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第三章 第七節 さよならアイ
第831話 リンさん、あなた狂ってます
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「そう、だからポーズ。ブライトに怒りをぶつけてみせなければ、わたしのなかの整合性もとれなかったしね」
「そんな……」
「軽蔑する? なじってもらっても構わないし、なんなら一、二発、殴ってもらってもいいわ。わたしの面子やプライドなんて、どうでもいい。この職を守るためならね」
リンはショートを挑発するように、頬をさしだすようにして首を傾けた。
だが、ショートはおおきくため息をついただけだった。
「リンさん、あなた狂ってます」
「ええ、そのとおりよ。狂ってる。自分でも自覚しているつもり。わたしは人間の命どころか、近しいものの命だってどうでもいい。もしかしたら地球の運命だってどうでもいいと思ってるかもしれない。それくらいあの未知の生命体『デミリアン』のほうが大事なの」
「そのようですね」
「でもあなたもそうでしょ? あたしが誘ったら、悲しい記憶が残るこの場所へ戻ってきたわ。いちもにもなくね。。ブライトが辞任したっていうのは、対外的なエクスキューズでしかないでしょ」
「なにもかにもお見通しのような口ぶりですね」
「だって、だから呼んだんだもの。ほかのクルーとはちがって、お金や地位や面子、ましてや使命感なんていう嘘っぽい理由で、このデミリアンに関わってないのわかるから。あなた、歌姫、やってたんでしょ。楽しかった?」
ショートはまたおおきく嘆息した。さきほどとちがって、なにか観念したようなため息だった。
「楽しかったですよ。それなりの箱をいっぱいにできるほどには人気があったんですから。まぁ、それもそれまで、この歌姫を演じていたひとたちの実績のお陰ですけどね」
「何代目だったの?」
「わたしは六代目でした。だからわたしが、才能やスキル、記憶や実績をひきついだ時点で、もう完成していたというか…… 自分らしさを加える余地も、さらに上に昇れるようなポジションも残されてませんでした」
「わたしは売れない場末の歌手だったけど、初代、すくなくともオリジナルだったわ。それでも『ラピッド・ラーニング』で、歌の才能やレパートリー、練習によって得られるスキルは、数週間で手に入れたのだけどね」
ショートは苦笑いして言った。
「わたしはスタイルが完全にできあがってました。ロボットみたいなものです。おおくの固定ファンがいて、人気があがりも下がりもしない。それでも大観衆の前で歌って、彼らを魅了するのは気持ちよかった。ただ……達成感はありませんでした」
「そんな……」
「軽蔑する? なじってもらっても構わないし、なんなら一、二発、殴ってもらってもいいわ。わたしの面子やプライドなんて、どうでもいい。この職を守るためならね」
リンはショートを挑発するように、頬をさしだすようにして首を傾けた。
だが、ショートはおおきくため息をついただけだった。
「リンさん、あなた狂ってます」
「ええ、そのとおりよ。狂ってる。自分でも自覚しているつもり。わたしは人間の命どころか、近しいものの命だってどうでもいい。もしかしたら地球の運命だってどうでもいいと思ってるかもしれない。それくらいあの未知の生命体『デミリアン』のほうが大事なの」
「そのようですね」
「でもあなたもそうでしょ? あたしが誘ったら、悲しい記憶が残るこの場所へ戻ってきたわ。いちもにもなくね。。ブライトが辞任したっていうのは、対外的なエクスキューズでしかないでしょ」
「なにもかにもお見通しのような口ぶりですね」
「だって、だから呼んだんだもの。ほかのクルーとはちがって、お金や地位や面子、ましてや使命感なんていう嘘っぽい理由で、このデミリアンに関わってないのわかるから。あなた、歌姫、やってたんでしょ。楽しかった?」
ショートはまたおおきく嘆息した。さきほどとちがって、なにか観念したようなため息だった。
「楽しかったですよ。それなりの箱をいっぱいにできるほどには人気があったんですから。まぁ、それもそれまで、この歌姫を演じていたひとたちの実績のお陰ですけどね」
「何代目だったの?」
「わたしは六代目でした。だからわたしが、才能やスキル、記憶や実績をひきついだ時点で、もう完成していたというか…… 自分らしさを加える余地も、さらに上に昇れるようなポジションも残されてませんでした」
「わたしは売れない場末の歌手だったけど、初代、すくなくともオリジナルだったわ。それでも『ラピッド・ラーニング』で、歌の才能やレパートリー、練習によって得られるスキルは、数週間で手に入れたのだけどね」
ショートは苦笑いして言った。
「わたしはスタイルが完全にできあがってました。ロボットみたいなものです。おおくの固定ファンがいて、人気があがりも下がりもしない。それでも大観衆の前で歌って、彼らを魅了するのは気持ちよかった。ただ……達成感はありませんでした」
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