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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第925話 バイクで追いつかれるのは間違いない
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クララはどこかの店内に潜り込むか、エア・バイクでは入ってこれない狭い路地に逃げ込むか、選択肢を迫られた。
通路を走って逃げる、ということは、端から考えなかった。バイクで追いつかれるのは間違いなかった。
クララはすぐ近くのブティックのドアを押すと、勢い良く店内へ飛び込んだ。
「この店に裏口はある?」
どこに店員がいるかもかまわず叫んだ。
返事はない。
店内にはマネキンロボットが、ファッションモデルのような動きをしながら、ゆったりと歩いている一体いるだけだった。ロボットはいたるところに穴があいたデザインのドレスを、これ見よがしにアピールしている。
「だれか!」
クララはもう一度叫んだ。
「いらっしゃいませ」
すぐ真横から声がした。
クララは驚きのあまり、そこから飛び退いた。
そこにはにこやなか笑顔をした女性店員のロボットがいた。
「驚かせてしまって申し訳ありません。船内で事故があったらしく、そちらの対応の指示を受けておりましたもので……」
「いいから、裏口を教えて!」
「お客様、それは一般の方には……」
「店を壊されてもいいの?」
クララはなかばヒステリックにまくしたてた。
「壊される?」
ロボットが笑顔を顔に貼りつけたまま、首をかしげた瞬間、ショーウィンドウが打ち砕かれて、弾丸が店内に撃ち込まれてきた。
クララはすばやくマネキンロボットの陰にからだを滑り込ませたが、よけきれず数発をくらってしまっていた。動作には問題なさそうだったが、頭にくらった弾丸のせいで、片側の視界がすこし不安定にぶれていた。
クララは店員ロボットのほうへ目をやったが、彼女は頭をモロに撃ち抜かれて、笑顔ごと消し飛んでいた。
そのすぐ上をエア・バイクが通り抜けていく。
自分との距離は数メートルもない。
マネキンロボットの陰に隠れているとはいえ、この狭い店内では見つからないでいるということはありえなかった。
いちかばちか裏口目指して突進してみる?
もし裏口なんかなかったら? 鍵がかかっていたら?
だったら割れたショーウィンドウから、外へ逃げる?
どこへ?
この窮地を脱する方法に頭を巡らせたが、ベストどころか、ベターな答えさえ、浮かばなかった。
クララはマネキンロボットの服を掴みながら、ゆっくりと中腰の体勢をとって、ショーウィンドウにもう一度目をやった。
『お客様、この服が気になられましたか?』
信じられないことに、マネキンロボットがこちらへ顔をむけ、突然語りかけてきた。
しまった——
通路を走って逃げる、ということは、端から考えなかった。バイクで追いつかれるのは間違いなかった。
クララはすぐ近くのブティックのドアを押すと、勢い良く店内へ飛び込んだ。
「この店に裏口はある?」
どこに店員がいるかもかまわず叫んだ。
返事はない。
店内にはマネキンロボットが、ファッションモデルのような動きをしながら、ゆったりと歩いている一体いるだけだった。ロボットはいたるところに穴があいたデザインのドレスを、これ見よがしにアピールしている。
「だれか!」
クララはもう一度叫んだ。
「いらっしゃいませ」
すぐ真横から声がした。
クララは驚きのあまり、そこから飛び退いた。
そこにはにこやなか笑顔をした女性店員のロボットがいた。
「驚かせてしまって申し訳ありません。船内で事故があったらしく、そちらの対応の指示を受けておりましたもので……」
「いいから、裏口を教えて!」
「お客様、それは一般の方には……」
「店を壊されてもいいの?」
クララはなかばヒステリックにまくしたてた。
「壊される?」
ロボットが笑顔を顔に貼りつけたまま、首をかしげた瞬間、ショーウィンドウが打ち砕かれて、弾丸が店内に撃ち込まれてきた。
クララはすばやくマネキンロボットの陰にからだを滑り込ませたが、よけきれず数発をくらってしまっていた。動作には問題なさそうだったが、頭にくらった弾丸のせいで、片側の視界がすこし不安定にぶれていた。
クララは店員ロボットのほうへ目をやったが、彼女は頭をモロに撃ち抜かれて、笑顔ごと消し飛んでいた。
そのすぐ上をエア・バイクが通り抜けていく。
自分との距離は数メートルもない。
マネキンロボットの陰に隠れているとはいえ、この狭い店内では見つからないでいるということはありえなかった。
いちかばちか裏口目指して突進してみる?
もし裏口なんかなかったら? 鍵がかかっていたら?
だったら割れたショーウィンドウから、外へ逃げる?
どこへ?
この窮地を脱する方法に頭を巡らせたが、ベストどころか、ベターな答えさえ、浮かばなかった。
クララはマネキンロボットの服を掴みながら、ゆっくりと中腰の体勢をとって、ショーウィンドウにもう一度目をやった。
『お客様、この服が気になられましたか?』
信じられないことに、マネキンロボットがこちらへ顔をむけ、突然語りかけてきた。
しまった——
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