上 下
873 / 1,035
第四章 第一節 四解文書 第一節 それを知れば憤怒にかられる

第871話 嘘でしょ! 自己修復できるって

しおりを挟む
「まずは生物の急所、頭を狙って、それがダメなら弱点と思われるあのお腹、そしてそれが効果ないとわかったら、足をとめることを最優先にしている。しかもすべてを淀みなくこなしてるから判断がはやい。まったく躊躇ちゅうちょしてないの。だからとっても優秀」

 亜獣が膝を折った。
 その場にひざまづく。

「よし、いけっ!」
 喊声がとび、それに呼応して拍手や応援の声がまきおこる。

 だが、次の瞬間、そんな勝ちムードを吹き飛ばすようなことが起きた。
 
 こまかく地面にちらばっていたブロック状の破片が、パラパラと舞いあがりはじめたかと思うと、破砕されたはずの脚を修復しはじめたのだ。

 ハッとしてヤマトは、亜獣の頭部をみた。
 最初の一撃で破砕されたはずの頭部分が、いつのまにか修復されていた。えぐり取られていた腹部も、すでに半分以上が元にもどっている。

「嘘でしょ! 自己修復できるって……」
 ミサトが悲鳴のような声をあげたが、金田日が諭すように静かに言った。
「カツライ司令、おどろくことはありません。いままでも自己修復した亜獣は存在しています。ただ、あれほど早いのははじめてですが……」
「どうやって倒せばいいのよ?」
「司令。わたしたちには倒せません」
「倒せない? それってどういうことミライ!」

「ですから、あれはこちらの管轄ではないのです。わたしたちはあれには関われないのですから……」

「あ、そ、そうね」
 ミサトがかるくうなずいた。

 ヤマトにはすぐにミサトがヒステリックになったのがよくわかった。
 おそらくあの亜獣と戦う自分の姿を思い描いていたのだろう。手も足もでない、と感じたにちがいない。

  それは自分もおなじだった。
 亜獣が出現したというのに、ただ傍観するしかないというのは、つねに当事者であることを義務づけられている者としては、身悶えする思いだ。
 ただヤマトはそういう経験が多いだけだ。 
 アイの初出撃のとき、カミナ・アヤトが命を落とした戦い……
 そう、それに、リュウ・リョウマが乗っ取られたとき——


 破砕された脚がみるみる修復していく合間に、マーキュリーは亜獣の両腕を斬り落そうとしていた。ひざまづいた亜獣の背中側から、腕の付け根にむかってアックスを何度も振り降ろしている。
「なにをしている。腕を落としてもすぐに修復する」
 ユウキが呟いた。
「腕を落とそうとしてるわけじゃないわ」
 レイがそれに言及した。
「たぶん、しばらく腕を使えなくしようとしているだけ」
「なぜ、わかるのよ。レイ!」
「だって右腕を落とす寸前でやめて、左腕のほうに攻撃をしかけてる。両腕を使えなくすることが必要なんだと思う」
「どうしてなんですか?」

「ごめんなさい、クララ。わたしにもわからない。でも……」


「なにか、秘策があるような気がする」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
フルダイブ型VRMMORPG Unite Whole World Online ユナイト・ホール・ワールドオンライン略称UWWO ゲームのコンセプトは広大なエリアを有する世界を一つに集約せよ。要するに世界のマップをすべて開放せよ。 そしてようやく物語の始まりである12月20に正式サービスが開始されることになった。 サービスの開始を待ちに待っていた主人公、大森あゆな はサービスが開始される15:00を前にゲーム躯体であるヘルメットにゲームをインストールしていた。 何故かベッドの上に正座をして。 そしてサービスが始まると同時にUWWOの世界へダイブした。 レアRACE? 何それ? え? ここどこ? 周りの敵が強すぎて、先に進めない。 チュートリアル受けられないのだけど!? そして何だかんだあって、引きこもりつつストーリーの重要クエストをクリアしていくようになる。 それも、ソロプレイで。 タイトルの副題はそのうち回収します。さすがに序盤で引きこもりも暗躍も出来ないですからね。 また、この作品は話の進行速度がやや遅めです。間延びと言うよりも密度が濃い目を意識しています。そのため、一気に話が進むような展開はあまりありません。 現在、少しだけカクヨムの方が先行して更新されています。※忘れていなければ、カクヨムでの更新の翌日に更新されます。 主人公による一方的な虐殺が好き、と言う方には向いていません。 そう言った描写が無い訳ではありませんが、そう言った部分はこの作品のコンセプトから外れるため、説明のみになる可能性が高いです。 あくまで暗躍であり、暗殺ではありません。 いえ、暗殺が無い訳ではありませんけど、それがメインになることは確実に無いです。 ※一部登場人物の名前を変更しました(話の内容に影響はありません)

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

アシュターからの伝言

あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。 なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。 テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。 その他、王様の耳はロバの耳。 そこらで言えない事をこっそりと。 あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。 なので届くべき人に届けばそれでいいお話。 にして置きます。 分かる人には分かる。 響く人には響く。 何かの気づきになれば幸いです。

終末の機械娘と猫たちと(完結)

ジャン・幸田
SF
 文明が崩壊して何年経過したかわからない・・・  人の姿は消えて久しいが、海辺に人影があった。その人影は釣りをして、魚を釣っては猫にご飯としてあげている。そんな毎日を過ごしていた。  その人影は何故こうしているの? 何を待っているの? なぜ文明が崩壊してしまったのか?  機械生命体ニャオに何が起きたというのだろう?  ニャオの無限にループしているような日常が終わる時、何かが起きる? *この作品では会話の描写である鍵括弧は敢えてしていません。どちらかといえば実験的作品です。登場人物はそれなりに出ます。 *「なろう」様にも投稿していますが、話の順番は異なります。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命
SF
 三国志の三英雄の1人劉備玄徳が大好きな高校生の劉義賢が劉備玄徳の墓を訪れるが、くまなく調べると何かの装置が作動し墓の中に落ちる。  辺りを見回すと奥に劉備玄徳愛用の双股剣があったので触れると謎の女性の『玄徳様の運命をお変えください』という言葉で光に包まれ目を覚ますとそこは後漢末期の涿郡涿県楼桑村だった。  目の前にいる兄だと名乗る劉備殿に困惑しながらも義勇兵を結成し、激動の時代を劉備殿の天下のために尽力する物語。 1章 黄巾の乱編 完結 2章 反董卓連合編 完結 3章 群雄割拠編 完結 4章 三国鼎立編 完結 5章 天下統一編 鋭意製作中 ※二次創作ではありますが史実に忠実ではなくオリジナル戦記寄りとなってます。  数多くの武将が出るため、誰が話しているかわからなくなることを避けるために「」の前に名前を入れます。  読みにくい場合はコメントなどで教えてもらえるとありがたいです。  オリジナルキャラも登場します。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

処理中です...