上 下
785 / 1,035
第三章 第七節 さよならアイ

第784話 最期くらいお姉さんの言いつけをききなさい

しおりを挟む
「あ、う、うん……」
「あなたはもうひとりきりだけど、全然ひとりじゃないわ。それまで戦ってきた人たちの魂が一緒に戦ってくれる」


「これからはあたしも一緒よ……」


 突然、悪寒が走った。
 からだがぶるぶると震える。

「ああ、寒い……」
 タケルはあたしの首元に腕をまわして、あたしの頭をかかえるようにして、抱きしめてくれた。ジャケットが顔におしつけられ、タケルの汗の臭いがふっと鼻をくすぐる。

 あたしの大好きな匂い——

 いくどかベッドの中でかいだ、背徳の匂い——
 でも……
 けっきょく、そういう関係にならないことを、ふたりで選択した——


 ふっ、と幼いころの思い出が頭にうかんできた。

 幼いあたしを連れて、逃げまどった父と母の最後の笑顔。

 はじめて会ったときのタケル——
 ちびっちゃいくせに、なまいきな口ぶりだった。
 あたし、いつも『チビクロ』って呼んでたっけ……

 デミリアン搭乗のための訓練の日々——
 愚痴をこぼしたり、つらい思いをなぐさめあったりした。

 あたしがタケルを異性と意識しはじめた時——
 彼の仕草のひとつひとつに目がはなせなかった。その思いをごまかすために、わざと大声で交際宣言した。あのとき、顔から火がでるほど恥ずかしかった。


 はじめてのデート——
 警護に守られながらだったし、ふたりとも初めてだったから、なんかぎこちなかった。
でも帰り際の大雨!!!! ずぶ濡れになったけど、最高にうれしかった。

 そしてはじめてのキス——
 タケルが選んでくれたすてきなプレゼント。成年になるぎりぎりのタイミングだった。唇も口のなかも傷だらけで、ちょっとヒリヒリした——
 でもそれもステキな……

 あぁ、記憶が遠のいてく。

 くやしい。
 あたし、もっと——
 もっと……

「タケル、大好きよ」

「アイ、ぼくだって!」

 タケルの泣き顔がすぐそばにあった。
「泣いちゃだめ……って…… お姉さんの言いつけをきき……な……」

「無理だよ。アイ、きみはぼくの……」
 タケルのくちびるが震えている。
 あたしは思わず頬をゆるめた。
「聞きわけのない弟ね。もう……今日だけよ。次からは……」

 タケルがぎゅっとあたしの体を抱きしめた。涙に濡れた頬があたしの頬におしつけられる。
 あったかい——

 ううん、ちがう……。あたしがつめたく……なってる……んだ……

「ねぇ……、タケル」
 タケルが顔をあげた。
「約束してくれる?」

「なにを?」
 声がつまる。

「あなたひとりになってもけっして諦めないで…… かならず最後の108体目を倒してほしいの……」

「いつになってもかまわない。絶対に地球を守りきって……」

「うん、約束する。約束するよ!」
 タケルはあたしの手をにぎる手に力をこめて言った。
「何年先になるか、何十年先になるかわからない。でも約束するよ……」



「いつか、ぼくが地球を救う!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

CREATED WORLD

猫手水晶
SF
 惑星アケラは、大気汚染や森林伐採により、いずれ人類が住み続けることができなくなってしまう事がわかった。  惑星アケラに住む人類は絶滅を免れる為に、安全に生活を送れる場所を探す事が必要となった。  宇宙に人間が住める惑星を探そうという提案もあったが、惑星アケラの周りに人が住めるような環境の星はなく、見つける前に人類が絶滅してしまうだろうという理由で、現実性に欠けるものだった。  「人間が住めるような場所を自分で作ろう」という提案もあったが、資材や重力の方向の問題により、それも現実性に欠ける。  そこで科学者は「自分達で世界を構築するのなら、世界をそのまま宇宙に作るのではなく、自分達で『宇宙』にあたる空間を新たに作り出し、その空間で人間が生活できるようにすれば良いのではないか。」と。

もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR
SF
 『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。     (アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

【完結】最弱テイマーの最強テイム~スライム1匹でどうしろと!?~

成実ミナルるみな
SF
 四鹿(よつしか)跡永賀(あとえか)には、古家(ふるや)実夏(みか)という初恋の人がいた。出会いは幼稚園時代である。家が近所なのもあり、会ってから仲良くなるのにそう時間はかからなかった。実夏の家庭環境は劣悪を極めており、それでも彼女は文句の一つもなく理不尽な両親を尊敬していたが、ある日、実夏の両親は娘には何も言わずに蒸発してしまう。取り残され、茫然自失となっている実夏をどうにかしようと、跡永賀は自分の家へ連れて行くのだった。  それからというもの、跡永賀は実夏と共同生活を送ることになり、彼女は大切な家族の一員となった。  時は流れ、跡永賀と実夏は高校生になっていた。高校生活が始まってすぐの頃、跡永賀には赤山(あかやま)あかりという彼女ができる。  あかりを実夏に紹介した跡永賀は愕然とした。実夏の対応は冷淡で、あろうことかあかりに『跡永賀と別れて』とまで言う始末。祝福はしないまでも、受け入れてくれるとばかり考えていた跡永賀は驚くしか術がなかった。  後に理由を尋ねると、実夏は幼稚園児の頃にした結婚の約束がまだ有効だと思っていたという。当時の彼女の夢である〝すてきなおよめさん〟。それが同級生に両親に捨てられたことを理由に無理だといわれ、それに泣いた彼女を慰めるべく、何の非もない彼女を救うべく、跡永賀は自分が実夏を〝すてきなおよめさん〟にすると約束したのだ。しかし家族になったのを機に、初恋の情は家族愛に染まり、取って代わった。そしていつからか、家族となった少女に恋慕することさえよからぬことと考えていた。  跡永賀がそういった事情を話しても、実夏は諦めなかった。また、あかりも実夏からなんと言われようと、跡永賀と別れようとはしなかった。  そんなとき、跡永賀のもとにあるゲームの情報が入ってきて……!?

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ

黒陽 光
SF
 その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。  現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。  そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。  ――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。 表紙は頂き物です、ありがとうございます。 ※カクヨムさんでも重複掲載始めました。

処理中です...