上 下
923 / 1,035
第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い

第921話 タケル、あんたはまったくの別人なのよね

しおりを挟む
「みんな、そろそろユウキがこの船に追いつきそうだ」

 ヤマトが落ちついた声で言った。
 アスカはヤマトの顔をまじまじと見てから言った。

「はー、タケル。あんたはまったくの別人なのよね。その顔覚えるの、苦労しそうだわ」
「そうですわね。なんの特徴もない、ただのイケメンですから……」
「わたしはもう覚えた。人ごみに紛れても、見つけ出す自信がある」

「レイ、そう言ってもらえると心強いよ。ぼくの顔はどうアレンジを加えても、気づかれるっていうことだからね」
 ヤマトがすこしうんざりして口調で言うと、セイントが皮肉交じりに言ってきた。
『きみの顔に似ているだけで、ののしられたり、暴行を受けたりするって事例があるからね。こちらも身バレのリスクを避けたいのさ』

「わかってはいるけど、あまりいい気分な話じゃないな。だけど仕方がない。みんなぼくのあたらしいこの顔を覚えておいてくれよ」

 カジノから移動して、甲板にでると、遠くに陸地がみえた。
「あれって、シチリア島でしょう。けっこう遠いンじゃない?」
 アスカが手でひさしをつくりながら言うと、クララが心配げに呟いた。
「あの距離、ユウキさんはつかまらずにここまでこれますの?」
「途中で捕まりそうになったら、海の底に沈めればいい」

「レイ、話はそう簡単じゃない。ダイ・ラッキーはこの程度の深度なら、サルベージするよ。そうなると、ぼくらがドラゴンズ・ボールを奪取するチャンスは永遠に失われるだろう。だけど……」

「心配しなくても、ユウキは間に合いそうだ」

 そう言いながら、ヤマトはかなたを指さした。
 そこには陽炎かげろうにゆらめくエア・バイクの車影らしきものがあった。まだ陽の光を反射する、ただの点でしかなかったが、背後におなじような点を10ほど従えているので、ユウキで間違いないはずだ。
「やだ、敵の数、けっこう多いじゃない」
「タケル。ユウキを援護したい。なにか武器はないの?」
 アスカとレイがほぼ同時に、自分の言いたいことを口にした。

「レイ、武器はない。ここは豪華客船で、ぼくらはその乗務員だ。武器なんか持っているはずだがない」
「タケルさん、ユウキさんが到着したらどうするつもりです?」
「簡単なことだ、クララ。ドラゴンズ・ボールを受け取る。そしたら、みんなバラバラにわかれて逃げる」

「逃げる? タケル、それだけ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冬に鳴く蝉

橋本洋一
SF
時は幕末。東北地方の小さな藩、天道藩の下級武士である青葉蝶次郎は怠惰な生活を送っていた。上司に叱責されながらも自分の現状を変えようとしなかった。そんなある日、酒場からの帰り道で閃光と共に現れた女性、瀬美と出会う。彼女はロボットで青葉蝶次郎を守るために六百四十年後の未来からやってきたと言う。蝶次郎は自身を守るため、彼女と一緒に暮らすことを決意する。しかし天道藩には『二十年前の物の怪』という事件があって――

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

黒の信仰

ぼっち・ちぇりー
SF
 人間は過ちを犯す生物である。  しかし、問題はそこになくて、もっと別の場所にあるのだ。                                           創造神:ビーピステウス 西暦22XX年、ついに0次エネルギーを開発した人類たちは繁栄し、栄華を極め。        ついには神の洗礼を受けることになる。

後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞
SF
「お前もういらないから」  大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。  彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。 「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」 「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」  個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。 「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」  現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。  私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。  その力、思う存分見せつけてあげるわ!! VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。 つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。 嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)

愛山雄町
SF
 ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め! ■■■  人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。 ■■■  宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。  アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。  4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。  その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。  彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。 ■■■  小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。 ■■■ 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

〈完結〉世界を大きくひっくり返しかき回し、またお前に会えたとしても。

江戸川ばた散歩
SF
「婚約破棄を力技で破棄させた理由と結果。」の元ネタ話。 時代は遠未来。ただ生活は現代のそれとそう変わらない。所詮食べ物だの着るものなどはそう変わるものではないということで。 舞台は星間統一国家を作った「帝都政府」と、それぞれ属国的な独立惑星国家のあるところ。 「帝国」と「属国」と思ってもらえばいいです。 その中の一つ「アルク」で軍におけるクーデター未遂事件の犯人が公開処刑されたことを皮切りに話ははじまる。 視点は途中までは「アルク」にて、大統領の愛人につけられたテルミンのもの。彼がその愛人を世話し見ているうちに帝都政府の派遣員とも関係を持ったり、愛人の復讐に手を貸したり、という。 中盤は流刑惑星「ライ」にて、記憶を失った男、通称「BP」が収容所で仲間と生き残り、やがて蜂起して脱出するまでの話。 後半は元大統領の愛人が政府を乗っ取った状態を覆すために過去の記憶が曖昧な脱走者達が裏社会とも手を組んだりして色々ひっくり返す話。 その中で生き残って会いたいと思う二人は存在するんだけど、十年という長い時間と出来事は、それぞれの気持ちを地味に変化させて行くという。 そんで出てくる人々の大半が男性なんでBL+ブロマンス要素満載。 カテゴリに迷ったけど、この設定のゆるゆる感はSFではなくファンタジーだろってことでカテゴリとタイトルと構成と視点書き換えで再投稿。 ……したはずなんですが、どうもこの中の人達、恋愛感情とかにばかり動かされてるよな、社会とかそれ以外の他人とか、ということでBLに更に変更。 適宜変えます(笑)。 初稿は25年近く昔のものです。 性描写がある章には※つきで。

処理中です...