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第三章 第七節 さよならアイ

第806話 あのエリアは陽動にあった嫌な思い出があったからな

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「大佐、そんなにいらいらしないでください。とりあえず追撃ができる程度に、みんな無事だったんですし……」

 サイトーが声をかけてきた。
「サイトー中佐の言う通りだぜ、草薙さん。そんなにカリカリしちゃあ、またエドにしてやられるぜ」
 サイトーのエア・バイクの後部座席にいるアルも進言してくる。

「すまんな。あのエリアは前回、陽動にあった嫌な思い出があったからな」
 草薙はとっさにそう言いつくろった。
「で、アル。対魔法少女用ロケット・ランチャーの仕様について、聞かせてくれ」
 アルは自分のまわりを取り囲むように飛んでいるエア・バイクをざっと見回してから言った。
「ああ、すまねぇですね。全員に行き渡る数、用意できなくて」
「かまわん。わたしはマジカル・ソードのほうが使い勝手がいいからな」
「そうですかい。じゃあ、ロケット・ランチャーについて説明するぜ」

「そいつの有効射程距離は500~1000メートル。ま、ふつうのロケット・ランチャーを改造しただけですから、同程度の性能です。だが、対魔法少女となると、10メートル程度だと思ってくんねぇ」

「10メートル? たった10メートルですか?」

 兵士のひとりがおどろきをあらわにした。
「あぁ、すまねぇな。マジカル・ソードとおなじように、デミリアンの体液を利用した『移行領域透過剤』をたんまり、ロケット弾のなかにぶっこんでんだがな。どうにも効果が持続しねぇんだ」
「なぜなんですか?」
「くわしいことはわからねぇ。おそらく生体からなにかしらのエネルギーをもらって活性化してるんだろう。デミリアン同様、人間の手から離れたとたん、力をうしなっちまうんだ」
 そう言って、アルは手元にもった短銃を掲げた。
「こいつはたった2メートルしかもたねぇんだ」

「ですが、至近距離なら効果を発揮するとこは証明されましたよね、さっき」
 サイトーが後部座席のほうへ顔をむけることなく言った。
「ああ、1メートル程度の距離だったが、まちがいなくエドの腹を撃ち抜いたからな……」
 アルのことばの語尾は消え入るように弱々しかった。

「だが、みんな注意してくれ!」
 草薙はアルの代わりに喚起した。
「有効射程距離が10メートルしかない、といっても、これは通常のロケット・ランチャーだ。10メートルもの至近距離で、これを撃つというのがどれほど危険かわかるはずだ」
「あ、あぁ、草薙大佐の言う通りだよ。こいつをぶっぱなしたら、こっちが吹っ飛ぶ可能性もある。だから施設内での使用は許可されなかったんだよ」
「魔法使いのエドは近づいても、あのバラバラ光線で攻撃してくることはない。だから基本的にはマジカル・ソードによる攻撃を優先してくれ」

「だが、逃げているあいだに、基地内のクルーを魔法少女に変えている可能性がある。くれぐれも注意するように」

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