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第四章 第一節 四解文書 第一節 それを知れば憤怒にかられる
第872話 セラ・マーキュリー対自己修復可能亜獣
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それはデミリアン駆逐に携わる者すべてにとって衝撃的なことだった。
自分があずかり知らないセラ・マーキュリーが突然現われたことは、デミリアン担当の春日リンにとって衝撃以外のなにものでもなかっただろうことは想像にかたくない。
その場ですぐに自己修復していく、ブロック型の亜獣の存在は、亜獣研究一筋に取り組んできた金田日にとって、驚愕しかなかったであろう。
だが、武器担当のアルはふたり以上の衝撃を受けることになった。
腕を根元が破壊された亜獣は、腕をぶらぶらさせながらも立ち上がろうとした。すでにえぐられた腹は修復され、脚も体重を支え切れるほどまでに戻っていた。
その亜獣の正面にセラ・マーキュリーが回り込んだ。
真正面に現われたデミリアンをみて、亜獣が咆哮をあげる。凶暴な目つき。
が、その瞬間、マーキュリーはおおきく開いた亜獣の口にむかって、アックスを横一線にふりぬいた。
亜獣はその一撃を防ごうと手をあげようとしたが、ちぎれかけた腕はもちあがることはなかった。
だがマーキュリーのアックスの刃は、亜獣の口元をおおきく切り裂いただけだった。口から上を寸断できるはずだったのに、意図的にそこでとどめた、というのがすぐにわかった。
「なぜ斬り落さない!」
ユウキが声をもらす。
セラ・マーキュリーは腰にぶら下げていた球体を、乱暴に引きちぎって握りしめると、開いたままの亜獣の口のなかに、腕ごと突っ込んだ。
「手を突っ込んだ、だと?」
ヤマトはおどろきをそのままことばにだした。
セラ・マーキュリーが口のなかに、ぐいぐいと腕をねじ込んでいく。そしてついには腕の根元付近までを亜獣のからだのなかに突っ込んでいた。
「バカな! そんなことできるわけがない」
ヤマトは呆然としていた。自分でも意識できるほど、うろたえているのがわかる。
「なにができるわけないのよ」
アスカが苛立った声をあげた。ヤマトの動揺が伝播しているようだった。
「あそこまで……内部まで到達してるってことは……、あのセラ・マーキュリーのからだの一部は、すでに亜空間に入り込んでいるってことだ」
「あたしたちだって、そうでしょ?」
「ちがう! ぼくらがやっているのは、亜空間を切り裂いて、一瞬の隙に攻撃を加えているにすぎない。刀や槍なんかでね。殴りつけているのだってそうだ。一瞬切り開いて、あちら側にアプローチしているだけだ」
ヤマトが自分の声が震えているのがわかった。
「だがあれは……亜空間に居続けているのに等しい。そんなことは無理なはずだ」
「無理じゃないわ」
リンが声を震わせた。
自分があずかり知らないセラ・マーキュリーが突然現われたことは、デミリアン担当の春日リンにとって衝撃以外のなにものでもなかっただろうことは想像にかたくない。
その場ですぐに自己修復していく、ブロック型の亜獣の存在は、亜獣研究一筋に取り組んできた金田日にとって、驚愕しかなかったであろう。
だが、武器担当のアルはふたり以上の衝撃を受けることになった。
腕を根元が破壊された亜獣は、腕をぶらぶらさせながらも立ち上がろうとした。すでにえぐられた腹は修復され、脚も体重を支え切れるほどまでに戻っていた。
その亜獣の正面にセラ・マーキュリーが回り込んだ。
真正面に現われたデミリアンをみて、亜獣が咆哮をあげる。凶暴な目つき。
が、その瞬間、マーキュリーはおおきく開いた亜獣の口にむかって、アックスを横一線にふりぬいた。
亜獣はその一撃を防ごうと手をあげようとしたが、ちぎれかけた腕はもちあがることはなかった。
だがマーキュリーのアックスの刃は、亜獣の口元をおおきく切り裂いただけだった。口から上を寸断できるはずだったのに、意図的にそこでとどめた、というのがすぐにわかった。
「なぜ斬り落さない!」
ユウキが声をもらす。
セラ・マーキュリーは腰にぶら下げていた球体を、乱暴に引きちぎって握りしめると、開いたままの亜獣の口のなかに、腕ごと突っ込んだ。
「手を突っ込んだ、だと?」
ヤマトはおどろきをそのままことばにだした。
セラ・マーキュリーが口のなかに、ぐいぐいと腕をねじ込んでいく。そしてついには腕の根元付近までを亜獣のからだのなかに突っ込んでいた。
「バカな! そんなことできるわけがない」
ヤマトは呆然としていた。自分でも意識できるほど、うろたえているのがわかる。
「なにができるわけないのよ」
アスカが苛立った声をあげた。ヤマトの動揺が伝播しているようだった。
「あそこまで……内部まで到達してるってことは……、あのセラ・マーキュリーのからだの一部は、すでに亜空間に入り込んでいるってことだ」
「あたしたちだって、そうでしょ?」
「ちがう! ぼくらがやっているのは、亜空間を切り裂いて、一瞬の隙に攻撃を加えているにすぎない。刀や槍なんかでね。殴りつけているのだってそうだ。一瞬切り開いて、あちら側にアプローチしているだけだ」
ヤマトが自分の声が震えているのがわかった。
「だがあれは……亜空間に居続けているのに等しい。そんなことは無理なはずだ」
「無理じゃないわ」
リンが声を震わせた。
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