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第三章 第七節 さよならアイ
第784話 最期くらいお姉さんの言いつけをききなさい
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「あ、う、うん……」
「あなたはもうひとりきりだけど、全然ひとりじゃないわ。それまで戦ってきた人たちの魂が一緒に戦ってくれる」
「これからはあたしも一緒よ……」
突然、悪寒が走った。
からだがぶるぶると震える。
「ああ、寒い……」
タケルはあたしの首元に腕をまわして、あたしの頭をかかえるようにして、抱きしめてくれた。ジャケットが顔におしつけられ、タケルの汗の臭いがふっと鼻をくすぐる。
あたしの大好きな匂い——
いくどかベッドの中でかいだ、背徳の匂い——
でも……
けっきょく、そういう関係にならないことを、ふたりで選択した——
ふっ、と幼いころの思い出が頭にうかんできた。
幼いあたしを連れて、逃げまどった父と母の最後の笑顔。
はじめて会ったときのタケル——
ちびっちゃいくせに、なまいきな口ぶりだった。
あたし、いつも『チビクロ』って呼んでたっけ……
デミリアン搭乗のための訓練の日々——
愚痴をこぼしたり、つらい思いをなぐさめあったりした。
あたしがタケルを異性と意識しはじめた時——
彼の仕草のひとつひとつに目がはなせなかった。その思いをごまかすために、わざと大声で交際宣言した。あのとき、顔から火がでるほど恥ずかしかった。
はじめてのデート——
警護に守られながらだったし、ふたりとも初めてだったから、なんかぎこちなかった。
でも帰り際の大雨!!!! ずぶ濡れになったけど、最高にうれしかった。
そしてはじめてのキス——
タケルが選んでくれたすてきなプレゼント。成年になるぎりぎりのタイミングだった。唇も口のなかも傷だらけで、ちょっとヒリヒリした——
でもそれもステキな……
あぁ、記憶が遠のいてく。
くやしい。
あたし、もっと——
もっと……
「タケル、大好きよ」
「アイ、ぼくだって!」
タケルの泣き顔がすぐそばにあった。
「泣いちゃだめ……って…… お姉さんの言いつけをきき……な……」
「無理だよ。アイ、きみはぼくの……」
タケルのくちびるが震えている。
あたしは思わず頬をゆるめた。
「聞きわけのない弟ね。もう……今日だけよ。次からは……」
タケルがぎゅっとあたしの体を抱きしめた。涙に濡れた頬があたしの頬におしつけられる。
あったかい——
ううん、ちがう……。あたしがつめたく……なってる……んだ……
「ねぇ……、タケル」
タケルが顔をあげた。
「約束してくれる?」
「なにを?」
声がつまる。
「あなたひとりになってもけっして諦めないで…… かならず最後の108体目を倒してほしいの……」
「いつになってもかまわない。絶対に地球を守りきって……」
「うん、約束する。約束するよ!」
タケルはあたしの手をにぎる手に力をこめて言った。
「何年先になるか、何十年先になるかわからない。でも約束するよ……」
「いつか、ぼくが地球を救う!」
「あなたはもうひとりきりだけど、全然ひとりじゃないわ。それまで戦ってきた人たちの魂が一緒に戦ってくれる」
「これからはあたしも一緒よ……」
突然、悪寒が走った。
からだがぶるぶると震える。
「ああ、寒い……」
タケルはあたしの首元に腕をまわして、あたしの頭をかかえるようにして、抱きしめてくれた。ジャケットが顔におしつけられ、タケルの汗の臭いがふっと鼻をくすぐる。
あたしの大好きな匂い——
いくどかベッドの中でかいだ、背徳の匂い——
でも……
けっきょく、そういう関係にならないことを、ふたりで選択した——
ふっ、と幼いころの思い出が頭にうかんできた。
幼いあたしを連れて、逃げまどった父と母の最後の笑顔。
はじめて会ったときのタケル——
ちびっちゃいくせに、なまいきな口ぶりだった。
あたし、いつも『チビクロ』って呼んでたっけ……
デミリアン搭乗のための訓練の日々——
愚痴をこぼしたり、つらい思いをなぐさめあったりした。
あたしがタケルを異性と意識しはじめた時——
彼の仕草のひとつひとつに目がはなせなかった。その思いをごまかすために、わざと大声で交際宣言した。あのとき、顔から火がでるほど恥ずかしかった。
はじめてのデート——
警護に守られながらだったし、ふたりとも初めてだったから、なんかぎこちなかった。
でも帰り際の大雨!!!! ずぶ濡れになったけど、最高にうれしかった。
そしてはじめてのキス——
タケルが選んでくれたすてきなプレゼント。成年になるぎりぎりのタイミングだった。唇も口のなかも傷だらけで、ちょっとヒリヒリした——
でもそれもステキな……
あぁ、記憶が遠のいてく。
くやしい。
あたし、もっと——
もっと……
「タケル、大好きよ」
「アイ、ぼくだって!」
タケルの泣き顔がすぐそばにあった。
「泣いちゃだめ……って…… お姉さんの言いつけをきき……な……」
「無理だよ。アイ、きみはぼくの……」
タケルのくちびるが震えている。
あたしは思わず頬をゆるめた。
「聞きわけのない弟ね。もう……今日だけよ。次からは……」
タケルがぎゅっとあたしの体を抱きしめた。涙に濡れた頬があたしの頬におしつけられる。
あったかい——
ううん、ちがう……。あたしがつめたく……なってる……んだ……
「ねぇ……、タケル」
タケルが顔をあげた。
「約束してくれる?」
「なにを?」
声がつまる。
「あなたひとりになってもけっして諦めないで…… かならず最後の108体目を倒してほしいの……」
「いつになってもかまわない。絶対に地球を守りきって……」
「うん、約束する。約束するよ!」
タケルはあたしの手をにぎる手に力をこめて言った。
「何年先になるか、何十年先になるかわからない。でも約束するよ……」
「いつか、ぼくが地球を救う!」
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