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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第916話 アスカさんがノープランすぎなだけです
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クララは正直、あきれ返る思いだったが、アスカという人物は元からそうであったことを思い出した。
目の前にクリアすべき困難が立ちはだかる局面においては、瞬時にどうすべきかをいくつも考えつき、それと同じスピードでどれをあきらめるかを取捨選択する能力は、レイをも圧倒することさえある。
だが、具体的な状況が目の前にない段階では、おそろしくアバウトで、考え方が荒っぽい。
「アスカさん、わたしは地面すれすれを進みます。アスカさんはヤタが視野にはいったら、一瞬だけ、上に注意をむけてください」
「上にも仲間がいると思わせるってことね」
「ええ。下に仲間がいれば、上にも仲間が隠れているって思うはずです。アスカさんが一瞬アイコンタクトのような仕草をとれば、ヤタの選択肢はおおきくせばまります」
「横にそれて回避するか、正面のわたしを蹴散らすか……」
「ええ、おそらく、そうなるかと……」
アスカが満足げな笑みをモニタごしにむけてきた。
「クララ、あんた、やるじゃないの!」
「アスカさんがノープランすぎなだけです。さぁ、そろそろ正面にヤタが現われます!」
空を自由自在に飛べるというのに、ヤタは律義にも道路に沿って、街並みを縫うようにして、飛んできていた。
高く飛ぶことで、こちらに発見されるリスクを避けようとしたのだろうか。
ドラゴンズ・ボールを持っているだけで、どんな小細工をほどこしても、捕捉され続けるのはお互いさまだというのに。
幹線道路の正面から突進してくるアスカとクララのエア。バイクを認めて、ヤタはすこし驚いたようだった。
だが、彼はスピードを緩めようとしなかった。そしてそれはアスカもおなじだった。それどころか、獲物を見つけた、とばかりに、フルスロットルで突進していった。
「よくも黒焦げにしてくれたわねぇぇぇ!」
クララはヤタの動きを注視した。真っ正面から突っ込んできているアスカを、どっちかに避けようとするはずだ。ヤタのバイクはすこし上に軸線をずらしたのがわかった。
上に逃げる!
が、アスカがチラリと上に目線をむけた。
ヤタのバイクの上昇がとまった。
クララはマルチプル銃を取り出すと、左側のビルにむけてミサイルを撃った。爆発音とともに煙があがり、破片があたりに飛び散る。
これでヤタは右側に避けるしかなくなった。
だが、とっさにヤタは高度をさげてきた。
陽動が見透かされていた——?
ヤタのバイクがクララめがけて突っ込んでくる。
「ヤタ! あんたのそんな姑息なところ、嫌いじゃないわ!」
真上からアスカの叫び声が聞こえたかと思うと、アスカのエア・バイクがトップスピードのまま降下してきて、ヤタのバイクに正面衝突した。
目の前にクリアすべき困難が立ちはだかる局面においては、瞬時にどうすべきかをいくつも考えつき、それと同じスピードでどれをあきらめるかを取捨選択する能力は、レイをも圧倒することさえある。
だが、具体的な状況が目の前にない段階では、おそろしくアバウトで、考え方が荒っぽい。
「アスカさん、わたしは地面すれすれを進みます。アスカさんはヤタが視野にはいったら、一瞬だけ、上に注意をむけてください」
「上にも仲間がいると思わせるってことね」
「ええ。下に仲間がいれば、上にも仲間が隠れているって思うはずです。アスカさんが一瞬アイコンタクトのような仕草をとれば、ヤタの選択肢はおおきくせばまります」
「横にそれて回避するか、正面のわたしを蹴散らすか……」
「ええ、おそらく、そうなるかと……」
アスカが満足げな笑みをモニタごしにむけてきた。
「クララ、あんた、やるじゃないの!」
「アスカさんがノープランすぎなだけです。さぁ、そろそろ正面にヤタが現われます!」
空を自由自在に飛べるというのに、ヤタは律義にも道路に沿って、街並みを縫うようにして、飛んできていた。
高く飛ぶことで、こちらに発見されるリスクを避けようとしたのだろうか。
ドラゴンズ・ボールを持っているだけで、どんな小細工をほどこしても、捕捉され続けるのはお互いさまだというのに。
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だが、彼はスピードを緩めようとしなかった。そしてそれはアスカもおなじだった。それどころか、獲物を見つけた、とばかりに、フルスロットルで突進していった。
「よくも黒焦げにしてくれたわねぇぇぇ!」
クララはヤタの動きを注視した。真っ正面から突っ込んできているアスカを、どっちかに避けようとするはずだ。ヤタのバイクはすこし上に軸線をずらしたのがわかった。
上に逃げる!
が、アスカがチラリと上に目線をむけた。
ヤタのバイクの上昇がとまった。
クララはマルチプル銃を取り出すと、左側のビルにむけてミサイルを撃った。爆発音とともに煙があがり、破片があたりに飛び散る。
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陽動が見透かされていた——?
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「ヤタ! あんたのそんな姑息なところ、嫌いじゃないわ!」
真上からアスカの叫び声が聞こえたかと思うと、アスカのエア・バイクがトップスピードのまま降下してきて、ヤタのバイクに正面衝突した。
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