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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い

第905話 あれに直撃されたら一撃でこんな車ぺしゃんこだ

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 荒廃にまかせた街並みを抜けると、目の前にふいにおおきな空間がひろがった。
 しかしそれは遠くが見通せただけで、なにもないわけではなかった。

 その再開発エリアには、建設中のビルが何棟も空にむかっていて伸びていた。どれもおそらく数十階建てになるビル群だったが、まだ数階分しかできてなかったり、完成しているのは骨組み部分だけという、着手仕立てと思われるものばかりが屹立きつりつしていた。

「ふん、まだなにもできてないじゃないの!」
 アスカが鼻を鳴らした。

「アスカ、あそこ、電磁誘導パルスレーンの入り口!」
 レイが正面を指さした。損壊によるダメージはかなりあるようで、指し示した右指はガクガクと震えている。
 2キロほど先の中空に、電磁誘導パルスレーンのサインボードが浮いているのが見てとれた。

「了解! 急ぐわ」
 アスカがぐっとアクセルを踏み込んだ。

 そのとき、車内に影がさした。
 はっとして、ヤマトが天井に開いた穴をみあげる。

「アスカ! なにかが降ってくる!!!」

 アスカの反応は速かった。どこに、なにが、など疑問は一切気にせず、力いっぱいハンドルを切った。と同時にブレーキも踏み込む。

 目の前の空間を驚くほどおおきな物体が落ちていった。
 避けきれなければ直撃していた。

「なに、あれ?」
 レイが車窓越しに上を見あげた。

 ビルの建設をおこなっていた工事用機器が、空から降ってきていた。
 それだけではない。
 自分たちが通り抜けている両側のビルから、工業用ロボットが、ビルの鉄骨をこちらに向けて投げつけていた。下から投げあげてきているものは届かなかったが、上から投げ降ろしているものは、車体をかすめるほどには精度が高かった。

「なんで攻撃してくンのよぉ」

「あれは『産業用素体』だ。あれに人格を憑依させて、工事用ロボットや工業用AIにまじって、工事をおこなうんだ」
「ジョーダンでしょ? あんなチートな『素体』ってある?」

「文句はあとだ。あれに直撃されたら、一撃でこんな車ぺしゃんこだ」
「避けられっこないでしょ!!!」
「アスカ、上昇して。ビルの上にでて!」
 レイが叫んだ。

 アスカがめいっぱい超流動斥力波の出力をあげる。
 だがその空間には待ち構えていたかのように、両側から投げつけれていた鉄骨が空を飛んでいた。それはまるで一斉に放たれた弓矢のようにもみえた。

 鼓膜が破れるかと思うほどの轟音とともに、車体が揺さぶられた。実際には数十本もの鉄骨に刺し貫かれたり、めり込まされたりして、押し潰された状態だった。


 なんの抵抗もできないまま、ふらふらと車体が落下していく。揚力装置が壊れたからか、許容の範囲外の鉄骨の重みに耐えきれなかったのかはわからない。
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