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第三章 第七節 さよならアイ
第780話 下の方見ないで。あたし、恥ずかしいから
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「アイ……」
リンが声をかけてきた。
すべてを理解している声色だ。
声が震えているし、見たことがないほど、顔がこわばっている。
モニタ越しにすらわかるほどに。
「リン、あたし、ミスっちゃった……」
「アイ、ミスなんかじゃない! あなたがかばわなければ、タケルくんがやられてた」
「そうかもね」
「よく守ってくれた、アイ」
ブライトは泣いていた。
司令官として失格の態度——
さいごのさいごまで、ありもしない希望や可能性を、念仏のように口にしていないといけないのに。
でも、まぁ、ブライトらしい……
ほかのクルーたちの顔も、モニタ越しにみえる。アル、エド、李子…… みんな心配そうを通り越して、悲痛な顔になっている。
司令官に似て、ポーカーフェイスは苦手らしい——
でもここに小人さんがいないのは幸いだった。シモンの件で退職したらしかったけど、ここにいたら、また嫌なトラウマがふえたはずだ。
あたしは、モニタの面々を見ながら、ふと気づいた。
「タケルはどこ?」
マンゲツのパイロット・シートには誰もいなかった。
「アイちゃん、ヤマトくんは、今そこにむかってる」
エドがそう教えてくれた瞬間、コックピットのハッチの内壁が赤く光った。
レーザー・バナーの光——
外側からゆがんだハッチの扉を焼き切っている。
高出力のレーザーの熱は、あっと言う間にハッチに穴をあけた。
外側からそのハッチを蹴飛ばす、ガンガンという音——
ガコン、とおおきな音がして、こちら側に扉が倒れてきた。とどうじにタケルがコックピット内部へ飛び込んできた。
「大丈夫か、アイ!」
大丈夫じゃない——
コンソールの機器が腹部に食い込んで、上半身と下半身がかろうじてつながっているような状態が、大丈夫なはずない。
「大丈夫よ! タケル!」
あたしは自分でもびっくりするほど、ハツラツとした声でこたえた。
タケルがぐちゃぐちゃに押し潰れたコックピット内を這うようにして、あたしのとろこまでやってきた。
あたしはうれしかった。
あたし、最後にタケルに会えた——
シートの横に滑り込んできたタケルは、シート上部にある『ヴァイタル・データ』をあおぎみた。
サッと顔色が変わったのがわかった。
あたしの状態を把握したのだ——
あたしはタケルにわらいかけてみせた。
でも弱々しい、とっても弱々しいものにしかならなかった。
タケルはあたしの力のない笑みに微笑みかえすと、すぐに怪我をしている部位に目をむけようとした。
あたしはそれが嫌だった。
きれいなまま死んでいきたい。
しょうとさんの彼氏のシモンのように、むごたらしい最期の姿を、愛しい人に見られたくなかった。
それを目にしたら、タケルのなかのあたしの思い出は、その姿でとまってしまう。
「タケル。下の方見ないで。あたし、恥ずかしいから……」
リンが声をかけてきた。
すべてを理解している声色だ。
声が震えているし、見たことがないほど、顔がこわばっている。
モニタ越しにすらわかるほどに。
「リン、あたし、ミスっちゃった……」
「アイ、ミスなんかじゃない! あなたがかばわなければ、タケルくんがやられてた」
「そうかもね」
「よく守ってくれた、アイ」
ブライトは泣いていた。
司令官として失格の態度——
さいごのさいごまで、ありもしない希望や可能性を、念仏のように口にしていないといけないのに。
でも、まぁ、ブライトらしい……
ほかのクルーたちの顔も、モニタ越しにみえる。アル、エド、李子…… みんな心配そうを通り越して、悲痛な顔になっている。
司令官に似て、ポーカーフェイスは苦手らしい——
でもここに小人さんがいないのは幸いだった。シモンの件で退職したらしかったけど、ここにいたら、また嫌なトラウマがふえたはずだ。
あたしは、モニタの面々を見ながら、ふと気づいた。
「タケルはどこ?」
マンゲツのパイロット・シートには誰もいなかった。
「アイちゃん、ヤマトくんは、今そこにむかってる」
エドがそう教えてくれた瞬間、コックピットのハッチの内壁が赤く光った。
レーザー・バナーの光——
外側からゆがんだハッチの扉を焼き切っている。
高出力のレーザーの熱は、あっと言う間にハッチに穴をあけた。
外側からそのハッチを蹴飛ばす、ガンガンという音——
ガコン、とおおきな音がして、こちら側に扉が倒れてきた。とどうじにタケルがコックピット内部へ飛び込んできた。
「大丈夫か、アイ!」
大丈夫じゃない——
コンソールの機器が腹部に食い込んで、上半身と下半身がかろうじてつながっているような状態が、大丈夫なはずない。
「大丈夫よ! タケル!」
あたしは自分でもびっくりするほど、ハツラツとした声でこたえた。
タケルがぐちゃぐちゃに押し潰れたコックピット内を這うようにして、あたしのとろこまでやってきた。
あたしはうれしかった。
あたし、最後にタケルに会えた——
シートの横に滑り込んできたタケルは、シート上部にある『ヴァイタル・データ』をあおぎみた。
サッと顔色が変わったのがわかった。
あたしの状態を把握したのだ——
あたしはタケルにわらいかけてみせた。
でも弱々しい、とっても弱々しいものにしかならなかった。
タケルはあたしの力のない笑みに微笑みかえすと、すぐに怪我をしている部位に目をむけようとした。
あたしはそれが嫌だった。
きれいなまま死んでいきたい。
しょうとさんの彼氏のシモンのように、むごたらしい最期の姿を、愛しい人に見られたくなかった。
それを目にしたら、タケルのなかのあたしの思い出は、その姿でとまってしまう。
「タケル。下の方見ないで。あたし、恥ずかしいから……」
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