上 下
808 / 1,035
第三章 第七節 さよならアイ

第807話 ヤマト、エンアイムに刃を突き立てる

しおりを挟む
 亜獣エンアイムの外皮は見てくれほどぶ厚くなかった。

 ヤマト・タケルがサムライ・ソードを突き立てると、想像したより手応えなく、深々と刃がささっていった。

 幾層にも重なって行く手を遮ってきた、魔法少女のカーテンをくぐりぬけ、ヤマトはついにエンアイム本体にたどりついていた。エンマ・アイの姿形をうしなった魔法少女は、すでにヤマトには脅威とはいえない存在で、ただの邪魔でしかなかった。
 エンマ・アイの姿であっても、ヤマトはむごいまでの仕打ちで魔法少女をたたきのめしていたが、姿をうしなってからは、ほんのわずか残っていた躊躇ちゅうちょの欠片もなくなった。ものの数分でほとんどの魔法少女を殲滅せんめつし、一気にエンアイム本体に攻撃をかけていた。

 エンアイムはマンゲツのサムライ・ソードに刺し貫かれても、なんの反応もなかった。なにかを吐きだしたり、隠し球の必殺技をだしたりしてくることもなければ、手ではねのけようともしなかった。もしそうしたくても、そもそも両腕はアスカとクララの元にある。

「本部、なんの反応もない」

「ヤマト少尉、おそらくエンアイムは、魔法少女を製造する力だけしかもたない亜獣だと思われます。護衛する魔法少女をうしなっては、なにもできないでしょう」
 金田日がやたらかしこまって助言してきた。
「金田日さん。ヤマトでいいよ。かしこまって呼ぶのは、ミライ副司令だけで充分だよ」
「あ、はい。いや、うん。ではヤマトくん。エンアイムの上まで昇れるかい?」
「上……ですか?」
「ああ。その空にむかって広がっているスカートのような部分。そのなかにひとびとを巻込んで、魔法少女を作ってるんだ。ひとびとはそこから内部に取り込まれてる」
「そこから内部にアクセスできる、ってことですね」
「ああ。たぶん…… そしてそこが弱点だと思う」

 ヤマトは上を見あげた。
 エンアイムを上空から映しているカメラ映像では、もうひとつわかりにくかったが、あがってみれば、なにか糸口がつかめるだろう。
「了解しました」

 そう返事をすると、正面映像がレイに切り替わった。
「タケル、そちらはあとどれくらいでエンアイムを倒せそう?」
「いまからエンアイムに昇る。内部から破壊できれば、すぐだ」
「そう…… じゃあ、待ってる。無理して魔法少女に守られているイオージャと戦う必要はないから」
「ああ…… そうだね。ぼくがエンアイムを倒せば、きみたちの戦いはぐっと楽になる」

「そうよ、タケル。あたしたちのおかげで、あなたが戦いやすくなったようにね」
 今度は正面映像にアスカの顔が浮かびあがった。
「ええ、そうですとも。もうアイさんの戯れ言に悩まされずにすんだでしょう」
 クララが正面映像を半分に切り分けて乗っ取ってきた。
「ああ…… アスカとクララのおかげだ。ぼくはなんのためらいもなく、このエンアイムと対峙できる」
「ならば急いでほしい、タケルくん。われわれもイオージャを目の前にして、いつまでも見ているだけ、というのも許されなくなるからね」
 ユウキが困ったような顔で言ってきた。
「ああ、ユウキ。もうすこしでお終いだ。魔法少女がいなくなれば、バラバラ光線に煩わされることなく、存分に戦えるだろうかね」

「頼んだよ」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

CREATED WORLD

猫手水晶
SF
 惑星アケラは、大気汚染や森林伐採により、いずれ人類が住み続けることができなくなってしまう事がわかった。  惑星アケラに住む人類は絶滅を免れる為に、安全に生活を送れる場所を探す事が必要となった。  宇宙に人間が住める惑星を探そうという提案もあったが、惑星アケラの周りに人が住めるような環境の星はなく、見つける前に人類が絶滅してしまうだろうという理由で、現実性に欠けるものだった。  「人間が住めるような場所を自分で作ろう」という提案もあったが、資材や重力の方向の問題により、それも現実性に欠ける。  そこで科学者は「自分達で世界を構築するのなら、世界をそのまま宇宙に作るのではなく、自分達で『宇宙』にあたる空間を新たに作り出し、その空間で人間が生活できるようにすれば良いのではないか。」と。

もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR
SF
 『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。     (アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)

決戦の夜が明ける ~第3堡塁の側壁~

独立国家の作り方
SF
 ドグミス国連軍陣地に立て籠もり、全滅の危機にある島民と共に戦おうと、再上陸を果たした陸上自衛隊警備中隊は、条約軍との激戦を戦い抜き、遂には玉砕してしまいます。  今より少し先の未来、第3次世界大戦が終戦しても、世界は統一政府を樹立出来ていません。  南太平洋の小国をめぐり、新世界秩序は、新国連軍とS条約同盟軍との拮抗状態により、4度目の世界大戦を待逃れています。  そんな最中、ドグミス島で警備中隊を率いて戦った、旧陸上自衛隊1等陸尉 三枝啓一の弟、三枝龍二は、兄の志を継ぐべく「国防大学校」と名称が変更されたばかりの旧防衛大学校へと進みます。  しかし、その弟で三枝家三男、陸軍工科学校1学年の三枝昭三は、駆け落ち騒動の中で、共に協力してくれた同期生たちと、駐屯地の一部を占拠し、反乱を起こして徹底抗戦を宣言してしまいます。  龍二達防大学生たちは、そんな状況を打破すべく、駆け落ちの相手の父親、東京第1師団長 上条中将との交渉に挑みますが、関係者全員の軍籍剥奪を賭けた、訓練による決戦を申し出られるのです。  力を持たない学生や生徒達が、大人に対し、一歩に引くことなく戦いを挑んで行きますが、彼らの選択は、正しかったと世論が認めるでしょうか?  是非、ご一読ください。

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

【完結】最弱テイマーの最強テイム~スライム1匹でどうしろと!?~

成実ミナルるみな
SF
 四鹿(よつしか)跡永賀(あとえか)には、古家(ふるや)実夏(みか)という初恋の人がいた。出会いは幼稚園時代である。家が近所なのもあり、会ってから仲良くなるのにそう時間はかからなかった。実夏の家庭環境は劣悪を極めており、それでも彼女は文句の一つもなく理不尽な両親を尊敬していたが、ある日、実夏の両親は娘には何も言わずに蒸発してしまう。取り残され、茫然自失となっている実夏をどうにかしようと、跡永賀は自分の家へ連れて行くのだった。  それからというもの、跡永賀は実夏と共同生活を送ることになり、彼女は大切な家族の一員となった。  時は流れ、跡永賀と実夏は高校生になっていた。高校生活が始まってすぐの頃、跡永賀には赤山(あかやま)あかりという彼女ができる。  あかりを実夏に紹介した跡永賀は愕然とした。実夏の対応は冷淡で、あろうことかあかりに『跡永賀と別れて』とまで言う始末。祝福はしないまでも、受け入れてくれるとばかり考えていた跡永賀は驚くしか術がなかった。  後に理由を尋ねると、実夏は幼稚園児の頃にした結婚の約束がまだ有効だと思っていたという。当時の彼女の夢である〝すてきなおよめさん〟。それが同級生に両親に捨てられたことを理由に無理だといわれ、それに泣いた彼女を慰めるべく、何の非もない彼女を救うべく、跡永賀は自分が実夏を〝すてきなおよめさん〟にすると約束したのだ。しかし家族になったのを機に、初恋の情は家族愛に染まり、取って代わった。そしていつからか、家族となった少女に恋慕することさえよからぬことと考えていた。  跡永賀がそういった事情を話しても、実夏は諦めなかった。また、あかりも実夏からなんと言われようと、跡永賀と別れようとはしなかった。  そんなとき、跡永賀のもとにあるゲームの情報が入ってきて……!?

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...