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第四章 第一節 四解文書 第一節 それを知れば憤怒にかられる

第880話 あとたった五体ですのよ

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「キラ、タケルくんはそうするって言ってるけどね……」

「だったら、そうしましょう。これだけ優秀なパイロットの方々がいて、それにあたしくしが加わるのですよ。カツライ司令、次世代のことを考える必要はないと思いますわ」

「指揮官としては、そうはいかないわよ」

「あと五体ですのよ」
 キラがピシャリと言い放った。

「あたくしが、火星で103体目を倒しましたから、残りはたったの5体ですのよ」

 ヤマトはその『たったの五体』と言い放ったキラの顔をみた。
 『たった』という部分に、こころなしか不満そうなニュアンスをヤマトは感じ取った。
 キラは自信にあふれた目をしていて、けっして背伸びや無理しているようには感じられなかった。『たった』というのは本音なのだろうと思う。
 こんな終盤でしか加われなかったことへの、自分の不遇を嘆いているのだ。

「ああ、キラ。きみの言う通りだ。あと、たったの五体で終わりだ。二十体近く倒してきたぼくらからすれば、余裕の数字だ」

「ほうら、ライトお兄さまもそうおっしゃってます。まぁ、いいですわ。あたくし空いてる部屋で。何十メートルも離れてるわけじゃないでしょうし、どの部屋だって造りはおなじなんでしょう?」
「ええ、そうよ。ちょっと調度品がちがうだけ。まぁ、あたしの隣の部屋が落ちついた感じでいいかもね。」
 アスカがやさしいトーンで言った。

「じゃあ、アスカお姉さまのお隣の部屋にするわ。お姉さま方、案内してくださいな。女の子だけでいろいろお話しましょう」
 
 キラがアスカとクララに笑いかけた。
 まさに女の子の顔だった。

「ええ。ここのルールをお教えしますわ」
 クララがにっこりと笑った。
 キラが言った『魅力的な女性』や『優秀なパイロット』というキラーワードが、どうやら彼女たちの胸にささったらしい、とヤマトは感じとった。

 アスカが先導し、クララがキラの手をとり、二階へとむかいはじめた。
 そのうしろからレイが続こうとする。

 が、階段の中腹ほどまで上がったところで、キラが下から昇ってくるレイのほうをふりむいて言った。


「あら、レイさん。あたくし、女の子だけ、って申しあげましてよ」


 キラの言っている意味が、ヤマトにはわからなかった。ユウキのほうに目をやると、彼は眉根をよせて険しい顔をしていた。ミサトは怪訝そうな表情を浮かべていたが、ウルスラはその場から目をそらすように天井をみあげていた。

「だから、わたし……」 
 レイのことばをキラややんわりとした口調で否定した。

「だって、レイさん。あなた、男の子じゃない」
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