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第三章 第七節 さよならアイ
第788話 思ってたほど、嫌じゃなかった
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「タケル……くん。大丈夫……?」
エンマ・アイを見送ったときの悲しい思い出を追体験させられ、日本支部のスタッフやクルーが、泣き崩れているなか、最初にヤマトに声をかけてきたのは、春日リンだった。
やっぱりね——
草薙が逃亡中のエドの追跡に忙しいのであれば、リンが一番最初に自分を気づかってくれるはずだとわかっていた。
「リンさん。ご心配なく」
「でも……」
「リンさんこそ大丈夫ですか?」
「わたしは、ええ、問題ないわ。思い出したくない過去だけど、こうやって他人の記憶で想起されると、案外、他人事のように冷静に見れるものだってわかった」
「ええ、まったくです。思ってたほど……」
「思ってたほど、嫌じゃなかった」
ヤマトはそう言ってから、数百メートル離れて自分たちと対峙している、魔法少女たちの群れに目をやった。
エンアイムから吐きだされた魔法少女は、空中できれいに整列していた。リンが『超一群』と揶揄した、体つきも服装も揃った精鋭。もちろんからだの部品をツギハギした異形など一体たりともまじっていない。
その精鋭部隊がヤマトの、マンゲツの進軍を阻むように、正面に陣取っていた。空中で大通りに沿って、等間隔に並び、縦に5、横に10の50人の壁となって、立ちはだかっている。
厄介なことに、その50人の壁は数メートルごとに、道の奥に並んでおり、その一番先にエンアイム本体があった。
そこまでさらに数百メートル。
「嫌じゃなかった…… ええ。そう…… そうね。思ってたほど、嫌じゃなかった。そう…… あの子、ほんとうにいい子だった」
リンのかたかった表情がすこしやわらいだ。
「はい。あらためて、アイのこと、好きになりました」
「でも、いまから、アイを討ちます」
「アイを……?」
「はい。あそこにいる魔法少女。面で顔を隠していますが、あれは全部エンマ・アイです」
『よく、わかったわね。タケル』
コックピット内に突然、声が響いた。
ヤマトはそう感じたが、実際にはさきほど無理やり見せつけた記憶同様、脳内に直接語りかけているのだとわかった。
「ああ、きみのからだつきは、ぼくが一番知っているからね」
『は、言ってくれるじゃないの』
その声とともに、空中で陣形を組んでいる魔法少女たちが、いっせいに面を脱ぎ捨てた。
いとしい顔がそこにあった。
それはエンマ・アイそのものの姿だった。
それが千人はくだらない数で、目の前にずらりと並んでいた——
エンマ・アイを見送ったときの悲しい思い出を追体験させられ、日本支部のスタッフやクルーが、泣き崩れているなか、最初にヤマトに声をかけてきたのは、春日リンだった。
やっぱりね——
草薙が逃亡中のエドの追跡に忙しいのであれば、リンが一番最初に自分を気づかってくれるはずだとわかっていた。
「リンさん。ご心配なく」
「でも……」
「リンさんこそ大丈夫ですか?」
「わたしは、ええ、問題ないわ。思い出したくない過去だけど、こうやって他人の記憶で想起されると、案外、他人事のように冷静に見れるものだってわかった」
「ええ、まったくです。思ってたほど……」
「思ってたほど、嫌じゃなかった」
ヤマトはそう言ってから、数百メートル離れて自分たちと対峙している、魔法少女たちの群れに目をやった。
エンアイムから吐きだされた魔法少女は、空中できれいに整列していた。リンが『超一群』と揶揄した、体つきも服装も揃った精鋭。もちろんからだの部品をツギハギした異形など一体たりともまじっていない。
その精鋭部隊がヤマトの、マンゲツの進軍を阻むように、正面に陣取っていた。空中で大通りに沿って、等間隔に並び、縦に5、横に10の50人の壁となって、立ちはだかっている。
厄介なことに、その50人の壁は数メートルごとに、道の奥に並んでおり、その一番先にエンアイム本体があった。
そこまでさらに数百メートル。
「嫌じゃなかった…… ええ。そう…… そうね。思ってたほど、嫌じゃなかった。そう…… あの子、ほんとうにいい子だった」
リンのかたかった表情がすこしやわらいだ。
「はい。あらためて、アイのこと、好きになりました」
「でも、いまから、アイを討ちます」
「アイを……?」
「はい。あそこにいる魔法少女。面で顔を隠していますが、あれは全部エンマ・アイです」
『よく、わかったわね。タケル』
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ヤマトはそう感じたが、実際にはさきほど無理やり見せつけた記憶同様、脳内に直接語りかけているのだとわかった。
「ああ、きみのからだつきは、ぼくが一番知っているからね」
『は、言ってくれるじゃないの』
その声とともに、空中で陣形を組んでいる魔法少女たちが、いっせいに面を脱ぎ捨てた。
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それが千人はくだらない数で、目の前にずらりと並んでいた——
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