いつか日本人(ぼく)が地球を救う

第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い

第887話 デミリアン宇宙仕様に改変

「あるわけないじゃないか。これまで宇宙空間に亜獣が現われたことはなかったんだから。だけど訓練は受けてるよ。と言っても３週間ほどの短期プログラムだけどね」
「あら、タケルさん。たったそれだけ？　それならわたしたちのほうが宇宙は馴れてるってことですね。対戦したら勝てるかもしれないですわ」
　クララがめずらしく強気の口調をヤマトにぶつけてきた。

「きっとクララお姉さまなら、ライトお兄さまといい勝負できると思いますわ。たぶんゼロ・グラビティをなめてると思いますから」
「キラ。ぼくは宇宙環境をなめちゃいないよ。ただ優先度が低かったから、重要視してこなかっただけさ。ひさしぶりなんで、すこしワクワクしているけどね」
「でも本当に宇宙空間に亜獣が現われたら、ライトお兄さまの出番はありませんわよ」

「そうね、あたしたちが戦うより、キラひとりで充分だと思うわ」

　ヤマトは手放しで他人を褒めているアスカのことばに驚いた。思わずアスカの顔を見つめると、アスカは視線に気づいて、ムッとした顔つきになった。
「なあに、タケル。だってそう思うでしょ？」

「ん、まぁ、たしかに……　そうだけど……」


　マンゲツ、ヴィーナス、ジュピターの三機を一度に、宇宙仕様に変更するのに、当初アルは難色をしめした。宇宙空間でデミリアンを戦わせるためには、本来のド派手な装飾をとりさって、特殊な装備で全身を覆う必要があったからだ。
　結局は命令に従う形で取り掛かったが、装備変更にはまるまる一週間かかった。

　キラの搭乗するセラ・マーキュリーは地球上でも戦うことを想定した、ハイブリッド仕様のプロテクタになっていたが、ヤマトたちが用意されたのは、完全に宇宙空間向けのもので、宇宙放射線防御用に体全体がラッピングされていた。
　可動域が制限されたり、動作スピードが鈍るのではと、ヤマトは心配していたが、無重力と装甲の軽さも手伝って存外動きやすかった。

　訓練施設は月基地の中心から数十キロ離れた場所、『静かの海』ちかくにあった。そこでは無重力空間はもちろん、地球上での戦いも視野にいれた重力場での戦いもシミュレーションできた。
　富士樹海付近に造られている国際連邦軍日本支部のシミュレーションエリアと比べると、わずかばかり規模は小さかったが、月というロケーションを考慮すれば、ずいぶん贅沢な施設だと言えた。
　
　だが、ヤマトはなにより興味深かったのは、この月基地にあるデミリアン・パイロット養成アカデミーだった。
　レイ、アスカ、ユウキに続く、次期パイロット候補生、数十人がそこにいいた。