキたちの列車にボールを放り込む」
「放り込む? ずいぶん荒っぽいわね。お兄ちゃんの形見なのよ、もっと慎重に扱いなさいよ」
「できればそうするさ。でも進入禁止エリアを越えると、強烈な電磁バリアの餌食になる」
「どうなるのよぉ」
「アスカ、すべての動力を無効にされるわ」
真横に滑るように近づいてきてレイが言った。
「素体も、エア・バイクも、なにもかもが一切の動きを停止されるの」
「ああ、そうなったら、ぼくらのできるのは……」
「ただ山の中腹に落下するだけだ」
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