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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第886話 もしかしたら、自分より腕が上かもしれない
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「ああ。ユウキくん。さきほどの図式の軌道は、地球へゆっくりと移動していることを指し示している」
「では地球で迎え撃てばいいのではありませんの?」
「クララくん。それも考えた。だがそれよりも宇宙で迎え撃ったほうが、人的被害が圧倒的に少ない。いままでは地球上のどこかに出現したから、犠牲は不可避だったが、地球に降りたたせないで済むなら、それにこしたことはない」
「だから宇宙戦を、ってわけぇ? まぁ、月面のアカデミーでも無重力での戦闘訓練は、さんざんやらされたからね。嫌いじゃないわ」
「無意味な訓練だと思ってましたけど、まさかここにいたって役にたつとは思いませんでしたわ」
クララはアスカに続いてそう言うと、キラのほうをチラリとみた。
「まぁ、火星人のキラさんには、敵わないかもしれませんが」
「まー、クララお姉さま。うれしい」
キラは顔を赤らめてみせた。そんなことはできないはずだとわかっていたが、ヤマトには意図的にそうしてみせたように感じた。
「でも地上戦はまだ不慣れで、わたくしはお姉さまがたに学ぶことが多いですわ」
それは嘘だった——
キラは地上戦のシミュレーションでも、こちらが目を見張るほどの動きをみせた。順応性が高いのか、天性の勘の良さなのかはわからなかったが、みるみるうちに市街戦や空中戦、グループ戦をものにしていっていた。
ただ最後だけはわざとタイミングや照準をはずして、先輩たちに華をもたせた。それがあまりに自然で、しかも0コンマ数秒レベルのずらし方なので、ヤマトも最初は気づかなかったほどだった。
それはレイに教えられた。
レイとバディを組んで、対S級亜獣戦に挑んだとき、レイがひとことヤマトに呟いた。
「あの子にフィニッシュをゆずられた」
それからキラの戦い方を注視するようになったヤマトは、キラの戦闘能力の高さに目を見張った。初見の亜獣をたったひとりで、あっという間に葬ったのだから、当然と言えば当然なのだが、いつのまにかどこか下にみていたことに気づかされた。
もしかしたら、自分より腕が上かもしれない——
ヤマトはちょっとした焦りと、嬉しさを同時に覚えた。
自分というエースがもし失われたとしても、キラという切り札がいる。まさにジョーカーといってもよかった。
一週間後、ヤマトたちは月基地にむかった。
亜獣の出現にそなえて、レイとユウキは地球待機を命じられた。リンは戦力バランスを考えてミサトに進言した、と言ったが、図らずも宇宙行きは女性チームとなっていた。
うまく「お姉さま方」に気に入られたキラは、たしかにアスカともクララとも相性はよく、そのコンビネーションを試してみたいという上層部の意向も理解できた。
軌道エレベータで上昇しているとき、アスカが尋ねてきた。
「ねぇ、タケル。あんた、宇宙での戦闘経験はあるの?」
「では地球で迎え撃てばいいのではありませんの?」
「クララくん。それも考えた。だがそれよりも宇宙で迎え撃ったほうが、人的被害が圧倒的に少ない。いままでは地球上のどこかに出現したから、犠牲は不可避だったが、地球に降りたたせないで済むなら、それにこしたことはない」
「だから宇宙戦を、ってわけぇ? まぁ、月面のアカデミーでも無重力での戦闘訓練は、さんざんやらされたからね。嫌いじゃないわ」
「無意味な訓練だと思ってましたけど、まさかここにいたって役にたつとは思いませんでしたわ」
クララはアスカに続いてそう言うと、キラのほうをチラリとみた。
「まぁ、火星人のキラさんには、敵わないかもしれませんが」
「まー、クララお姉さま。うれしい」
キラは顔を赤らめてみせた。そんなことはできないはずだとわかっていたが、ヤマトには意図的にそうしてみせたように感じた。
「でも地上戦はまだ不慣れで、わたくしはお姉さまがたに学ぶことが多いですわ」
それは嘘だった——
キラは地上戦のシミュレーションでも、こちらが目を見張るほどの動きをみせた。順応性が高いのか、天性の勘の良さなのかはわからなかったが、みるみるうちに市街戦や空中戦、グループ戦をものにしていっていた。
ただ最後だけはわざとタイミングや照準をはずして、先輩たちに華をもたせた。それがあまりに自然で、しかも0コンマ数秒レベルのずらし方なので、ヤマトも最初は気づかなかったほどだった。
それはレイに教えられた。
レイとバディを組んで、対S級亜獣戦に挑んだとき、レイがひとことヤマトに呟いた。
「あの子にフィニッシュをゆずられた」
それからキラの戦い方を注視するようになったヤマトは、キラの戦闘能力の高さに目を見張った。初見の亜獣をたったひとりで、あっという間に葬ったのだから、当然と言えば当然なのだが、いつのまにかどこか下にみていたことに気づかされた。
もしかしたら、自分より腕が上かもしれない——
ヤマトはちょっとした焦りと、嬉しさを同時に覚えた。
自分というエースがもし失われたとしても、キラという切り札がいる。まさにジョーカーといってもよかった。
一週間後、ヤマトたちは月基地にむかった。
亜獣の出現にそなえて、レイとユウキは地球待機を命じられた。リンは戦力バランスを考えてミサトに進言した、と言ったが、図らずも宇宙行きは女性チームとなっていた。
うまく「お姉さま方」に気に入られたキラは、たしかにアスカともクララとも相性はよく、そのコンビネーションを試してみたいという上層部の意向も理解できた。
軌道エレベータで上昇しているとき、アスカが尋ねてきた。
「ねぇ、タケル。あんた、宇宙での戦闘経験はあるの?」
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