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第三章 第七節 さよならアイ

第778話 エンマ・アイの死3

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 そこからは地味な作業の繰り返しだった。
 憎い亜獣を目の前にして、こんなことでいいのか、という自問自答したくなったけど、あたしは20分ほどで、亜獣の甲羅に切れ目をいれおえた。

「もー、疲れたぁ~ タケル、あとはあなたにお願いするわ!」

「アイ、お疲れさま」 
 タケルはいつもとなんにも変わらない調子だった。
 100万人もの死者のことなど、なにも感じさせない口調——

 すこしして、タケルは亜獣の甲羅の隙間から、サムライ・ソードを突き刺しまくった。
 刺すたびに亜獣が緑の体液をまき散らしながら、身悶えする。手足がないからだを器用に動かして逃げようとするけど、タケルは押さえつけて、それを許さない。

 なんども……
 なんども……
 なんども、首を突き刺して、亜獣の力を奪っていった。

 そしてさいごに、サムライソードで亜獣の頭を斬り落した。
 その姿はまるで、600年以上前に日本で行われていた『腹切り』のときの、『介錯』を思わせた。
 あっけなく首が落下する。

『あと20秒で、亜獣が生命活動を停止する』
 エドから声があがった。

 あたしは、はーっとおおきく息をはいた。
 たぶん、ホッとしたんだと思う。

 100万もの命が奪われる、未曾有の大惨事がおわった——
 20年ていどしか生きていない人間では、どんなに気持ちを落ち着けても、受けとめきれない。
 

 そのとき、リンが悲鳴のような声をあげた。

「タケルくん、アイっっ!。陸からなにかが飛んでくるわ!」


「陸? 噴石じゃないの?」
 あたしには意味がわからなかった。噴火もおさまってきたし、津波もなりをひそめた。
 これ以上、なんの災害が起きる?

 こっちへ一直線に飛んでくる物体を、サーモビジョンで捕捉する。
 熱を感知していない。

 噴石じゃない——
 
 一直線で飛んでくる先に、タケルのマンゲツの機体があった。
 あたしはマンゲツをかばうように、セラ・ヴィーナスの機体を前におしやった。
 すぐさまコックピット部分に『移行領域(トランジショナル・ゾーン)』のベールを展開する。
 これで直撃をうけても完璧にふせげる。問題ない!


 飛んできてるものに、なにかがつながっていると『アラート』がまたたく。

 なに?

 そしてその『アラート』は、つながっている末端が、とどめをさしたばかりの亜獣とつながっていることをしめしていた。


「これって、亜獣のしっぽ!!」


 その飛んできたものが『移行領域(トランジショナル・ゾーン)』のベールでは防御できない、亜獣のからだの一部だ、と気づいたときには、もうよけきれなかった。 
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