上 下
918 / 1,035
第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い

第916話 アスカさんがノープランすぎなだけです

しおりを挟む
 クララは正直、あきれ返る思いだったが、アスカという人物は元からそうであったことを思い出した。
 目の前にクリアすべき困難が立ちはだかる局面においては、瞬時にどうすべきかをいくつも考えつき、それと同じスピードでどれをあきらめるかを取捨選択する能力は、レイをも圧倒することさえある。
 だが、具体的な状況が目の前にない段階では、おそろしくアバウトで、考え方が荒っぽい。
 
「アスカさん、わたしは地面すれすれを進みます。アスカさんはヤタが視野にはいったら、一瞬だけ、上に注意をむけてください」
「上にも仲間がいると思わせるってことね」
「ええ。下に仲間がいれば、上にも仲間が隠れているって思うはずです。アスカさんが一瞬アイコンタクトのような仕草をとれば、ヤタの選択肢はおおきくせばまります」

「横にそれて回避するか、正面のわたしを蹴散らすか……」
「ええ、おそらく、そうなるかと……」
 
 アスカが満足げな笑みをモニタごしにむけてきた。
「クララ、あんた、やるじゃないの!」

「アスカさんがノープランすぎなだけです。さぁ、そろそろ正面にヤタが現われます!」

 
 空を自由自在に飛べるというのに、ヤタは律義にも道路に沿って、街並みを縫うようにして、飛んできていた。
 高く飛ぶことで、こちらに発見されるリスクを避けようとしたのだろうか。
 ドラゴンズ・ボールを持っているだけで、どんな小細工をほどこしても、捕捉され続けるのはお互いさまだというのに。
 
 幹線道路の正面から突進してくるアスカとクララのエア。バイクを認めて、ヤタはすこし驚いたようだった。
 だが、彼はスピードを緩めようとしなかった。そしてそれはアスカもおなじだった。それどころか、獲物を見つけた、とばかりに、フルスロットルで突進していった。

「よくも黒焦げにしてくれたわねぇぇぇ!」

 クララはヤタの動きを注視した。真っ正面から突っ込んできているアスカを、どっちかに避けようとするはずだ。ヤタのバイクはすこし上に軸線をずらしたのがわかった。

 上に逃げる!

 が、アスカがチラリと上に目線をむけた。
 ヤタのバイクの上昇がとまった。
 クララはマルチプル銃を取り出すと、左側のビルにむけてミサイルを撃った。爆発音とともに煙があがり、破片があたりに飛び散る。
 これでヤタは右側に避けるしかなくなった。
 
 だが、とっさにヤタは高度をさげてきた。
 
 陽動が見透かされていた——?

 ヤタのバイクがクララめがけて突っ込んでくる。

「ヤタ! あんたのそんな姑息なところ、嫌いじゃないわ!」
 真上からアスカの叫び声が聞こえたかと思うと、アスカのエア・バイクがトップスピードのまま降下してきて、ヤタのバイクに正面衝突した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

SF作品頻出英会話重要表現※音声リンクあり

ひぽぽたます
SF
SF作品に頻出する英会話の重要表現(私が理解しづらかった構文や表現)を掲載します。 音声はYoutubeで聞けます。下方にリンクを貼りました。※英会話重要表現リスニング練習

海月

古川ゆう
SF
夢の中のお話。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

戦國高校生〜ある日突然高校生が飛ばされたのは、戦乱の世でした。~

こまめ
SF
生きることが当たり前だと、そう思える人にこそ、この物語を読んでもらいたい。 Q「ある日突然高校生28名と教師数名が戦国時代にタイムスリップしたとする。このとき、彼らが生きて元の時代へ戻る為の最適策を導け。ただし、戦の度に1人は必ず死ぬものとする。」  どこにでもいるごく普通の高校生、清重達志たち北大宮高校2年3組と教師は、突然脳裏に時代劇のような映像がフラッシュバックする現象に悩まされていた。ある冬の日、校舎裏の山の頂上にある神社に向かった彼らは、突如神社と共に戦国時代にタイムスリップしてしまった!!  「このままじゃ全員死んじまう!?」乱世に飛ばされた生徒達は明日の見えない状況で足掻きながらも命がけの日々を生きてゆく。その中で達志は、乱世を見る目を持つ信長、頭の切れる秀吉を始めとする多くの人物と出会い、別れを繰り返す。  数々の死線を乗り越え、己の弱さを知り、涙の日々を越えた彼は、いつしか乱世の立役者として、時代を大きく動かす存在となってゆくー 君たちがこれから見るものは、壮大な戦国絵巻。 これはそんな世を駆け抜ける、ある者たちの物語。 ※今作は歴史が苦手な方にも、お楽しみいただけるように書かせてもらっております。キャラに多少チートあり。

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる  地球人が初めて出会った地球外生命体『リャオ』の住む惑星遼州。 理系脳の多趣味で気弱な『リャオ』の若者、神前(しんぜん)誠(まこと)がどう考えても罠としか思えない経緯を経て機動兵器『シュツルム・パンツァー』のパイロットに任命された。 彼は『もんじゃ焼き製造マシン』のあだ名で呼ばれるほどの乗り物酔いをしやすい体質でそもそもパイロット向きではなかった。 そんな彼がようやく配属されたのは遼州同盟司法局実働部隊と呼ばれる武装警察風味の『特殊な部隊』だった。 そこに案内するのはどう見ても八歳女児にしか見えない敗戦国のエースパイロット、クバルカ・ラン中佐だった。 さらに部隊長は誠を嵌(は)めた『駄目人間』の見た目は二十代、中身は四十代の女好きの中年男、嵯峨惟基の駄目っぷりに絶望する誠。しかも、そこにこれまで配属になった五人の先輩はすべて一週間で尻尾を撒いて逃げ帰ったという。 司法局実動部隊にはパイロットとして銃を愛するサイボーグ西園寺かなめ、無表情な戦闘用人造人間カウラ・ベルガーの二人が居た。運用艦のブリッジクルーは全員女性の戦闘用人造人間『ラスト・バタリオン』で構成され、彼女達を率いるのは長身で糸目の多趣味なアメリア・クラウゼだった。そして技術担当の気のいいヤンキー島田正人に医務室にはぽわぽわな詩を愛する看護師神前ひよこ等の個性的な面々で構成されていた。 その個性的な面々に戸惑う誠だが妙になじんでくる先輩達に次第に心を開いていく。 そんな個性的な『特殊な部隊』の前には『力あるものの支配する世界』を実現しようとする『廃帝ハド』、自国民の平和のみを志向し文明の進化を押しとどめている謎の存在『ビックブラザー』、そして貴族主義者を扇動し宇宙秩序の再編成をもくろむネオナチが立ちはだかった。 そんな戦いの中、誠に眠っていた『力』が世界を変える存在となる。 その宿命に誠は耐えられるか? SFお仕事ギャグロマン小説。

処理中です...