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第四章 第一節 四解文書 第一節 それを知れば憤怒にかられる
第871話 嘘でしょ! 自己修復できるって
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「まずは生物の急所、頭を狙って、それがダメなら弱点と思われるあのお腹、そしてそれが効果ないとわかったら、足をとめることを最優先にしている。しかもすべてを淀みなくこなしてるから判断がはやい。まったく躊躇してないの。だからとっても優秀」
亜獣が膝を折った。
その場にひざまづく。
「よし、いけっ!」
喊声がとび、それに呼応して拍手や応援の声がまきおこる。
だが、次の瞬間、そんな勝ちムードを吹き飛ばすようなことが起きた。
こまかく地面にちらばっていたブロック状の破片が、パラパラと舞いあがりはじめたかと思うと、破砕されたはずの脚を修復しはじめたのだ。
ハッとしてヤマトは、亜獣の頭部をみた。
最初の一撃で破砕されたはずの頭部分が、いつのまにか修復されていた。えぐり取られていた腹部も、すでに半分以上が元にもどっている。
「嘘でしょ! 自己修復できるって……」
ミサトが悲鳴のような声をあげたが、金田日が諭すように静かに言った。
「カツライ司令、おどろくことはありません。いままでも自己修復した亜獣は存在しています。ただ、あれほど早いのははじめてですが……」
「どうやって倒せばいいのよ?」
「司令。わたしたちには倒せません」
「倒せない? それってどういうことミライ!」
「ですから、あれはこちらの管轄ではないのです。わたしたちはあれには関われないのですから……」
「あ、そ、そうね」
ミサトがかるくうなずいた。
ヤマトにはすぐにミサトがヒステリックになったのがよくわかった。
おそらくあの亜獣と戦う自分の姿を思い描いていたのだろう。手も足もでない、と感じたにちがいない。
それは自分もおなじだった。
亜獣が出現したというのに、ただ傍観するしかないというのは、つねに当事者であることを義務づけられている者としては、身悶えする思いだ。
ただヤマトはそういう経験が多いだけだ。
アイの初出撃のとき、カミナ・アヤトが命を落とした戦い……
そう、それに、リュウ・リョウマが乗っ取られたとき——
破砕された脚がみるみる修復していく合間に、マーキュリーは亜獣の両腕を斬り落そうとしていた。ひざまづいた亜獣の背中側から、腕の付け根にむかってアックスを何度も振り降ろしている。
「なにをしている。腕を落としてもすぐに修復する」
ユウキが呟いた。
「腕を落とそうとしてるわけじゃないわ」
レイがそれに言及した。
「たぶん、しばらく腕を使えなくしようとしているだけ」
「なぜ、わかるのよ。レイ!」
「だって右腕を落とす寸前でやめて、左腕のほうに攻撃をしかけてる。両腕を使えなくすることが必要なんだと思う」
「どうしてなんですか?」
「ごめんなさい、クララ。わたしにもわからない。でも……」
「なにか、秘策があるような気がする」
亜獣が膝を折った。
その場にひざまづく。
「よし、いけっ!」
喊声がとび、それに呼応して拍手や応援の声がまきおこる。
だが、次の瞬間、そんな勝ちムードを吹き飛ばすようなことが起きた。
こまかく地面にちらばっていたブロック状の破片が、パラパラと舞いあがりはじめたかと思うと、破砕されたはずの脚を修復しはじめたのだ。
ハッとしてヤマトは、亜獣の頭部をみた。
最初の一撃で破砕されたはずの頭部分が、いつのまにか修復されていた。えぐり取られていた腹部も、すでに半分以上が元にもどっている。
「嘘でしょ! 自己修復できるって……」
ミサトが悲鳴のような声をあげたが、金田日が諭すように静かに言った。
「カツライ司令、おどろくことはありません。いままでも自己修復した亜獣は存在しています。ただ、あれほど早いのははじめてですが……」
「どうやって倒せばいいのよ?」
「司令。わたしたちには倒せません」
「倒せない? それってどういうことミライ!」
「ですから、あれはこちらの管轄ではないのです。わたしたちはあれには関われないのですから……」
「あ、そ、そうね」
ミサトがかるくうなずいた。
ヤマトにはすぐにミサトがヒステリックになったのがよくわかった。
おそらくあの亜獣と戦う自分の姿を思い描いていたのだろう。手も足もでない、と感じたにちがいない。
それは自分もおなじだった。
亜獣が出現したというのに、ただ傍観するしかないというのは、つねに当事者であることを義務づけられている者としては、身悶えする思いだ。
ただヤマトはそういう経験が多いだけだ。
アイの初出撃のとき、カミナ・アヤトが命を落とした戦い……
そう、それに、リュウ・リョウマが乗っ取られたとき——
破砕された脚がみるみる修復していく合間に、マーキュリーは亜獣の両腕を斬り落そうとしていた。ひざまづいた亜獣の背中側から、腕の付け根にむかってアックスを何度も振り降ろしている。
「なにをしている。腕を落としてもすぐに修復する」
ユウキが呟いた。
「腕を落とそうとしてるわけじゃないわ」
レイがそれに言及した。
「たぶん、しばらく腕を使えなくしようとしているだけ」
「なぜ、わかるのよ。レイ!」
「だって右腕を落とす寸前でやめて、左腕のほうに攻撃をしかけてる。両腕を使えなくすることが必要なんだと思う」
「どうしてなんですか?」
「ごめんなさい、クララ。わたしにもわからない。でも……」
「なにか、秘策があるような気がする」
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